東京地方裁判所 昭和54年(ワ)1454号 判決
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【判旨】
一請求の原因第1項の事実は当事者間に争いがなく、<証拠>によれば次の事実が認められる。
1 繁則は原告との婚姻当初より仕事上地方出張が多く、又接待などで家を空けることがあつたが、昭和五二年ころまでは両者の婚姻生活は表立つた問題もなく維持されていた。しかし昭和五三年に入ると、二人の仲は次第に疎遠になり、同年五月ころより繁則が当時夫婦で住んでいた日野市(原告の肩書住所地)に帰つてくるのは少なくなつた。
2 繁則は同年夏原告に対し、原告が働いていた繁則経営のEL電化センターの仕事が忙しかつただろうから一カ月位実家へ帰つたらと勧め、同年一〇月末に原告が帰京しても帰宅しなくなつた。一方、原告は、繁則より同人が当時経営しはじめた新宿の深夜スナックしらかわが忙しいと説明され、日野市から通勤するのは無理であろうと納得していた。
3 被告はスナックに勤めていた昭和五三年六月ころ、店に客として来た繁則と会い、同年八月に同人と情交関係を結んで同棲するに至つた。被告は同棲前に繁則から同人には妻子がいることを聞かされていたが、繁則は被告に対しては原告と離婚することになつており別居していると言つていた。
4 繁則の外泊は原告との婚姻当初よりよくあつたが、昭和五三年に入ると帰宅しない日が多くなり、被告と同棲した同年九月からは全く帰宅しなくなつて原告とは完全な別居状態となり、現在両名の間では離婚訴訟が係属していて、原告は生活保護を受けて生活している。(繁則が友人や両親に原告との離婚について相談したのは昭和五三年一〇月以降である。)一方、被告と繁則の同棲は昭和五四年四月まで続き、その間被告は繁則の子供を一度中絶している。
以上の通り認められ<る。>
二以上の事実によれば、原告と繁則の婚姻生活は被告が繁則と情交関係を持つ以前からも円満さを欠くことがあつたことも否定できないかと思われるが、昭和五三年八月ころ破綻していたとは到底認めることはできないから、この点に関する被告の主張は理由がない。
次に、被告は原告ら夫婦の婚姻生活を破綻させる意思はなかつた旨主張するが、同棲する相手に配偶者のあることを知りながら、一方当事者である夫繁則の離婚の約束ができているとの言葉をのみ信用し、相手方配偶者である妻原告の意思や婚姻生活の実態を確認せずに情交関係を結んだことは少くとも原告の妻としての地位を侵害したことにつき過失責任があるものといわざるを得ない。
三原告本人尋問の結果によれば、被告の不貞行為及びこれに主たる原因のある婚姻生活の破綻により原告が多大の精神的苦痛を受けたことが認められ、本件にあらわれた諸般の事情を考慮すれば被告が原告に支払うべき慰藉料は金一〇〇万円が相当である。
(古川行男)