東京地方裁判所 昭和53年(ワ)70690号 判決 1979年7月20日
原告 山川守夫
右訴訟代理人弁護士 山岸赳夫
右訴訟復代理人弁護士 加藤義樹
被告 石川重作
被告 株式会社富士銀行
右代表者代表取締役 松沢卓二
右訴訟代理人弁護士 山根篤
同 下飯坂常世
同 海老原元彦
同 広田寿徳
同 竹内洋
同 馬瀬隆之
主文
一 被告らは、被告株式会社富士銀行が昭和五四年二月一四日東京法務局に対し被供託者を被告石川重作として供託(供託番号昭和五三年度証第一三〇五号)した別紙手形目録記載の約束手形一通の払渡請求権が原告にあることを確認する。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。
事実
《省略》
理由
一 《証拠省略》によれば、原告は本件手形を所持していたが、昭和五一年七月三〇日午後八時四〇分頃から翌三一日午前九時三〇分頃までの間に右手形を盗まれたことが認められる。
二 《証拠省略》によれば、被告石川は従来より被告富士銀行に取引口座を設け取引をしていたが、本件手形が不渡りとなった後は現在に至るまで被告富士銀行と取引はもちろん音信もないこと、被告石川から被告富士銀行へ届出られた住所は実在せず架空のものであって、被告富士銀行の調査にもかかわらず、被告石川の所在は不明であること、本件手形盗難後一か月位の間に数回にわたり自称加藤から原告へ本件手形の買取りを求める電話のあったことが認められる。右認定事実からすれば、被告石川は少なくとも本件手形が窃取されたものであるとの情を知って取得したと推認せざるを得ない。被告石川が本件手形を被告富士銀行に対し取立委任し、被告富士銀行は該目的のため本件手形の裏書譲渡を受けたこと並びに被告富士銀行が昭和五四年二月一四日に本件手形を東京法務局に弁済供託したことは、原告と被告富士銀行との間では争いがなく、原告と被告石川との関係では《証拠省略》によって認められる。
三 右認定事実からすれば、被告富士銀行が昭和五四年二月一四日に東京法務局に対し被供託者を被告石川として供託(供託番号昭和五三年度証第一三〇五号)した本件手形の払渡請求権が原告にあることが認められる。
よって、原告の被告両名に対する本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 市瀬健人)
<以下省略>