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東京地方裁判所 昭和53年(ワ)5676号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

判旨の前提として認定されている事実関係は、概ね、次のとおりである。

「(一)被告は、昭和五三年一月ころ本件土地・建物の売却を訴外迫田に依頼した。

(二) 訴外迫田は、昭和五一年一二月ころから原告会社に勤務していた訴外山口より良い物件があれば紹介してほしい旨かねて頼まれていたが、昭和五三年三月初旬ころ山口及び安原に対し、被告が本件土地・建物を売却したい意向であるとして、その斡旋を依頼した。訴外迫田、同山口、同安原の三名は、その数日後、訴外迫田の案内で被告宅を訪れ、被告から本件土地・建物を坪当り金八〇万円で売りたいとの話を聞いた。その際被告から訴外安原ら原告側の関係者に対して本件土地・建物を売却するについて委任する旨の話や、また、具体的な報酬額についての話はなかつたが、原告が買主を探すことについて特段の異議が被告から述べられるということもなかつた。

(三) ところで、訴外迫田は、不動産業を営むもののようであるが、病気のため昭和五二年から同五四年までの間には、本件売買契約以外には不動産取引に関与しておらず、そのため本件土地・建物売却の斡旋に関する具体的な行動は原告が主体となつてこれを行わざるを得なかつた。

(四) また原告は、原告名義で本件土地・建物の物件説明書を作成のうえ同業者に配付するなどして物件の紹介につとめたほか、訴外迫田を介して被告と連絡のうえ同業者を本件土地に案内したこともあつた。その結果、原告は、本件土地・建物の買主となつた訴外仲田を、同訴外人から委託をうけて物件を探していた同業者が訴外宏信社及び同土井内から紹介されるに至つた。

(五) かくして、原告を含む右宏信社らの不動産業者によつて売買代金等の諸条件について折衝が進められた結果、同年三月二七日被告宅において、訴外安原、同山口、同迫田、同宏信社所属訴外伊藤敏則らが立会い、被告において訴外仲田に対し、本件土地・建物を代金七〇五六万四四〇〇円で売却する旨の本件売買契約が成立し、その場で訴外仲田から被告に対し、手附金として金一〇〇万円が支払われた。

(六) ところが右売買契約成立後、本件土地の一部が都市計画法に基づく道路計画にかかつていることが訴外仲田の申出により判明したため、これを理由に右売買契約が解除となるような事態を避けるべく、原告は訴外山口を介して訴外迫田と連絡のうえ他の仲介人と共に被告と売買価格の減額交渉をしたところ、同年四月五日坪(3.3平方メートル)当り金二万円の割合で売買代金を減額し、代金額総額を金六八八〇万二九〇円とすることとなつた。

【判旨】

2 右の認定事実によれば、当初被告から本件土地・建物の売却の仲介を明示的に依頼されたのはなるほど訴外迫田ではあるが、本件売買契約成立に至るまでの経緯等を順次考えると、同訴外人が行つた具体的な仲介行為としては、結局適当な仲介業者であるとして原告に紹介した後は、原告と被告との若干の連絡や売買契約書及び念書作成の場に在席する程度のことであつたに過ぎなかつたものというべき反面、原告は、本件土地・建物の物件説明書を作成して同業者に配付する等して買主の探知につとめたほか、本件売買代金額の決定諸条件の折衝にも関与し、売買契約に立会い、代金額等の空欄を補充して売買契約書を作成したうえ仲介人として買主側の仲介人訴外宏信社と並んで記名押印しているのに対し、右売買契約書上は訴外迫田が本件売買契約の仲介人として関与しているかどうか明確でなく、更に原告は売買契約成立後も代金減額の交渉に立ち会つてその念書を作成するなど、仲介業者として具体的、実質的な媒介の労をとつているばかりでなく、その仲介の労もこれを全体としてみれば主として被告の側に立つてその利益のためになしたものといえるが、被告においても、以上の点については取引交渉の経過、態様から十分窺知できたものと推認される一方、被告において原告の本件土地・建物に関する右のような具体的、実質的な売却斡旋媒介の行為を拒否する態度に出たことをうかがうべき資料もないのである。したがつて、遅くとも本件売買契約が成立した昭和五三年三月二七日当時には、原・被告間において黙示の仲介契約が成立し、被告が原告に対し相当額の報酬を支払うとの黙示的合意が存在していたものと推認するのが相当である。右推認を左右すべき資料はない。

三そこで相当額の報酬について検討する。

1 原告は売主である被告から仲介の委任を明示的にうけていないこと、被告から直接明示的に委任をうけたのが訴外迫田であることは前記認定のとおりであり、<証拠>によれば、被告と訴外迫田との間において、本件土地・建物の仲介につき報酬額を金一四〇万円とする旨の合意が一旦なされたが、前記認定のとおり、本件土地・建物の売買代金が坪(3.3平方メートル)当り金二万円宛減額されたため、被告訴外迫田に支払われる報酬の額も金六〇万円に減額され、訴外迫田は本件土地・建物の売買契約成立後、被告から右の金六〇万円を受け取つていることが認められる。他に右認定を覆えす証拠はない。

2 ところで、原告は報酬額として金二一七万六九三二円を請求しているが、宅地建物取引業者の仲介による報酬額の限度は宅地建物取引業法四六条一項により建設大臣の定めるところによることとされ、昭和四五年一〇月二三日建設省告示第一五五二号により、その額は、取引額のうち、金二〇〇万円以下の部分についてはその一〇〇分の五を、金二〇〇万円をこえ金四〇〇万円以下の金額部分についてはその一〇〇分の四をこえる金額部分についてはその一〇〇分の三をそれぞれ乗じて得た額の合計額とされており、本件の場合には、最終的に減額確定された金六八八〇万二九〇円をもつて右の取引額とすべきところ、同金額を基準として右割合により算出された報酬額が金二一二万四〇〇八円となることは計算上明らかである。

3 もつとも被告の仲介人としては、原告以外に訴外迫田が関与しており、前記認定のとおり、同訴外人と被告との間には報酬額について合意があるけれども、それは次の計算によつて訴外迫田の受けるべき報酬に関する被告と訴外迫田間の減額の特約にすぎないものと解され、他方、仲介人が数人ある場合には、各自は特約等特段の事情のないかぎり、売買の媒介に尽力した度合に応じて、報酬額を按分して請求できるものと解するを相当とする(最高裁判所昭和四三年四月二日判決民集二二巻八〇三頁以下参照)から、前記認定の被告、訴外迫田、原告との各関係、右三者の本件売買契約における役割等を考慮すると、本件において原告の受けるべき報酬の額は前記建設省告示により算出した金額の六割に当たる金一二七万四四〇四円とするのが相当である。

(仙田富士夫 片桐春一 山崎勉)

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