大判例

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東京地方裁判所 昭和53年(ワ)12974号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

2 <証拠>を総合すると、次の事実を認めることができる。

訴外吉井は、原告会社において常務取締役の肩書で広告代理業の営業を担当していたが、被告会社の飯塚社長より、斑尾高原の夏祭りのバス旅行に誘われ、原告会社に休暇届を出したうえ、昭和五三年八月一四日バスに乗車して東京を出発した。ところが、熊谷インターチェンジで休憩中、飯塚社長が被告会社所有の乗用車で追いついたので、訴外吉井は、右乗用車に乗り換え、飯塚社長の運転で長野ドライブインまで行き、そこでしばらく休憩した。その後、訴外吉井は、飯塚社長に対し運転を交替したい旨みずから申し出て運転を交替して出発したが、間もなく居眠り運転をしていたため、本件事故を引き起こした。

3 ところで、本件事故は、訴外吉井が車を運転したことにより引き起こしたものであるが、元来、吉井が担当していた広告代理の営業活動には通常他人の車を運転することまでは含まれていないものと考えられるから、吉井が前記バス旅行に際し機会があれば得意先の開拓を行う意図をも有しまた被告所有の乗用車の車中で飯塚社長と広告に関する話をしていた事実があつたとしても、被告会社所有の車を運転すること自体が客観的にみて吉井の職務の範囲に含まれるものとはいえないし、前記2の事実によれば、右吉井の車の運転は同人の申出により同人の好意によつて行われたものと認められるのである。更に、右2の事実によれば、本件事故を引き起こした車は被告会社の所有であつて原告会社の支配が及ぶものではなく、しかも、吉井は原告会社に休暇届を出して私事としてバス旅行に参加したのであり、原告会社としては、吉井が被告所有の乗用車を運転することを事前に予測することができたものとはとうてい考えられず、原告会社が本件事故の発生を防止する措置をとりうる立場にはなかつたものというべきである。以上の点からみれば、訴外吉井が本件事故を発生させたことをもつて原告会社の業務の執行について行われたものということはできない。

(越山安久)

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