東京地方裁判所 昭和52年(特わ)387号 判決 1977年10月17日
本店所在地
東京都品川区中延五丁目二番七号
セントラル観光興業株式会社
(右代表者代表取締役 関好夫)
本籍
東京都品川区西大井三丁目五一二〇番地
住居
同区中延五丁目二番七号
会社役員
関好夫
昭和一三年七月五日生
右の者は対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官河内悠紀出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人セントラル観光興業株式会社を罰金一八〇〇万円に、被告人関好夫を懲役一年二月にそれぞれ処する。
被告人関好夫に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罰となるべき事実)
被告人セントラル観光興業株式会社(以下「被告会社」という。)は、肩書本店所在地(昭和五〇年一〇月一五日以前は、東京都港区三田三丁目七番二四号)に本店を置き、不動産の売買、斡旋、管理等を営業目的とする資本金八〇〇万円(昭和五一年一月七日以前は、五〇〇万円)の株式会社であり、被告人関好夫(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるところ、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部除外、仕入の水増計上等をして簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九、四〇二万七、九四三円(別紙(一)の修正損益計算書参照)、租税特別措置法第六三条所定の課税土地譲渡利益金額が二、〇七六万六、〇〇〇円あったのにかかわらず、同四九年二月二七日、東京都港区芝五丁目八番一号所在所轄芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、四六四万一、五二一円(課税土地譲渡利益金額は計上しない。)でこれに対する法人税額が四三八万八、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五二年押第一、二九四号の符号一)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三、七七〇万七、四〇〇円(税額の算定は別紙(三)の一計算書参照)と右申告税額との差額三、三三一万九、四〇〇円を免れ、
第二 昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九、二五〇万六、四九九円(別紙(二)の修正損益計算書参照)、課税土地譲渡利益金額が一億一、八六〇万五、〇〇〇円あったのにかかわらず、同五〇年二月二八日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二一〇万〇二六一円、課税土地譲渡利益金額が三、六九一万円でこれに対する法人税額が七七八万二、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号二)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額五、九七五万九、五〇〇円(税額の算定は、別紙(三)の二計算書参照)と右申告税額との差額五、一九七万七、二〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
第一判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、
一 被告人の当公判廷における供述並びに大蔵事務官に対する質問てん末書(三通)及び検察官に対する供述調書(二通) (乙1ないし5)
一 登記官作成の登記簿謄本(甲一1)
第二 別紙(一)、(二)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別当期増減金額欄記載の数額のうち、
(イ) 土地譲渡益(別紙(一)<1>、同(二)の<1>)につき、
一 検察官作成の昭和五二年二月二二日付報告書(甲一2)
一 大蔵事務官作成の昭和五二年二月一四日付報告書及び昭和五一年一二月二日付調査書(甲一3、4)
一 加藤郷雄、渡辺ミエ子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(甲一16、17)
一 大塚茂、笠原弘之、塩沢勝、谷田長治、本多次郎、古市和男、真家三都雄、山本平三郎、山田幸枝作成の各取引内容照会に対する回答書(甲一18ないし26)
一 浅野高雄、山下豊、鳥居市二、土屋義雄、石井明、中村功、半田七良在文、中村丈夫、手島八郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書(甲一27ないし35)
一 大蔵事務官作成の昭和五二年二月九日付調査報告書(甲一36)
一 渡辺馨作成の回答書(甲一37)
一 中村守の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲一38)
一 平尾巖、柴田正夫、深井義雄、市瀬芳太郎、高橋丈介の大蔵事務官に対する各質問てん末書(甲一39ないし43)
(ロ) 各期における課税土地譲渡利益金額につき、
一 大蔵事務官作成の昭和五一年一二月一〇日付調査書(甲一46)
(ハ) 支払手数料(別紙(二)<3>)につき、
一 大蔵事務官作成の昭和五二年二月四日付調査報告書(甲一一5)
(ニ) 修繕費(別紙(二)<11>)、事務用品費(別紙(一)<15>)、接待交際費、同損金算入限度超過額(別紙(一)<16><31>、別紙(二)<14>)につき、
一 大蔵事務官作成の昭和五一年一〇月一四日付査察官調査書(甲一6)及び交際費調査書(甲一14)
(ホ) 雑収入(別紙(一)<24>)につき、
一 吉澤信孝、秦三郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書(甲一44、45)
(ヘ) 事業税(別紙(二)<23>)につき、
一 押収にかかる昭和四九年一二月期法人税確定申告書(昭和五二年押第一、二九四号の符号二)
(ト) 受取利息(別紙(一)<25>、同(二)<25>)につき、
一 大蔵事務官作成の昭和五一年一〇月二六日付、同月二七日付、同年一二月二日付、同月一〇日付各調査書(甲一7、9、11、8)
一 太陽神戸銀行浦和支店長作成の昭和五一年一一月一八日付証明書(甲一10)
(チ) 受取利息(分離課税)(別紙(二)<37>)につき、
一 大蔵事務官作成の昭和五一年一二月一〇日付査察官調査書(甲一15)
(リ) 支払利息(別紙(一)<26>、同(二)<28>)につき、
一 大蔵事務官作成の昭和五一年一〇月二八日付調査書(甲一12)
一 太陽神戸銀行浦和支店長作成の昭和五一年一二月七日付証明書(甲一13)
(ヌ) 貸倒損失(別紙(一)<29>)につき、
一 前掲被告人の検察官に対する昭和五二年二月一八九日付供述調書(乙5)
第二 別紙(一)、(二)の各修正損益計算書掲記の各公表金額及び過少申告の事実につき、
一 押収にかかる昭和四八年一二月期及び同四九年一二月期各法人税確定申告書(昭和五二年押第一、二九四号の符号一、二)
(消耗品費の過大計上について)
大蔵事務官作成の昭和五一年一〇月一四日付査察官調査書(甲一6)及び被告人の検察官に対する昭和五二年二月九日付供述調書(乙4、第二項)並びに押収にかかる昭和四八年一二月期法人税確定申告書及び総勘定元帳(第二期)一綴(昭和五二年押第一、二九四号の符号一、三)によれば、昭和四八年一二月期の被告会社の消耗品費(別紙(一)<14>)は二九万三、二五三円と算定すべきところ、被告人は確定申告に際しこれを二九万三、二五四円と公表計上しており、差引一円の過大計上の結果を生じているが、右は判示売上除外等の所得秘匿工作とは何ら関りのない転記のミスと認められ(当期の被告会社における記帳及び確定申告書等の作成は従業員の旧姓萩原こと桜田伊世子の担当するところであり、被告人は同女から説明を受け金額等を確認して申告に及んでいたことが窺われる。)、被告人はこれを看過して申告したに過ぎず、検察官の全立証を以てしても、被告人がほ脱の意図を以てことさらにこれを過大計上したものと認めるに由ないところである。
さすれば、右一円を損金に計上することは客観的に見れば誤りではあるが、主観的にはほ脱の犯意を欠くものであるから、当期のほ脱にかかる実際所得金額からこれを減算するのを相当と認め、判示第一のとおり認定した次第である。
(法令の適用)
第一被告会社につき、
一 判示各所為 各法人税法第一六四条第一項、第一五九条第一項(情状により同条第二項を適用して、罰金額はそれぞれ免れた法人税の額に相当する金額以下とする。)
一 併合罪加重 刑法第四五条前段、第四八条第二項。
第二被告人につき、
一 判示各所為 各法人税法第一五九条第一項(いずれも懲役刑選択)
一 併合罪加重 刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(犯情重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重)
一 執行猶予 刑法第二五条第一項
(裁判官 半谷恭)
別紙(一)
修正損益計算書
セントラル観光興業株式会社
自昭和48年1月1日
至昭和48年12月31日
<省略>
別紙(二)
修正損益計算書
セントラル観光興業株式会社
自昭和49年1月1日
至昭和49年12月31日
<省略>
別紙(三)の一
税額計算書
<省略>
別紙(三)の二
税額計算書
<省略>