大判例

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東京地方裁判所 昭和54年(ヨ)2318号・昭54年(ヨ)2322号

両事件申請人

全日本運輸一般労働組合東京地方本部東部地域支部

右代表者執行委員長

小出英人

両事件申請人

江島俊一

宮田悦雄

佐藤佐七

田中二郎

両事件申請人ら代理人弁護士

久保田昭夫

(ほか七名)

昭和五四年(ヨ)第二、三一八号事件

被申請人

安藤運輸株式会社

右代表者代表取締役

安藤正雄

安藤善一

昭和五四年(ヨ)第二、三二二号事件

被申請人

安藤運送株式会社

右代表者代表取締役

安藤正雄

安藤善一

同事件被申請人

安藤正雄

安藤トミ

安藤善一

両事件被申請人ら代理人弁護士

松浦勇

主文

一  被申請人安藤運輸株式会社、同安藤運送株式会社は黎明塾城東支部、國士会城東支部各所属の者等の第三者をして、申請人江島俊一、同宮田悦雄、同佐藤佐七、同田中二郎が被申請人安藤運輸株式会社構内に所在する別紙図面表示のA棟及びB棟の各自居住する室内において生活すること及びそれに付随して炊事のために同図面表示の食堂を使用すること、同図面表示の浴場、トイレを使用すること、また、これらの施設利用のために右安藤運輸株式会社の敷地、建物内を通行することを、暴行、尾行、怒号を発する等の行為により妨害してはならない。

二  申請人らのその余の申請を却下する。

三  申請費用は、両事件についていずれもこれを四分し、それぞれその三を申請人らの負担とし、その余を被申請人ら(各事件についての)の負担とする。

理由

一  当事者の求めた裁判

申請人ら(両事件について)

(一)  被申請人らが自らあるいは國士会総本部、黎明塾等の第三者をしてなしている、別紙物件目録(略)記載の敷地ならびに建物(以下本件物件という。)に対する占有を解いて、東京地方裁判所執行官に保管を命ずる。

執行官は、申請人組合が組合活動のために本件物件を使用することを許さなければならない。

執行官は、その保管にかかることを公示するため、適当な方法をとらなければならない。

(二)  被申請人らは、自らあるいは國士会総本部、黎明塾等の第三者をして、申請人江島俊一、同宮田悦雄、同佐藤佐七、同田中二郎が被申請人安藤運輸株式会社構内にある別紙図面表示のA棟、B棟(寮)の自室、食堂において食事、睡眠等日常生活に伴う諸活動をなすこと、それらの目的のために右安藤運輸株式会社の構内及び寮内に立ち入ることを、暴行を働き、もしくは尾行し、怒号を発し、騒音を発生させるなどの実力をもって妨害してはならない。

二  当事者の主張(両事件について)

1  申請人ら

(一)  申請人全日本運輸一般労働組合東京地方本部東部地域支部(以下申請人組合という。)はトラック運輸産業及び関連産業に従事する労働者によって組織された総評運輸一般労働組合の下部組織であり、東京都江東区、江戸川区、墨田区、千葉県及び茨城県の運輸一般組合員により組織された労働組合である。

安藤運輸分会(以下分会という。)は申請人組合の下部組織であり、被申請人安藤運輸株式会社(以下安藤運輸もしくは会社という。)の従業員一一名によって組織された労働組合である。

その余の申請人らはいずれも分会員であり、安藤運輸の寮に入寮している者である。

(二)  安藤運輸は鋼材、鉄骨のトラック運送を業としている者であるが、昭和五三年三月不渡り手形を出して倒産した。

被申請人安藤運送株式会社(以下安藤運送という。)は陸上小運搬業を目的とする会社であるが、その業務は安藤運輸をして行い、独自の業務は行っていないが別紙物件目録記載の敷地と建物を所有している。

被申請人安藤正雄、同安藤トミ、同安藤善一はいずれも安藤運送、安藤運輸両社の取締役である。

(三)  昭和五〇年五月九日に分会が結成されたが、右分会はそれ以降、安藤運輸構内の組合事務所、会議室、食堂(別紙見取図参照)及び構内広場を中心に安藤運輸の不当労働行為の救済、解雇撤回の運動を展開してきた。

そして安藤運輸はこれを容認してきた。

ところで運輸一般労働組合は規約上支部が独自の議決機関ならびに執行機関を有する労働組合として組織単位とされており、その下部組織として分会を設立することができるとされている。したがって分会は支部の内部組織にすぎず、分会の組合活動は支部の組合活動に他ならない。申請人組合はかかる支部の一つであるが、昭和五〇年一〇月以降、右組合事務所、会議室を組合活動に使用し、また分会結成以来、駐車場を各種集会のために使用している。

さらに食堂を分会員、支援団体員の食事、休憩、連絡、雨天時の集会等のために分会結成以来使用し、安藤運輸もこれを容認していた。

よって、申請人組合と会社との間には、分会が存続する限り右会社施設並びに敷地を組合活動のために占有、使用する旨の黙示の使用貸借契約、もしくは使用貸借類似の無名契約たる黙示の使用協定が締結されているというべきであり、申請人組合は右会社施設並びに敷地に対する占有権を有している。

仮にそうでないとしても、申請人組合は前記のとおり長年にわたって右会社施設、敷地を組合活動のために事実上占有、使用し、会社もこれを容認してきたから占有権を有する。

(四)  しかるに、会社及びその余の被申請人らは昭和五四年七月二八日、國士会総本部並びに黎明塾と称する団体をして会社構内に乗り込ませ、申請人組合の占有、使用を実力で排除した。

したがって、申請人組合は占有権に基づき、占有回収の仮処分命令を求める。

(五)  また、その余の申請人らは会社構内の寮居住者であるが、前記団体が会社構内に乗り込んで以来、暴行、脅迫を加えられ生活が妨害されている。

よって、右害害を排除する仮処分命令を求める。

2  被申請人ら

(一)  本件物件は安藤運送所有にかかるものであるが、安藤運輸はこれを賃借して営業を営んでいたところ、賃貸借契約は昭和五三年五月末日解除されたため、本件物件の明渡返還義務を負っている。

(二)  申立人組合は会社にとって外部団体であり、本件物件に立ち入る権利はなく占有権は有しない。

(三)  会社の寮に居住する申請人四名については、宿舎への出入、居住を妨害した事実はなく、会社にそのような意図もない。

三  当裁判所の判断

1  占有回収の申請について

一件疎明によると、会社構内の土地、建物の所有者である安藤運送は昭和五四年七月二七日、申請外原田泰壽と右土地、建物の一部について賃貸借契約を結び、右契約により、同月二八日以来、黎明塾城東支部、國士会城東支部が右貸借部分を右各団体の事務所兼宿泊所として使用すると共に会社構内、建物を警備するに至り、その結果、申請人組合は会社構内、建物を使用できない状況にあることが一応認められる。

しかし、右組合は被保全権利として占有権を主張し、それを基礎づけるものとして同組合と会社との間には本件物件について黙示の使用貸借契約もしくは黙示の使用協定が締結されているといい、また分会が結成された昭和五〇年五月以来(もしくは同年一〇月以来)、本件物件について事実上の排他的占有、使用状態が継続していると主張するが、一件疎明によるも右各主張を裏付けるに足りないので、その余を判断するまでもなく、本件占有回収の仮処分申請は理由がない。

2  申請人組合以外の申請人らの妨害排除申請について

これらの申請人らが別紙図面表示の各居室について、会社との間に少なくとも黙示的な使用貸借契約を締結し、現に使用してきたことは疎明されているから(なお、右各居室の存する建物の所有権は安藤運送が有しているが、一件記録によれば、安藤運送並びに安藤運輸の役員構成、営業形態等からして両社はその実質を同じくすることが一応認められる。)、申請人らが右各居室について占有権を有することが一応認められる。

また、本件主張及び疎明によれば、右申請人らは右各居室使用に伴う日常生活のために別紙図面表示の浴場、トイレを使用し、また食堂において自炊していることが一応認められる。

しかるに、疎明によれば、昭和五四年七月二八日から前記団体が会社構内を使用及び警備するようになって以来、申請人らは右団体所属者により追尾をうけ、居室の扉を叩かれ、あるいは怒鳴り付けられる等の行為を受け、今後も受ける虞れのあることが一応認められる。

これらの行為は申請人らの前記居室を中心とした生活関係に対する妨害であると言える。

そして右妨害を排除すべき保全の必要性も認められるので、申請人らの安藤運送及び安藤運輸に対する妨害排除の本申請は是認されるべきである。

但し、右両会社以外の被申請人は、個人の立場で申請人らの生活を妨害させる旨の意思及び事実の疎明がないので、これらの者に対する申請は失当であり、右両会社についても、会社自らの妨害排除を求める部分は、自らの妨害の事実及びその虞れについての疎明がないので失当である。

さらに、申請人らが会社構内に立ち入ることに対する妨害排除を求めている部分についても、かような妨害の事実ないし、今後の虞れについての疎明がないので失当である。

四  よって、申請人江島俊一、同宮田悦雄、同佐藤佐七、同田中二郎の被申請人安藤運輸株式会社及び同安藤運送株式会社に対する妨害排除の申請を主文の限度で認容し、申請人らのその余の申請は失当であるので却下することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 赤西芳文)

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