東京地方裁判所 昭和53年(ワ)11599号 判決 1981年3月26日
原告
山崎製パン株式会社
右代表者監査役
白川修一
右訴訟代理人
鈴木竹雄
同
長谷部茂吉
外二名
参加人
中村誠一こと
野島弘光
右訴訟代理人
中平健吉
外二名
被告
飯島藤十郎
右訴訟代理人
小林十四郎
同
田中義之助
主文
一 被告は原告に対し、別表一記載の経過で取得された原告の左記株式三五五万四九九九株の株券を、被告が昭和三八年九月五日取得した株式会社山崎製パン千葉工場(旧商号川口パン株式会社)の株式二五万八〇〇〇株を基に割り当てられた原告の株式二五万八〇〇〇株については一株につき金一五〇円、飯島和が昭和四一年六月三〇日に取得した右千葉工場の株式三万株を基に割り当てられた原告の株式三万株については一株につき金一八〇円、その余の株式については一株につき金五〇円の各割合による金員の支払いを受けるのと引換えに引き渡せ。
若し右株券引渡しの執行が不能となつたときは、被告は原告に対し、前記各金員の支払いを受けるのと引換えに、一株につき金五〇〇円の割合による金員を支払え。
記
名義 株数
飯島藤十郎 二三八万五五六二株
飯島和 六七万五〇〇〇株
飯島延浩 一三万七二五〇株
飯島茂彰 九万一六八七株
飯島庸江 六万六三七五株
加持三恵子 六万六三七五株
吉田幸代 六万六三七五株
飯島久規子 六万六三七五株
以上合計 三五五万四九九九株
二 被告は原告に対し、別表二記載の経過で取得された株式会社関西ヤマザキの左記株式七五万一五四六株(昭和五五年六月二九日付増資により取得した分を除くもの)の株券を、一株につき金五〇〇円の割合による金員の支払いを受けるのと引換えに引き渡せ。
若し右株券引渡しの執行が不能となつたときは、被告は原告に対し、前記金員の支払いを受けるのと引換えに、一株につき金二五〇七円の割合による金員を支払え。
記
名義 株数
飯島藤十郎 二三万〇一〇二株
飯島興産株式会社 三二万四四四四株
飯島延浩 六万〇八〇〇株
飯島紀子 一万〇〇〇〇株
飯島佐知彦 二〇〇〇株
飯島幹雄 二〇〇〇株
飯島久仁恵 二〇〇〇株
飯島庸江 一万〇〇〇〇株
加持美昭 一万二〇〇〇株
加持三恵子 一万六〇〇〇株
加持幾代 二〇〇〇株
吉田輝久 一万二〇〇〇株
吉田章代 一万八〇〇〇株
飯島久規子 一万〇〇〇〇株
飯島茂彰 四万〇二〇〇株
以上合計 七五万一五四六株
三 被告は原告に対し、金二億四〇六八万五八三二円及びこれに対する昭和五一年六月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
四 訴訟費用は被告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
(原告)
一1 被告は原告に対し、金五〇億七二〇二万三七一五円及びこれに対する昭和五一年六月六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。との判決並びに仮執行宣言又は、右第一項の請求と択一的に
二 主文第一項ないし第四項と同旨の判決並びに仮執行の宣言
(参加人)
1 被告は原告に対し、金二〇〇〇万円及びこれに対する昭和五三年一一月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は原告の負担とする。との判決並びに仮執行の宣言
(被告)
1 原告及び参加人の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者の主張事実<省略>
理由
一当事者
原告会社は、昭和二三年六月パン、菓子類の製造及び販売を目的として設立されて以来、パン、菓子類の製造及び販売を業としてきたものであること、被告は、原告会社の設立以来昭和五一年三月二九日まで、その代表取締役の地位にあつたこと、参加人は、原告会社の株主であることは、いずれも当事者間に争いがない。
なお、参加人の商法第二六八条第二項による原告の共同訴訟人としての訴訟参加の申出は、適法なものと認められる。
二被告の原告会社代表取締役としての経営態度
<証拠>によれば、次の事実が認められる。証人能重嘉一の証言中この認定に反する部分は採用できず、他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。
1(一) 被告は、昭和二三年三月千葉県市川市に山崎製パン所の商号でパン委託加工店を開業し、同年六月二一日これを法人化して、資本金一〇〇万円の原告会社を設立し、以来パン、菓子類の製造、販売を行つてきたこと、
(二) 原告会社は、食生活の変化の波に乗つて、以後驚異的な発展を続け、度重なる増資を行い、資本金は、昭和三八年七月には五億円、昭和四一年六月には一〇億円、昭和四三年一月には一五億円となり、その間、昭和三七年七月には我国のパン業界では初めて東京証券取引市場第二部に、続いて昭和四一年一一月には同取引市場第一部に、翌月には大阪証券取引市場第一部にその株式を上場し、昭和四二年以降は毎期二〇パーセントの株式配当を行い、やがて我国のパン業界を代表する企業に成長してきたこと、
(三) 被告は、創業以来原告会社の代表取締役として、同社を経営してきたが、戦後の激動期にあつて、若い頃身につけた製パン業の知識を基に、一貫して、強気と顧客本位の経営方針を採り、機械化大量生産方式の採用による生産経費の引下げ、多種類大量生産方式の採用による利益率の拡大と販売網の確保、一日二回配送方式の採用によるパンの鮮度の維持といつた独創的な方策を次々に打ち出して実現し、その結果、原告会社は、短期間のうちにわが国の製パン業界に君臨するようになつていつたこと、
2(一) 被告は、原告会社内では徹底的なワンマン的体制をとり、原告会社における業務方針、人事はもとより、日常業務に至るまで、すべて自分の意思で決定するという姿勢を貫き、取締役会は全く開催されず、必要に応じ、役員の一部及び担当部長等を幹部会と称して招集し、必要な情報を聴取するとともに、自己の考えを明らかにして聞かせることがあつたが、少しでも被告の方針等に反対したり、批判したりする者があると、激怒して痛罵し、時にはこれに暴行を加える等してその意見を押え込み、更には、その者を解職ないしは転勤させ、若しくは退職させることも少なくなかつたため、幹部会は、常に被告の方針や意見を聞く場となつていたこと、
(二) 原告会社が社外から役員を迎えるようになつた昭和四四年以降は、取締役会が開催されるようにはなつたが、被告の意に沿わぬ事項を付議しようとしても、被告は取締役会を招集せず、取締役会は被告の意思に左右されることが多かつたこと、
なお、原告会社には、昭和四四年以前に作成された取締役会議事録が多く存在しているが、それらは、銀行等から要求される都度、現実には取締役会が開かれてはいないのに、予め各取締役から預けられている印鑑を使用して作成されたものであること、
(三) 被告は、営業や工場管理等の日常業務に至るまで口を出し、一般の従業員に対してまでも機会を見つけては直接指示、命令を下していたため、工場長、部長等の役職者も、そのほとんどの職務執行について被告の指示、了解を得なければ、その決定ができない状況にあつたこと、
(四) 被告は、原告会社の設立当初から、公私を混同する傾向が強く、私用のため、会社の資産を使用することが少なくなかつたこと、
(五) 被告は、昭和三三年以来躁うつ症に苦しみ、昭和五一年三月二九日原告会社の代表取締役を退任するまでの間、躁状態のときは、精力的に仕事に没頭し、周囲の意見は全く無視してひたすら原告会社の経営に関し、積極的施策を打ち出し、その実現に邁進し続けるが、一旦壁に突き当ると、一転してうつ状態となり、万事に悲観的になつて入院するという状況が繰り返されてきた。しかし、健康を回復して経営に復帰すると、入院中の経営を一々チェックするため、重要事項については、被告の小康状態のときにその了解を得られない限り、何らの決定もできない状況が続いたこと、
三製パン事業の資金ぐりに見られる特色等
証人能重嘉一、同飯島一郎の各証言及び原告会社代表者本人尋問の結果によると次の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
1 製パン事業は、工場新設又は拡張に当り、多額の資金を必要とするが、設備が完成してパン等の製造が開始され、その販路が確保されると、その代金は現金で支払われてくる上、代金中に占める原材料代金の割合は五〇ないし五五パーセントと比較的低く、その支払いは四五日から六〇日の手形でなされるのが通常であるため、進出計画に誤りがない限り、売上増に応じて資金ぐりが楽になり、二、三年後には、手元資金にゆとりが出てきて、設備投資のための債務を返済してもなお相当の利益をあげる状態になるものであること、
2 被告は、原告会社が急成長するにつれて、原告会社の株式を中心にその資産を増やしていつたが、相当規模の製パン事業を自己の資産と信用で開始、維持していく程の経済力はとうていなかつたこと、
四川口パンの買収に伴う千葉工場開設、経営
1 次の事実は、当事者間に争いがない。
(一) 原告会社は、昭和三八年九月当時千葉県下を含む関東一円をその販売区域としていたこと、
(二) 千葉製粉は、川口パンの発行済株式総数三二万株の全株を保有していたが、昭和三八年九月一日右三二万株中二五万八〇〇〇株を被告に、三万二〇〇〇株を原告会社にそれぞれ譲渡し、更に昭和四〇年六月、残株式三万株を被告の妻訴外和に譲渡したこと、
(三) 川口パンは、被告の株式取得後、その商号を株式会社山崎製パン千葉工場と変更し、千葉工場は、昭和四八年一一月一日原告会社に合併されたが、その間の株主及びその保有状況は別表一〔保有株式数の維持〕記載のとおりであること、
(四) 千葉工場は、昭和三八年九月五日被告らが千葉製粉からその株式を譲り受けてから昭和四八年一一月一日原告会社に合併されるまでの間、原告会社と同様、パン、菓子類の製造及び販売を業とし、東京都下及び千葉県下でその製品を販売してきたこと、
(五) 被告は、川口パンの株式取得代金の全てを原告会社から借り入れ、千葉工場は、その運転資金を原告会社又は金融機関や商社からの借入れに頼つてきたが、原告会社は、千葉工場が金融機関等から資金を借り入れるに際しては、何らの対価を得ることなく連帯保証し、又は原告主張の担保を提供してきたこと、
(六) 千葉工場は、従業員の全てを原告会社からの出向者をもつてまかない、ブランドやパン、菓子類製造技術、包装等も全て原告会社のそれを使用してきたこと、
(七) 千葉工場の日常的管理及び営業行為は、原告会社の管理組織を通して行われていたこと、
2 <証拠>によれば、次の事実が認められる。この認定に反する証人能重嘉一、同尾森雄の各証言部分はいずれも採用できず、他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。
(一) 千葉製粉は、同社の製品である小麦粉の第二次加工のため、パンの製造、販売を業とする川口パンの全株を保有してきたが、同社の経営が不振のため、昭和三八年七月頃その経営の肩代りを求めて、川口パンの株式の売却先を探していたこと、
(二) 千葉製粉は、その頃、製粉工場合理化のため、千葉市内の海岸埋立地に関連二次加工業者を集中した食品コンビナート(以下「食品コンビナート」という。)を形成することを計画していたので、川口パンの肩代りには、食品コンビナートに進出しうる企業であることが条件とされていたが、被告は、千葉県下の市場は、将来益々拡大していくことが予想されるのに、当時千葉市内の大半の販売店に原告会社の製品を配送していた市川工場の生産能力が限界に来ており、その上川口パンを同業他社が買収し、そこを拠点として千葉の市場に進出してくると、原告会社が不利な立場に追い込まれることから、原告会社の資金を使つてこれを買収しようと考え、当時原告会社の財務を担当していた取締役の能重嘉一(以下「能重」という。)らに原告会社の資金状況を尋ねたところ、能重らは、原告会社が昭和三七年武蔵野工場を建設した際借り入れた約二〇億円の債務の第一回目の支払期が昭和三八年中に到来するため、資金ぐりが極めてきびしい状況にある旨を告げたが、千葉県下の市場の将来性と製パン事業の特色から、川口パン取得直後の二、三年を乗り切れば、将来に不安はなく、その程度の資金ぐりは原告会社の信用で十分可能と考える被告を翻意させることはできなかつたこと、
(三) 被告は、遅くとも同年八月下旬までに、原告会社の取締役会にはかることなく、食品コンビナートへの進出約束は、一応原告会社においてなし、川口パンの買収は、被告個人で行うことを決意するに至つたが、その買収及び経営のための資金は全て原告会社の信用を基に調達することとし、その交渉を能重らに委ねたこと、
(四) 能重は、一先づ原告会社の代理人として千葉製粉と交渉し、同年八月三一日原告会社と川口パンとの間で、解雇される全従業員を原告会社が新規採用する旨の「人事、給与に関する覚書」を取り交し、更に翌九月一日には、原告会社と千葉製粉及び川口パンとの間で、原告会社が川口パンの株式二九万株を千葉製粉から譲り受け、同月五日その代金支払いと引換えに株式を引き渡すこと、川口パンが解雇した全従業員を経営権の譲渡を受けた原告会社が再雇用すること、原告会社は川口パンの借入金につき千葉製粉が負担している保証債務を肩代わりすること、原告会社は食品コンビナートに参加し、自ら一日当り使用小麦粉一〇〇〇袋以上の工場を建設することなどを骨子とする契約書及び原告会社が食品コンビナートに新工場を建設したときは、千葉製粉は、原告会社に対し残りの株式三万株を一株金一五〇円で譲渡し、今回譲渡する株式二九万株の代金を四三五〇万円とする旨の念書を取り交わしたこと、
(五) 被告は、昭和三八年九月五日、前記契約を一部変更して、川口パンの株式二五万八〇〇〇株を自らが取得し、原告会社は三万二〇〇〇株のみを取得したが(この点は、当事者間に争いがない。)、右変更は、原告会社の取締役会にはかられることなく、被告の独断で行われ、またその代金は、原告会社が被告の保有する原告会社の株式七〇万株及び定期預金五〇〇万円の担保提供をうけて千葉銀行から借り入れた資金によつて支払われたが、会計処理上は、一先づ原告会社が、同月五日千葉製粉に対し、川口パンの株式二九万株の譲受代金として四三五〇万円を支払つたこととしてこれを仮払金に計上した上、同日右仮払金四三五〇万円を原告会社の関係会社株式として四八〇万円、被告に対する貸付金として三八七〇万円と仕訳して処理したこと、
(六) 被告は、千葉工場の代表取締役はもとより、取締役であつたことすらなかつたが、発足以来原告会社への合併に至るまでの間、原告会社におけるのと同様絶対的な存在として千葉工場に君臨し、その経営を意のままに動かし、千葉工場の業績が向上しないとして、何らの対価も支払わないまま、原告会社の取締役会にはかることなく独断で、原告会社の市川工場の所管する手葉市内の販売店約一〇〇店を昭和三八年一一月一四日ころ千葉工場に移管させ、その後も合計五〇八店の原告会社の販売店を千葉工場に移管(これらの販売店移管については、当事者間に争いがない。)させる等してきた。このため、千葉工場が発足後、原告会社への合併までの間代表取締役を勤めた根岸俊太郎、奥野徳一、飯島延浩は、いずれも名目的な存在にすぎず、例えば、千葉工場のほとんどの期間にわたつて代表取締役であつた奥野徳一についても、専用の机、椅子すらなく、月に数回出社する存在でしかなかつたこと、
(七) 前記当事者間に争いがない原告会社の管理組織を通しての千葉工場の日常的管理及び営業行為のコントロール、千葉工場の原告会社ブランド及びノウ、ハウの使用、原告会社からの融資等は、千葉工場と原告会社との間で締結された取引基本契約に基づくものであつて、原告会社から、千葉工場に対し仮払金又は長期及び短期の貸付金名下に融資された額は、昭和四七年六月三〇日現在で合計金五億七六一一万〇六九六円に達し、この外原告会社が保証した千葉工場の債務額は、昭和四四年六月三〇日現在で一七億一八〇〇万円余に達していたが、これらの保証はいずれも担保及び対価なく行われており、千葉工場の全従業員が全て原告会社の出向社員であつたことや、原告会社がその営業報告書、広報、広告等であたかも千葉工場が原告会社と資本関係の強い関連会社であるかの如く扱つていたため、千葉工場は、その株式構成において原告会社とは極めて弱い関係でしかないのに、その実体及び外見においては、原告会社の完全子会社的存在であり、このことは、原告会社との基本契約に基づく技術指導料の支払いによつても変わるものではないこと、
五大阪工場の設立、経営
1 次の事実は、当事者間に争いがない。
(一) 大阪工場は、昭和四一年六月一日資本金四五〇〇万円、発行済株式総数九万株をもつて設立されたが、設立時の株主及び持株数は、被告が五万株、被告が全株式を保有し、かつその代表取締役である飯島興産が三万九二〇〇株、その他の株主が八〇〇株であり、その後の株式総数及び株式保有状況は、別表二「保有株式数の推移」記載のとおりであること、
(二) 大阪工場は、昭和四六年四月一五月福岡工場に合併されて株式会社関西ヤマザキと商号変更したが、その後の株主及び株式保有状況は、別表二「保有株式数の推移」記載のとおりであること、
(三) 被告は、大阪工場の設立とともにその代表取締役となり、同社が福岡工場と合併して関西ヤマザキとなつて後はその代表取締役となり、昭和五一年三月三一日までその地位にあつたこと、
(四) 大阪工場は、設立以来関西ヤマザキとなつた後も今日まで、原告会社と同様パン、菓子類の製造、販売業を営んでいること、
(五) 大阪工場は、その運転資金を原告会社又は金融機関や商社からの借入れに頼つてきたが、原告会社は、大阪工場が金融機関から資金を借り入れるに際し何らの対価も得ることなく連帯保証してきたこと、
(六) 大阪工場は、従業員の全てを原告会社からの出向者をもつてまかない、ブランド、製造技術、包装等も、全て原告会社のものを使用してきたこと、
2 <証拠>を総合すると次の事実が認められる。証人能重、同尾森、同大和久、同山田の各証言中この認定に反する部分は採用できず、他にこの認定を覆すに足りる証拠はない。
(一) 原告会社は、社業が急激に発展し、関東地区への販売組織を確立するや、更にナショナルベーカリーとして全国規模でパン、菓子類の製造、販売を展開することを志すようになり、その目標地域の一つに関西地区を考え、かねてよりその動向を調べ、昭和四一年三月には当時原告会社武蔵野工場第二営業課長の山田憲典を大阪へ出張させ、関西地区における市場と販売店等の調査を行わせたりしてきたところ、その頃原告会社のメインバンクである住友銀行より被告に対し、同行の取引先である中外製薬が吹田の土地を処分しようとしているので、これを原告会社において買い入れ、関西地区に進出することを考慮してはどうかとの話が持ち込まれたこと、
(二) 被告は、この申入れを受けるや、直ちに関西進出を決意し、当時原告会社の財務を担当していた常務取締役の能重や経理部長の大和久貞雄ら幹部に原告会社の資金状況を尋ねたところ、能重らは、武蔵野工場建設のため借入れた債務の返済が終了していない上、昭和四〇年九月から一四、五億円の資金を投入して松戸工場の建設に着手したばかりでもあるので、資金ぐりは極めて苦しい状況にあること等を告げたが、関東に次ぐ人口集中地域である関西地区には千葉県下よりはるかに大きな将来性があるとみられたところから、他業者に先んじて関西地区に進出するには、この機会をおいてないと確信した被告は、製パン事業の特色から工場開設直後の二、三年間を乗り切れば、将来に不安はありえず、しかもその程度の資金ぐりは、原告会社の信用で十分可能と考え、益々その決意を固めていつたため、社内ではその計画に不安をもつ者も多かつたが、表立つてこれに反対を表明する者はなく、また、原告会社の大株主である日清製粉の澤田営業部長が、関東の企業が関西に進出して成功することはむづかしいこと等をあげて被告の自重をうながしたところ、被告の怒りをさそい、原告会社への出入りができなくなる有様であつたこと、
(三) そこで被告は、吹田の土地が取得できれば、関西進出のため、別会社を設立し、吹田の土地に製パン工場を建設するとの計画を確定したが、その資本関係については、千葉工場の場合と同様、原告会社の子会社とはせず、その全株を自己及びその妻子、ならびに自己が全株を有し、かつ代表取締役でもある飯島興産で保有することにし、社内の幹部には、その旨を告げたこと、
(四) 大阪工場は、当時まだ設立されていなかつたところから、中外製薬との交渉は、原告会社が一応当事者となつて行われ、原告会社は、同年五月一一日中外製薬との間で右土地の売買契約を締結し、同月三一日までに金融機関から金一億八〇〇〇万円借り入れて右代金一億九五〇〇万円を支払つた。他方被告は、大阪工場の設立手続を進め、その資本金四五〇〇万円は、全て被告側で調達し、同社は、同年六月一日設立されたが、原告会社における右代金の会計処理としては、大阪工場設立後の同年六月三〇日当時の経理部長の決裁印もないまま、右代金のうち金一億七五〇〇万円を、大阪工場に対する長期貸付金に切り換える形で処理されていること、
(五) 大阪工場は、昭和四一年七月完成し、操業を開始したが、その運転資金については、昭和四一年六月一日から一二月三一日までの第一決算期に原告会社からの短期借入金は金三〇八九万七五六七円、長期借入金は金四億四七八四万七六一七円に及び、また、大阪工場が昭和四一年九月二二日住友商事との間で締結した継続的取引契約においては、原告会社は大阪工場の連帯保証人となり、かつ自己名義の東京都板橋区の土地を担保に提供する等その運転資金は、ほとんど全て原告会社からの借入れ、又は原告会社の連帯保証による金融機関、商社等からの借入れにより賄われており、また、大阪工場に設置された主要機械は、原告会社が松戸及び武蔵野工場用として、昭和四一年四月八州貿易株式会社と通じ米国ベーカー、パーキンス社に発注したものを、被告の独断で大阪工場向けと変更し、設置されたものであること、
(六) 原告会社は、昭和四一年六月一日から同月一八日までの間、幹部社員の研修会を開催したが、その際、大阪工場に派遣する従業員の人選、営業方針、製品計画などが検討され、その席上被告自らがヤマザキのナショナルベーカリー発展への一貫政策の一つとして関西に進出するものであるとの趣旨を説明し、また、同年八月一日の毎日新聞紙上で大阪工場があたかも原告会社の一部門ないしは関連企業として操業を開始したかの如く広告し、その他原告会社の営業報告書、広報等で、あたかも大阪工場が、原告と資本関係の強い関連会社の如く扱つてきたため、大阪工場は、その株式構成において原告会社と全く資本関係がなかつたのに、その実体及び外見においては、原告会社の完全子会社的存在であり、このことは、大阪工場の資本金を全て被告において調達し、また原告会社に基本契約に基づく技術指導料を支払つたことによつても左右されるものではないこと、
六被告の責任
1 競業避止義務違反について
(一) 被告が千葉工場発足後原告会社への合併までの間原告会社の代表取締役であつたこと、千葉工場が原告会社と同種の営業をするものであること、及び東京、千葉を含む関東一円が原告会社の市場であつたことは、当事者間に争いがなく、被告が千葉工場発足以来原告会社への合併までの間千葉工場の事実上の主宰者として、これを経営してきたことは、先に認定したとおりである。
被告の右行為は、第三者である千葉工場のために、原告会社の営業の部類に属する取引をしてきたことに外ならず、このことは、原告会社に対し、前記認定の技術指導料を支払つたことにより左右されるものではないから、原告会社に対する競業避止義務に違反することは明らかである。
(二)(1) 原告会社と大阪工場が同種の営業をするものであること及び、被告は大阪工場の設立以来福岡工場に合併するまでの間と右合併により関西ヤマザキが発足し、昭和五一年三月三一日までの間、右両社の代表取締役としてこれを経営し、同時にその期間は原告会社の代表取締役でもあつたことは、当事者間に争いがなく、原告会社がかねてより関西市場への進出を企図し、昭和四一年当時既に具体的にその市場調査等を進めていたことは、先に認定したとおりである。
(2) 大阪工場設立の経過及びその経営については、先に認定したとおりであつて、その資本金だけは被告によつて調達されはしたが、その運営に当つては、原告会社の資金、信用、ブランド、技術、従業員が投入されてきたのであつて、大阪工場が所期の成功を収めることができたのは、被告が原告会社の調査結果を含む有形無形の資源を利用しえたからに外ならず、仮に若し、大阪工場が行き詰つた場合を想定したとしても、原告会社が負担すべきリスクは、大阪工場が原告会社の一部門であつた場合と比べ、全く変らず、反面、大阪工場の経営に成功すれば、被告、その妻子及び飯島興産は、資本への投資を除く他のほとんど全てにつき、原告会社の負担により、その資産を増やすことになる状況にあつたと認められる。
したがつて、原告会社が中外製薬から吹田の土地を取得した時点において、被告が大阪工場を原告会社の一部門として建設することを決意さえすれば、原告会社は直ちに関西に進出しえたのであるのみならず、前記状況の下では、他に大阪工場を原告会社の資本関係の強い別会社として発足させるべき特段の事情がない限り、これを原告会社の一部門として建設すべきであり、それ以外の途はなかつたというべきであるから、その時点における原告会社の関西地区における進出計画の具体性、市場及びその侵害による損害の範囲を検討するに当つては、原告会社が大阪工場を自己の一部門として建設、運営することを決意していたのと同視して差支えないと解すべきである。
(3) 然るに、被告が原告会社の代表取締役でありながら、大阪工場及び関西ヤマザキの代表取締役として、前記認定の期間これらの会社を経営したことは、第三者であるこれらの会社のために、原告会社の営業の部類に属する取引をしてきたことに外ならず、このことは、原告会社に対し、前記認定の大阪工場の資本金を被告側で調達し、また技術指導料を支払つたことにより左右されるものではないから、原告会社に対する競業避止義務に違反することは明らかである。
2 管注意義務、忠実義務違反について
被告は、原告会社の代表取締役として、善良な管理者の注意をもつて会社を有効適切に運営し、その職務を忠実に遂行しなければならない義務があるのに、原告会社の人的、物的、資金的資源を利用しながら、川口ハンの株式のほとんどを自らが取得して、原告会社が千葉工場をその傘下に収めて、千葉県下の市場を強化する機会を奪い、原告会社の取締役会にはかることなく、また何らの対価も得ることなく、原告会社の販売店合計五〇八店を千葉工場に移管して、原告会社の市場を侵奪し、千葉工場の事実上の主宰者として、原告会社との競業行為を行つたこと、及び大阪工場を原告と全く資本関係のない会社として設立し、原告会社が自ら又は子会社により関西に進出する機会を奪い、大阪工場及び関西ヤマザキの代表取締役として、原告会社との競業行為を行つたことは、いずれも先に認定したとおりであつて、これらの行為が、原告会社に対する取締役としての忠実義務、したがつて善管注意義務に違背することは明らかである。
3 委任義務違反について
(一) 被告は、原告会社のワンマン社長として君臨し、原告会社の業務方針、人事はもとより、日常業務に至るまで自分の意思で決定するという姿勢を貫き、取締役会は全く開催されない状態が続いており、千葉工場、大阪工場をめぐるいろいろの問題は、いずれもこの間に実行されたものであることは、先に認定したとおりである。
ところで、会社の業務決定は、取締役会がこれを決定すべきものであつて、代表取締役はその執行機関に過ぎないのであるから、取締役会がその機能を失い、代表取締役が全ての業務執行を決定し、これを執行するという原告会社にみられた状況は極めて異常のものではあるが、取締役会が業務執行に関する全ての決定を被告に委任していたというべき状態にあつたとみる外ない。
このような場合、取締役会は、代表取締役に適法な業務執行の決定を委ねたものであつて、法の定める取締役の義務に違背するような業務執行の決定がその委任の範囲に属さないことは明らかであるから、代表取締役は、その時々における四囲の状況から、採るべき施策と考えられる範囲でその決定を行うべきであり、かりそめにもその範囲を逸脱するような決定をすることは、委任の本旨に反するものといわなければならない。
(二) 被告が千葉工場の発足及び運営、大阪工場の設立及び運営に関し行つた行為が原告会社に対する競業行為となり、善管注意義務、忠実義務に違背するものであることは、先に認定したとおりであり、これらの行為が原告会社の取締役会の被告に対する委任の趣旨に反するものであることは明らかである。
したがつて、被告としては、千葉工場については、被告及び訴外和が取得した株式を原告会社の株式とし、大阪工場についてはこれを原告会社の一部門とし、若し特段の事情が認められる場合でも、これを原告会社の子会社とし、被告、その妻子及び飯島興産が取得した株式は原告会社の株式として、両工場を発足させるべきであつたし、それ以外の途を選ぶ余地がなかつたことは先に認定したとおりであるから、これが取締役会の被告に対する委任の本旨とみるべきであり、にもかかわらず、被告はこれに反して両工場の株式を、原告会社以外の者の保有するところとしたものである。
そうすると、原告会社と被告との関係は、あたかも原告会社の取締役会がある会社の株式を買収し、又は完全子会社を設立することを決定し、これを実行するため、被告に対し、必要な資金を交付して、その事務を委任したところ、被告が株式を買収し、又は会社を設立しながら、その株式を原告会社のものとはせず、自己やその家族等のものとしたような場合には、原告会社は被告に対し、委任の本旨に従い、その株式の移転を求めることができるのと同様に、本件の場合においても、原告会社は、その株式が被告において原告会社に移転することがなお不可能とはみられない限り、委任又はその類推により、被告に対し、その移転を求め、既にこれらの株式につき取得した配当金はこれを返還し、またその移転義務の履行が将来不可能になる場合には、その填補賠償を求めることができると解するのが相当であり、この方法こそが競業避止義務、善管注意義務及び忠実義務違反を理由とする損害賠償請求よりもはるかに直接的でかつ根本的な救済を得る結果となるものというべきである。
七抗弁について
1 被告は、千葉工場及び大阪工場は、いずれも原告会社の新規地区への進出による危険を回避するため、原告会社との資本関係をことさらに薄くし、又はこれをなくしたものであつて、その実質は原告会社の利益を究極的目標とする原告会社の協力会社、子会社としての性格を有し、両工場の新規地区における現実の事業活動は、全て原告会社の指示により行われ、その取締役も原告会社の示唆により選改任されうる状況にあつたから、競業関係に立ちえない特段の事情があつたと主張するが、新規地区への進出による危険を防止するためには、原告会社が強い資本関係を有する別法人の形を採れば足りることであつて、その資本関係を原告会社と稀薄ないしは絶無のものとする必要はないのに、両工場は資本的にみて原告会社の子会社とは程遠い存在でしかなく、両工場の経営は専ら被告の意思により行われ、また、両工場が発足し、千葉工場については、原告会社の販売店五〇八店が移管されたことにより、原告会社は千葉及び関西地区の市場を強化し、あるいはこれに進出する機会を奪われ、既存の市場を失い、大きな損害を被り、その反面被告らは、原告会社の負担においてその資産を増やす結果となることについては、先に認定したとおりであるから、被告の右抗弁は理由がない。
2 被告主張の株主総会で計算書類の承認がなされたこと及びそれから二年の間に原告会社の株主総会が被告の責任につき何らの決議もしていないことは当事者間に争いがない。
しかしながら、前記認定の被告の各義務違反行為については、右各株主総会に提出された計算書類に記載されているか、どうか又はこれから知り得るかどうかにつき何らの主張立証もなく、しかも右各行為は、被告が原告会社の市場拡大の機会を奪う結果になることを十分に了知していながら自己の利益を図るためあえてこれをなしたものであることは先に認定したとおりであつて、これは、商法第二八四条但書にいう「不正の行為」に当るものと解するのが相当であるから、いずれにしても右抗弁は理由がない。
八委任に基づく請求権の内容について
1 千葉工場及び大阪工場の持株関係の推移は、別表一、二記載のとおりである。
2 千葉工場及び大阪工場については、右各表記載の日に増資が行われ、同表記載の割合により株主に新株が割り当てられ、また千葉工場は、昭和四八年一一月一日原告会社と合併し、一対一の割合で原告会社の株式が発行され、大阪工場は、昭和四六年四月一五日福岡工場と合併して関西ヤマザキとなり、一対一の割合で関西ヤマザキの株式が発行され、その後関西ヤマザキは別表二の日に増資し、同表記載の割合により株主に新株が割り当てられているが、これらは、いずれも被告らが千葉工場の発足及び大阪工場の設立に際し取得した株式を基礎とするものであるから、払込金の清算関係を残すとしても、原告会社の委任に基づく株式移転請求の範囲に含まれるものと解すべきである。
3 千葉工場と原告会社の合併により、千葉工場の株主に発行された原告会社の株式のうち、被告の妻子名義のものは、別表一記載のとおりであり、また大阪工場と福岡工場の合併により、大阪工場の株式を基に発行された関西ヤマザキの株式のうち、被告の妻子及び飯島興産名義のものは、別表二記載のとおりであるが、いずれもなお被告において原告会社に移転することが不可能とは認められないので、原告会社は被告に対し、被告名義の株式はもとより、これらについてもなお移転を求めると解すべきところ、千葉工場の株式を基とする原告会社の株式は、主文第一項掲載のとおり、被告名義の株式が二三八万五五六二株、被告の妻子名義の株式が一一六万九四三七株合計三五五万四九九九株であつて、これについては、その基となつた千葉工場の株式のうち、被告が昭和三八年九月五日に売買により取得した二五万八〇〇〇株については一株につき金一五〇円、訴外和が昭和四一年六月三〇日に売買により取得した三万株については一株につき金一八〇円、その余については一株につき金五〇円の各割合による金員が払い込まれていることは当事者間に争いがなく、関西ヤマザキの株式については、昭和五五年六月二九日付増資分を除くと、主文第二項掲記のとおり、被告名義の株式が、二三万〇一〇二株、飯島興産名義の株式が三二万四四四四株、被告の妻子名義の株式一九万七〇〇〇株合計七五万一五四六株であつて、これらについては一株につき金五〇〇円が払込まれていることは当事者間に争いがない。
4 被告らがこれらの株式の配当として少くとも合計が金二億四〇六八万五八三二円を受領したことは、当事者間に争いがなく、右配当金は、前記株式の果実に当るものと認められる。
5 原告会社の本件最終口頭弁論期日における株価が一株当り金五〇〇円を下らないことは裁判所に顕著な事実であり、成立に争いのない<証拠>によれば、関西ヤマザキの第三九期(昭和五四年一月一日から一二月三一日まで)の純資産額は金一三四億二四一四万九〇〇〇円で、その株式総額は一七四万四〇〇〇株であつたところ、関西ヤマザキは昭和五五年六月二九日株主割当の方法により倍額増資し、一株当り金五〇〇円が支払われたことは、当事者間に争いがなく、本件最終口頭弁論期日までにその財産状況に変更を生じさせる特段の事情が生じたと認めるに足る証拠はないから、右期日における株価は、少くとも一株当り金二五〇七円を下らない(第三九期の純資産額に右増資払込額を加算し、これを株式総数で除した値は、金四〇九八円)ことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
九結論
そうすると、原告が商法第二七五条の四に基づき監査役を代表者として、原告会社の取締役である被告に対し、委任事務の履行若しくはその履行不能の場合の填補賠償として、
1 別表一記載の経過で取得された原告会社の主文第一項掲記の株式三五五万四九九九株の株券を、被告が昭和三八年九月五日取得した千葉工場の株式二五万八〇〇〇株を基に割り当てられた原告会社の株式二五万八〇〇〇株については一株につき金一五〇円、訴外和が昭和四一年六月三〇日取得した千葉工場の株式三万株を基に割り当てられた原告会社の株式三万株については一株につき金一八〇円、その余の株式については一株につき金五〇円の各割合による金員の支払いを受けるのと引換えに引き渡すことを求め、若し右株券引渡しの執行が不能となつたときは、前記各金員の支払いを受けるのと引換えに、一株につき金五〇〇円の割合による金員の支払い、
2 別表二記載の経過で取得された関西ヤマザキの主文第二項掲記の株式七五万一五四六株(ただし、昭和五五年六月二九日付増資により取得した分を除く。)の株券を、一株につき金五〇〇円の割合による金員の支払いを受けるのと引換えに引き渡すことを求め、若し右株券引渡しの執行が不能となつたときは、前記金員の支払いを受けるのと引換えに、一株につき金二五〇七円の割合による金員の支払い、
3 金二億四〇六八万五八三二円及び本件訴状送達の日の翌日である昭和五一年六月六日から支払ずみで年五分の割合による金員の支払い
をそれぞれ求める請求は、いずれも理由があるのでこれを認容し、
また、参加人が原告会社の株主として被告らが支払いを受けた配当金二億四〇六八万五八三二円のうち金二〇〇〇万円及びこれに対する参加申立書送達の日の翌日である昭和五三年一一月三〇日から支払ずみまで年五分の割合による民法所定の遅延損害金の支払いを求める請求は、理由があるのでこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し、仮執行の宣言については本件につき相当でないからこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。
(野崎幸雄 井上弘幸 千葉勝美)
別表一
保有株式数の推移(千葉工場)
年月日
昭38.9.5
41.6.30
41.10.31
42.3.11
42.3.20
43.6.15
43.7.1
44.9.20
45.8.24
46.2.23
48.5.31
48.11.1
授権株式
120万株
120万
120万
120万
120万
120万
480万
480万
1,920万
1,920万
1,920万
発行済株式
32万株
32万
32万
32万
32万
120万
480万
480万
720万
山崎
製パン
の株式
割当比率等
贈与
売買
売買
1:2.75
1:3
売買
1:05
1:1で
合併
山崎製パン(株)
32,000
32,000
32,000
32,000
32,000
120,000
480,000
(2,551,500)
2,430,000
3,645,001
飯島藤十郎
258,000
258,000
253,000
185,300
170,100
637,875
3,540,375
1,590,375
2,385,562
2,385,562
千葉製粉
30,000
0
0
0
0
0
0
0
飯島和
30,000
30,000
30,000
30,000
112,500
450,000
450,000
675,000
675,000
飯島延浩
0
22,700
24,400
91,500
91,500
91,500
137,250
137,250
飯島茂影
1,000
13,600
16,300
61,125
61,125
61,125
91,687
91,687
飯島庸江
1,000
9,100
11,800
44,250
44,250
44,250
66,375
66,375
加持三恵子
1,000
9,100
11,800
44,250
(329,625)
44,250
44,250
66,375
66,375
吉田章代
1,000
9,100
11,800
44,250
44,250
44,250
66,375
66,375
飯島久規子
1,000
9,100
11,800
44,250
44,250
44,250
66,375
66,375
計
320,000
320,000
320,000
320,000
320,000
1,200,000
4,800,000
4,800,000
7,200,000
3,554,999
備考
川口パン買収購入価格
@150円
訴外飯島和保有の山崎製パン株式との交換25,000株
@180円
@170円
@170円
1.6名放棄
988,875株
2.これを飯島氏に
@50円で割当
1,950,000株@50円
1.山崎製パン所有株式は消却
2.このほか合併直前に山崎製パン(株)は飯島茂彰に1株贈与したゝめ合併により右茂彰はさらに山崎製パン(株)の株式1株を保有している。
別表二
保有株式数の推移(関西ヤマザキ)(一)
(株)山崎製パン大阪工場
(株)関西ヤマザキ
(株)山崎製パン福岡工場
年月日
昭41.6.1
43.5.28
44.8.30
46.2.1
46.4.15
46.1.19
45.12.16
44.12.19
44.6.29
44.4.21
44.1.31
43.4.15
授権
360,000
360,000
360,000
1,440,000
1,440,000
2,160,000
720,000
720,000
200,000
200,000
200,000
50,000
50,000
発行済株式
90,000
90,000
360,000
400,000
800,000
400,000
180,000
90,000
50,000
30,000
割当比率等
設立
1:3
9:1
(56.44%)
合併
(28.22%)
9:11
1:1
5:4
3:2
譲渡
飯島藤十郎
50,000
50,800
203,200
203,200
225,778
(43.56)
225,778
(21.78)
飯島興産
39,200
39,200
156,800
156,800
174,222
174,222
飯島一郎
100
0
飯島良男
100
0
松本晃
100
0
尾森雄
100
0
片岡武
100
0
藤城英司
100
0
飯島和
100
0
能重嘉一
100
0
(48.50)
388,000
(1.50)
12,000
(97.00%)
388,000
(3.00)
12,000
16,800
12,000
168,000
12,000
78,000
12,000
38,000
12,000
38,000
18,000
12,000
山崎製パン株式会社
ヤマエ久野株式会社
1.合併と共に商号変更
2.46.5.1本店移転
「大盛産業(株)」
1.42.7.29増資
資本金15,000千円(30,000株)
2.商号変更43.5.1
保有株式数の推移(関西ヤマザキ)(二)
(株)関西ヤマザキ
(株)山崎製パン
浜松工場
(株)関西ヤマザキ
年月日
46.4.15
46.6.28
44.8.4
46.11.15
47.12.30
48.6.20
48.11.15
48.12.20
50.2.28
55.6.29
授権
2,160,000
2,160,000
27,200
2,160,000
2,160,000
2,160,000
2,160,000
2,160,000
2,160,000
6,976,000
発行済株式
800,000
800,000
15,000
800,000
800,000
872,000
872,000
1,744,000
1,744,000
3,488,000
割当比率等
合併
売買
交換
合併
贈与
第三者割当
売買
1:1
売買
(46.21%)
1:1
山崎製パン(株)
388,000
400,000
400,000
400,000
401,700
402,125
804,250
805,920
(13.19)
1,611,840
飯島藤十郎
225,778
225,778
225,778
115,051
115,051
115,051
230,102
230,102
(18.50)
460,204
飯島興産
174,222
162,222
162,222
162,222
162,222
162,222
324,444
324,444
(1.38)
648,888
ヤマエ久野(株)
山崎製パン(株)
12,000
12,000
12,000
12,000
12,000
12,000
24,000
24,000
(7.79)
48,000
従業員
(株)山崎製パン
69,200
68,775
137,550
135,880
271,760
大阪工場
(15,000)
飯島一郎
12,727
13,327
13,327
26,654
26.654
53,308
飯島延浩
30,000
30,400
30,000
60,800
60.800
121,600
飯島紀子
5,000
5,000
5,000
10,000
10.000
20,000
飯島佐知彦
1,000
1,000
1,000
2,000
2.000
4,000
飯島幹雄
1,000
1,000
1,000
2,000
2.000
4,000
飯島久仁恵
1,000
1,000
1,000
2,000
2.000
4,000
飯島庸江
5,000
5,000
5,000
10,000
10.000
20,000
加持美昭
6,000
6,000
6,000
12,000
12.000
24,000
加持三恵子
8,000
8,000
8,000
16,000
16.000
32,000
加持幾代
1,000
1,000
1,000
2,000
2.000
4,000
吉田輝久
6,000
6,000
6,000
12,000
12.000
24,000
吉田章代
9,000
9,000
9,000
18,000
18.000
36,000
飯島久規子
1.山崎製パン株式
95,000株
(@158円)
飯島興産―山崎製パン、キクヤ株式
5,000
5,000
5,000
10,000
10.000
(12.83)
20,000
飯島茂彰
20,000
20,100
20,100
40,200
40.200
80,400
小計
(110,727)
(111,827)
従業員割当
@500円
(111,827)
(223,654)
(223,654)
(447,308)