東京地方裁判所 昭和53年(タ)454号 判決
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【判旨】
二本件離婚の準拠法は、法例一六条により夫たる被告の本国法すなわちフイリピン共和国法によるべきところ、離婚の規定を欠く同国の関係法は、離婚を認めず、しかも法例二九条による反致をも認めていないものと解されている。しかし、前記認定の事実によると、本件にあつては、妻たる原告は、日本国籍を有するとともに、日本に住所を有しており、しかもフイリピン共和国内における婚姻生活極めて僅かにして早くも夫たる被告から悪意を以つて遺棄されたものと認められるのみならず、現在は夫たる被告の所在すら不明であるところ、このような場合にも、なお夫の本国法である前記フイリピン共和国法を適用して原告の本訴離婚の請求を拒絶することは、我が国私法秩序における信義誠実の原則に沿わないばかりか善良の風俗を害し、ひいては正義公平の理念にもとるものといわなければならない。
したがつて、右のような事実関係のもとにある本件については、法例三〇条により、前記フイリピン共和国法の適用を排斥し、法廷地法たる日本の民法を適用すべきものと解するのが相当であるところ、前記認定の事実関係によれば、原、被告間の婚姻が既に破綻し回復不能の状況にあること及び右婚姻破綻の責が主として夫たる被告の側に存することは極めて明らかであるから、民法七七〇条一項五号による原告の本訴離婚の請求は理由がある。
(仙田富士夫 竹江禎子 滝澤雄次)