大判例

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東京地方裁判所 昭和53年(人)8号・昭54年(人)3号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

四人身保護規則第四条によれば、人身保護請求は拘束が権限なしにされていることが顕著である場合に限りすることができるものと定められているところ、さらに夫婦の一方が排他的に子供を監護している場合、他方からなされる人身保護請求において、子供に対する拘束が不当なものであるか否かの判断は、形式的な拘束権限の有無もさることながら、夫婦のいずれに監護させるのが子供にとつて幸福であるかを主眼として決するのが相当であるから、以下、右の点について検討する。<中略>

2 そこで、次に被拘束者らの幸福という観点から本件拘束の当否を考えてみると、請求者と拘束者らは、前示の事実から窺われるとおり被拘束者らに対する愛情の強さ、監護能力、居住環境等においては殆んど差異はなく、経済的能力においても、請求者と晃との間には資産・収入の面で差があることは否めないにしても、請求者において養育する場合には、晃から請求者に対して養育料の支払を期待できるから、現在の経済的能力の差異をもつて被拘束者らの幸福の程度を推測することは妥当でない。しかし、本件の場合、被拘束者らは昭和五〇年九月から昭和五二年七月までの二年近くを、それまでと全く生活環境の異なる西ドイツで生活し、昭和五二年七月から半年以上の間は、父親の親戚の家に預けられて過ごした後、現在の状態になつたものであり、しかもこれらの生活環境の変化は父親と母親との不和に起因し、その変化の態様もいずれの場合も被拘束者らにとつてみれば唐突で激しいものであつたといわなければならない。このような現在の状態に至るまでの経験が、精神の形成過程にある被拘束者らに与える影響は相当大きなものがあつたと考えられる。前記和解も請求者と晃との間の夫婦関係の安定を期待しているものであり、現在被拘束者らにとつて重要なことは親子関係を含め安定した環境を確保することであり、和解以後現在の生活状態となつてから精神的にも安定し、学校生活、交友関係などの面でも順調な発育がみられるようになつた被拘束者らの生活を両親の別居状態のまま再び請求者のもとに委ねることが被拘束者らの幸福に資するものとは解し難い。

(丹野達 富越和厚 市村陽典)

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