東京地方裁判所 昭和53年(ワ)6354号 判決
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【判旨】
二原告と被告木村及び被告生駒との間においては、請求原因事実の全部に争いがあるので、以下に検討する。
<証拠>によれば、次の事実を認めることができ<る。>
1 被告ら三名は、共同していか取り漁業を営むため、それぞれの所有する不動産を担保に供して津軽信用金庫から合計約金四、〇〇〇万円を借入れ、昭和四七年二月には、漁業協同組合の組合員である被告平野の名義でいか取り漁船「第十五善宝丸」(以下「善宝丸」と略称する)を購入していか取り漁業を開始した。そして、この漁業からあがる収益は、まず借入金の返済に充てることとし、利益があれば被告ら三名で等分に分配することにした。まもなく被告ら三名は、昭和四八年五月に、右共同事業のため「有限会社善宝水産」をそれぞれ応分の出資をして設立し、被告平野が代表取締役に、被告木村と被告生駒は取締役に就任した。
2 しかし、右共同事業は不振となり、借入金返済が進まないため、被告ら三名は、「善宝丸」をこの際他に処分するなどして借入金を返済することなどを検討したりしたものの、これという打開策も見つからないまま昭和五一年春になつた。このころ、被告木村は、かねてから被告らの窮状を知つていた訴外佐藤勇から原告を紹介されたので、原告を被告平野らにも引き合わせ、ここで被告ら三名は、原告に対し、右借入金返済のための融資をしてくれる者を紹介してほしいと依頼したところ、原告もこれを承知してしばらく奔走してみたが、結局金主を見つけることができなかつたので、この旨を被告らに伝えた。ところが、原告は、被告平野と被告木村から、それでは「善宝丸」の当面の操業資金を原告自らが貸してほしいと頼み込まれ、さらには被告平野からいか取り漁業が順調に運べば年末には何千万円にもなるなどといわれ、ついに「善宝丸」が当面操業するのに必要な資金として被告らに金員を貸付けることを決意した。一方、被告平野は、このころ、被告木村と被告生駒の両名から「善宝丸」の運営については被告平野の手腕に一任するといわれたので、原告に対し、「善宝丸」の操業資金として合計金一、〇〇〇万円程を必要に応じ随時送金の方法で貸付けてほしい、弁済期日を同年一一月末、利息及び損害金を月五分とする旨を申出たところ、原告はこの申出を承諾した。
3 このようにして、被告平野は、「善宝丸」の当面の操業資金について心配がなくなつたので、同年五月ごろ、被告生駒を「善宝丸」に乗組ませて出航させ、まず函館のドックで修理させたのち同年七月ごろからいか取り漁業を開始させた。この間、被告平野は陸上にあつて「善宝丸」を差配した。
そして、原告は、直接には被告平野の依頼により、次のとおり前後七回にわたつてその指定する宛先に送金した。すなわち、
(一) 同年五月一三日に「善宝丸」乗組員に支払うべき金銭として金一〇〇万円
(二) 同年六月二五日に「善宝丸」の修理代として金一五〇万円
(三) 同年六月二五日に「善宝丸」乗組員の給料等として金一〇〇万円
(四) 同年六月二九日に右(三)と同趣旨の金銭として金一〇〇万円
(五) 同年八月九日にやはり右(三)と同趣旨の金銭として金一〇〇万円
(六) 同年一〇月二日に「善宝丸」乗組員の船員保険料に支払うべきものとして金一六万円
(七) 同年一一月二日に右(三)と同趣旨の金銭として金一〇〇万円
以上の事実を認めることができるので、この認定事実に基づき検討するに、原告が送金した金銭は、いずれも被告ら三名が共同事業の手段とする「善宝丸」の操業資金として送金されたもので、これによつて受ける利益は被告らに共通であること、原告が右のような送金をするに至つた経緯、被告平野が「善宝丸」の運営について被告木村と被告生駒両名から一任されたこと、などの事情に照らすと、原告が被告平野の依頼によつて送金した合計金六六六万円については、被告ら三名が連帯して原告に返済すべきものと認めるのが相当である。
(近藤敬夫)