東京地方裁判所 昭和53年(ワ)12869号 判決
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【判旨】
二そこで、原告のした増額請求に基づく適正賃料について判断する。
鑑定の結果によると、右増額請求時における賃料は一二万八五〇〇円と評価されており、この値は、比準賃料及びスライド賃料を標準として積算賃料を参考とし、契約の諸事情を総合的に勘案して、求められていることが認められる。
ところで、右積算賃料は、建物価格と敷地の更地価格の和である基礎価格に総合期待利回りとして土地については五パーセント、建物については八パーセントを乗じて、これに公租公課、管理費等を加算して求めた正常実質賃料と現行の支払実質賃料との差額分の二分の一を賃借人負担分として現行支払実質賃料に加算して算出されているところ、建物の敷地を右更地価格で購入した場合はともかく、従前からの所有地である場合には、土地所有者の貢献による土地の客観的価値の上昇を超えた近時の土地価格の異常な高騰を考えるとき、敷地の更地の時価に対して乗ずべき適正な利回り率を低い率におさえるべきであり、そうしなければ、建物賃借人に一方的に不利な賃料の異常な高騰を招くことになつて相当でないといわなければならない。本件においては、建物敷地を右更地価格で購入したことは証拠上認められないから、適正な利回りとして、土地について鑑定で用いられた五パーセントを三パーセントと修正して計算すると、現行賃料に加算するのが妥当な額は年額五七万八一八三円(月額四万八一八一円)となり、これを現行家賃の月額七万三〇〇〇円に加算すると、積算賃料は、一二万一一八一円となる。
次に、比準賃料の算定についてであるが、被告本人尋問の結果によると、本件車庫の建物が極めて老朽化していること(鑑定の評価によると、その価格は五〇〇〇円である。)、いずれも成立に争いのない甲第一号証の一ないし四によると、賃貸借の条件の中に車庫の利用について特別の約定がないことが認められ、この事実によると、本件賃貸借においては、車庫の利用は建物敷地の利用の一態様程度にしか把握されていないことが推認され、従つて、比準賃料の決定に当たつても、右事実が考慮されるべきことが指摘できる。
スライド賃料の算出については、問題はない。
以上の諸点及び継続賃料における硬直性を考慮に入れて総合判断すると、本件賃料が昭和四九年五月分から増額されて以降、昭和五五年一月一一日の本件増額請求の時点まで改訂されないままであつたことを勘案しても、右増額請求時における本件建物の適正賃料としては、一か月一一万八〇〇〇円が相当であると認められる。
(牧野利秋)