東京地方裁判所 昭和53年(ワ)8534号 和解
第一二回口頭弁論調書(和解)
原告
長ミチ
右訴訟代理人
朝倉正幸
外二名
被告
株式会社毎日新聞社
外三名
右被告四名訴訟代理人
河村貢
外二名
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請求の趣旨原因は訴状記載のとおり
和解条項
一被告株式会社毎日新聞社は東京都において発行する毎日新聞に別紙の広告を社会面広告欄上部に一回掲載する。
二前項の広告を掲載する日は、被告人平田光成に対する第一審刑事判決の報道されるときはその日、報道されないときは判決宣告のあつた日もしくはその翌日とする。
右記事が掲載されるときは第一項の広告は可及的に右記事の掲載場所に近い場所に掲載する。
三原告は被告根上磐を被告訴人として昭和五三年七月一〇日付被告発行の毎日新聞夕刊の記事に関し、東京地方検察庁検察官に対してなした名誉毀損罪の告訴の取下手続をする。
四原告は本件のその余の請求を放棄する。
五原告と被告等は互に相手方に対し前各号に定める他は債権債務のないことを確認する。
六訴訟費用は各自弁とする。 以上
(佐藤安弘)
<別紙>
お詫び
当社は毎日新聞昭和五三年七月一〇日付夕刊(四版)一部地区配布の社会面に「義理の娘取り調べ銀座のママ殺し預金下ろした筆跡酷似」なる見出しの記事を掲載し、貴女を右殺人事件の容疑者である旨報道いたしました。
しかし、この記事は翌七月一一日付朝刊社会面でお詫びし訂正したとおり、真実に反するものであり、貴女はこの事件とは全く関係がありませんでした。
このような誤った報道をしたのは当社の責任であり、これにより著しく貴女の名誉を傷つけ申訳けありません。深く陳謝いたします。
昭和五 年 月 日
株式会社毎日新聞社長 ミチ様
〔請求の原因〕
一、原告は東京都千代田区において喫茶店を経営している女性である。
二、被告株式会社毎日新聞社(以下被告新聞社という)は公称四五〇万部の毎日新聞を発行するわが国で最も古い歴史を有する一流の全国紙であり、被告細島泉は同社編集局長、同森浩一は同社編集局社会部長、同根上磐は同社社会部警視庁キヤツプを勤める記者である。
三、被告新聞社は、昭和五三年七月一〇日同社発行の毎日新聞夕刊四版に四段抜きで「義理の娘、取り調べ銀座のママ殺し預金下ろした筆跡酷似」なる見出しの別紙目録(一)記載の通りの記事(以下本件記事という)を掲載し、原告が銀座のクラブママ、石田ヨシ子殺害事件の重要参考人として七月一〇日警察より事情聴取をうけ、同夕までに殺人容疑で逮捕されるとの報道を行つた。
四、然るに、本件記事は全く事実に反するものである。
(一) 原告は、七月一〇日重要参考人として高輪警察署捜査本部において事情聴取をうけた事実はない。
(二) 被害者の預金を下ろした女性と原告の筆跡が酷似している事実もない。
(三) 被害者の殺害された五月二一日夜の原告のアリバイははつきりしている。
(四) 原告と被害者とが仲が悪かつた事実もなく、借金を断られた事実もなく、従つて被害者を憎んでいた事実もない。
(五) 原告が被害者の葬式に出席しなかつた理由について、警察に呼ばれたとウソの言い訳をした事実もない。
(六) 原告が盗まれたダイヤの指輪の置き場所を知つていた事実もない。
五、原告は、本件記事が掲載されたことにより、本年五月下旬以降東京において発行されている各新聞がセンセーシヨナルに報道してきた銀座ママ殺人事件の犯人であるかの如き印象を世人に与え、自己の名誉を著しく毀損され、筆舌に尽し難い精神的苦痛を蒙つた。原告の蒙つた精神的苦痛に対する慰籍料は少くとも金二〇、〇〇〇、〇〇〇円以上に相当するものと考える。
また、原告の名誉を回復するためには、少くとも東京都内において発行する朝日新聞、読売新聞及び毎日新聞紙上に請求の趣旨記載の如き謝罪広告を掲載することが必要である。
六、本件記事は、被告新聞社の警視庁キヤツプである根上磐が中心となり、取材し記事とし、社会部長である被告森浩一の判断の下に前記毎日新聞夕刊に掲載されたものである。被告根上及び森は、本件記事により原告の名誉を毀損するであろうことの認識を有しながら、全く裏づけ調査を行うこともなく、本件記事とし、原告の名誉を毀損したものであるから民法七〇九条による責任を負うべきである。
また被告新聞社は、その被用者である被告根上及び森が被告新聞社の事業の執行につき、原告の名誉を毀損したものであるから、被告根上及び森の使用者として、また被告細島泉は、被告新聞社の編集局長であるから、使用者に代つて事業を監督するものとして、いずれも民法七一五条に基づいてその責に任ずべきである。
七、よつて原告は被告らに対し、慰藉料として金二〇、〇〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和五三年七月一一日以降完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求め、また被告新聞社に対し、名誉回復のため別紙(二)記載の謝罪広告を請求の趣旨記載の条件で、朝日新聞社、読売新聞及び毎日新聞の各紙上に掲載を求める次第である。