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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)10661号・昭55年(ワ)1681号 判決

一 原本の存在及び成立に争いのない甲第九号証によれば、原告ら主張の実用新案権(本件実用新案権)が発生し、存続していたことが認められる。もつとも、右認定事実によれば、本件実用新案権は、その出願日である昭和四四年三月一五日から一五年を経過した同五九年三月一五日をもつて存続期間の満了により消滅したことが明らかである。

したがつて、本件実費新案権の存続を前提とする原告長谷川の請求は、右に述べた点において既に理由がない。

二 そこで、以下、原告高島の請求の当否につき判断する。

本件実用新案権にかかる考案(本件考案)の実用新案登録出願の願書に添付した訂正明細書(本件明細書)の実用新案登録請求の範囲の記載が原告高島主張のとおりであることは、当事者間に争いがなく、右争いのない事実と成立に争いのない甲第一号証、第三、第四号証によれば、本件考案は原告高島主張のAないしDの各構成要件からなるものであることが認められる。

三 被告が昭和五一年七月一日から少なくとも同五三年五月三一日までの間、別紙目録記載の製品(被告製品)を製造販売していたことは、当事者間に争いがない。

四 本件考案と被告製品とを対比する。

1 まず、被告製品は、打玉自動供給装置を備えたパチンコ遊技機であるから、本件考案の構成要件Dを充足することが明らかである。

2 次に、被告製品が本件考案の構成要件C、すなわち、昇降杆6をモーター9により定速回転するカム7に連結するとの要件を充足するか否かにつき検討する。

(一) 前掲甲第三号証によれば、本件明細書の考案の詳細な説明の欄には、本件考案の目的等につき、「この考案はパチンコ遊技機の打玉を、玉打位置へ自動的に、しかも所定の速さを以て供給する装置で、(中略)低い障害5に隣接した通路3に定速玉送り片6を設け、これを原動軸に連結したものである。」(別添訂正明細書一頁左欄三四行目から四〇行目まで)との記載が、実施例にかかる装置の動作の説明として、「送り片6は、モーター9によつて定速回転するカム7に係合して上下動を繰返している」(同一頁右欄三一、三二行目)との記載及び「玉打杆4の前方に玉がなくなつても、送り片6が再び上昇しない限り後続位置の玉は供給されないから、送り片6の昇降速さよりも早い速度で玉を打つことはできない。」(同一頁右欄三九行目から四二行目まで)との記載が、また、本件考案の作用効果につき、「この考案装置は賞品玉は自動的に玉打位置に供給されるから、客は玉を手で供給する面倒がなく、かつ敏速に玉を打つことができる。なお、その供給する速さは予め定められた速さ、例えば規則によつて定められた一分間一〇〇個にしておけば、この速さよりも早く玉打レバーを操作しても制限以上の早さで玉を打つことができないから、連続打の速さは制限され規則に反することを防ぐことができるものである。」(同二頁左欄二行目から右欄一行目まで)との記載があること、しかしながら、本件考案が、その玉送り片ないし昇降杆6を、玉打杆4を介して間接的にカム7と係合するなどの構成をも包含しうるとの点については、本件明細書及び願書添付図面中に格別の記載も示唆もないことが認められる。

(二) 成立に争いのない乙第一号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第三号証、第六、第七号証、第九ないし第五号証、第一三、第一四号証とを対照し、かつ、弁論の全趣旨を総合すれば、パチンコ遊技機の打玉自動供給装置としては、本件考案の登録出願前において、いわゆる単独自動供給方式と運動自動供給方式の二種類が公知であり、前者が玉の発射操作とは無関係に玉を一定の速度で自動的に玉打位置へ供給するというものであるのに対し、後者は玉の発射操作と供給とを連動させ、発射操作ごとに玉を一個ずつ自動的に玉打位置へ供給するというものであることが認められる。

(三) また、原本の存在及び成立に争いのない乙第一五ないし第一七号証の各二によれば、本件実用新案権に対する各実用新案登録無効審判請求事件において、被請求人である原告長谷川は、本件考案は、昇降杆をモーターにより定速回転するカムに連結するという構成を採ることによつて、玉打レバーの操作速度に関係なく発射位置へのパチンコ球の供給速度を一定にすることができるものである旨の主張を再三にわたつて繰り返していることが認められる。

(四) 右(一)ないし(三)の各認定事実を総合勘案すれば、本件考案は、前記実用新案登録請求の範囲記載の構成を採用することによつて、玉打レバーの操作ないし操作速度とは無関係に、玉を一定の速度で自動的に玉打位置へ供給することができるというものであつて、前述の単独自動供給方式にかかるものであることが明らかであり、したがつて、本件考案の構成要件Cは、昇降杆6を、玉打杆4と係合ないし連結することなく、カム7と係合・連結するという構成に限られると認めるのが相当である。

原告高島は、本件考案を前記各供給方式のいずれに適用するかは、その実施に当たつて当業者が任意に選択しうるところであるなどと主張するが、この主張を採用し難いことは右の説示に照らして明らかというべきである。

(五) ところで、被告製品の構造を示すものとして前記のとおり当事者間に争いのない別紙物件目録の記載に照らせば、被告製品においては、モーター7によつて定速回転するカム8が玉打杆4を一定周期で揺動させ、この揺動の時計方向の運動のみを引掛杆9によつて作動杆10に反時計方向の回動として伝えるようになつており、作動杆10はこれに形成してあるビン10´と揺動レバー6の長孔25との係合によつてこの揺動レバー6と連結しており、また、揺動レバー6は本件考案における「昇降杆6」に該当するとみるべき玉載せ台12と一体に形成されているものであつて、換言すれば、玉載せ台12が揺動レバー6、作動杆10、引掛杆9及び玉打杆4を介して、モーター7によつて定速回転するカム8と連結するという構成が採用されているのであり、その結果、玉載せ台12が玉打杆4の玉発射運動と同期するように上下動を繰り返すものであるから、被告製品は前述の連動自動供給方式に属することが明らかである。

したがつて、被告製品は、本件考案とは技術思想を異にし、本件考案の構成要件Cを充足しないというべきである。

3 右のとおり、被告製品は本件考案の構成要件Cを充足しないから、その技術的範囲に属しない。

五 そうすると、原告高島の請求もその余の点につき判断するまでもなく理由がないこととなる。

六 以上の次第であつて、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする。

〔編註その一〕本件実用新案の登録請求範囲は左のとおりである。

「パチンコ遊技機1の玉受2に連結した傾斜通路3の終端を玉打杆4の直前すなわち玉打位置に臨ませると共に該終端に低い障害5を設け、該低い障害5に隣接した通路3に昇降杆6を設け、これをモーター9により定速回転するカム7に連結したパチンコ遊技機における打玉自動供給装置。」

〔編註その二〕本件実用新案の構成要件は左のとおりである。

A パチンコ遊技機1(本件考案についての番号は別添訂正明細書記載のものを指す。以下同じ。)の玉受2に連結した傾斜通路3の終端を玉打杆4の直前すなわち玉打位置に臨ませると共に、該終端に低い障害5を設けること。

B 該低い障害5に隣接した通路3に昇降杆6を設けること。

C 右昇降杆6をモーター9により定速回転するカム7に連結すること。

D パチンコ遊技機における打玉自動供給装置であること。

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