東京地方裁判所 昭和53年(特わ)2271号 判決 1978年12月22日
本店所在地
東京都台東区元浅草四丁目六番六号
台東部品株式会社
(右代表者 代表取締役 加藤精七)
本籍
同区元浅草二丁目六八番地
住居
同区東上野六丁目四番四号
会社役員
加藤精七
昭和三年九月一三日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官乙部二郎出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人台東部品株式会社を罰金一、〇〇〇万円に、被告人加藤精七を懲役一〇月にそれぞれ処する。
被告人加藤精七に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人台東部品株式会社(昭和五〇年一〇月一二日以前の商号は台東自動車部品株式会社。以下「被告会社」という。)は、肩書地に本店を置き、自動車部品製造販売等を目的とする資本金二、〇〇〇万円(昭和五〇年一一月二二日以前は一、二〇〇万円、同年七月三〇日以前は一、〇〇〇万円)の株式会社であり、被告人加藤精七(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空仕入の計上等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和四九年一二月一日から同五〇年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六、四八三万六、九六三円あつた(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同五一年一月三〇日、東京都台東区蔵前二丁目八番一二号所在の所轄浅草税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三、二三〇万三、九四八円でこれに対する法人税額が一、〇七九万一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五三年押第一九六三号の符号一)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二、三七五万五、四〇〇円(税額の算定は別紙(三)の一計算書参照)と右申告税額との差額一、二九六万五、三〇〇円を免れ、
第二 昭和五〇年一二月一日から同五一年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億一、五五六万二、五八三円あつた(別紙(二)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同五二年一月二八日、前記浅草税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四、〇八七万七〇円でこれに対する法人税額が一、四六七万五、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号二)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もつて不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額四、四五三万九、一〇〇円(税額の算定は別紙(三)の二計算書参照)と右申告税額との差額二、九八六万三、五〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
第一 判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、
一 被告人の当公判廷における供述並びに検察官に対する供述調書(二通)及び大蔵事務官に対する質問てん末書(乙2ないし4)
一 佐藤芳江、大橋幹雄の検察官に対する各供述調書(甲一22、23)
一 野中静江(二通)、渡部八重の大蔵事務官に対する各質問てん末書(甲一24ないし26)
一 登記官戸村茂作成の登記簿謄本及び閉鎖役員欄用紙謄本(甲一1、2)
第二 別紙(一)、(二)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち、
(イ) 期首商品棚卸高(一<2>)、期末商品棚卸高(二<5>)につき、
一 大蔵事務官作成の商品勘定調査書(甲一3)
(ロ) 仕入(各<3>)、外注加工費(一<4>)につき、
一 大蔵事務官作成の取引先別仕入調査書(甲一4)
(ハ) 給料手当(各<6>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外及び架空給料手当調査書(甲一5)
(ニ) 福利厚生費(各<7>)につき、
一 佐藤芳江作成の「厚生福利費として記帳したゴルフ大会費用について」と題する申述書(甲一8)
(ホ) 旅費交通費(一<8>)につき、
一 大蔵事務官作成の架空給料手当に伴う旅費交通費調査書(甲一11)
(ヘ) 交際接待費(各<10>)につき、
一 大蔵事務官作成の交際接待費勘定調査書(甲一7)
(ト) 退職金(各<25>)につき、
一 大蔵事務官作成の架空及び簿外退職金調査書(甲一12)
(チ) 手数料(各<27>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外で支出した「手数料」調査書(甲一13)
(リ) 減価償却費(各<28>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外資産減価償却費調査書(甲一14)
(ヌ) 雑費(各<29>)につき、
一 佐藤芳江作成の大蔵事務官に対する申述書(甲一9)
一 大蔵事務官作成の簿外雑費調査書(甲一16)
(ル) 受取利息(各<30>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外預金利息等調査書(甲一17)
(ヲ) 雑収入((一)<31>)につき、
一 大蔵事務官作成の社宅減価償却費繰戻しによる雑収入調査書(甲一15)
(ワ) 価格変動準備金戻入((二)<34>)、価格変動準備金繰入(各<38>)につき、
一 浅草税務署長作成の証明書(甲一18)
(カ) 退職給与引当金繰入((二)<39>)につき、
一 大蔵事務官作成の51/11期「退職給与引当金の繰入限度超過額」調査書(甲一19)
(ヨ) 交際費損金不算入((一)<43>、(二)<44>)につき、
一 大蔵事務官作成の交際費等の損金不算入額の計算調査書(甲一10)
(タ) 貸倒引当金超過額((一)<44>)、貸倒引当金認容額(各<46>)につき、
一 大蔵事務官作成の貸倒引当金繰入超過額及び貸倒引当金認容調査書(甲一20)
(レ) 損金不算入役員賞与(各<50>)につき、
一 大蔵事務官作成の簿外給料手当のうち役員賞与否認調査書(甲一6)
(ソ) 事業税認定損(各<51>)につき、
一 大蔵事務官作成の未納事業税調査書(甲一21)
第三 別紙(一)、(二)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、
一 押収にかかる被告会社の50/11期、51/11期各法人税確定申告書各一綴(昭和五三年押第一九六三号の符号一、二)
(法令の適用)
法律に照すと、判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告会社については情状に鑑み同法第一五九条第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内において罰金一、〇〇〇万円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において懲役一〇月にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 半谷恭一)
別紙(一) 修正損益計算書
台東部品株式会社
自 昭和49年12月1日
至 昭和50年11月30日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(二) 修正損益計算書
台東部品株式会社
自 昭和50年12月1日
至 昭和51年11月30日
<省略>
<省略>
<省略>
別紙(三)の一 ほ脱税額計算書
〃 〃二
昭和49年12月1日~昭和50年11月30日事業年度
昭和50年12月1日~昭和51年11月30日事業年度
<省略>