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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)1548号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

そこで、被告が、商法二六六条の三に基づき、原告に対し原告の被つた前記損害を賠償すべき義務があるか否かについて判断する。

1 <証拠>によれば、

(一) 被告は、昭和四五年に不動産業を目的とする東京ハウジング興産株式会社を設立して、その代表取締役に就任し、更に翌四六年には、南屋敷らとともに、ダイヤモンド物産を設立して、その代表取締役を兼ねるようになつたこと

(二) しかし、ダイヤモンド物産の設立後においても、被告は主として東京ハウジング興産株式会社の業務活動に精力を注ぎ、ダイヤモンド物産においては、主に資金関係を担当するのみで、業務活動については、同社の専務取締役であつた能登や、同じく取締役業務部長であつた南屋敷にほとんど一任し、業務執行の全般にわたつておおむねその事後報告を受ける程度にとどまつていたこと

(三) ダイヤモンド物産は、昭和四八年になつて営業不振に陥つていたところ、その頃、被告のかねてからの友人で、「モードコーラル」の商号をもつて洋服の仕立販売を経営していた菊池信司との間で融通手形を交換したが、その満期が到来しても被告には資金の手当てができず、結局、右菊池の振出した手形は昭和四八年七月ころ不渡りとなつたため、そのままダイヤモンド物産は右菊池に対し、右手形金額に相当する七〇〇万円ないし八〇〇万円の債務を負い、同社は事実上倒産するに至つたこと

(四) 菊池信司及びその兄である菊池良助の二名は、昭和四八年八月ころ、連日の如く、右債権の取立てのためにダイヤモンド物産に赴いていたのであるが、被告は、菊池信司に対する右債務の処理方法について能登や南屋敷に対し、何らの指示をも与えていなかつたこと

(五) ダイヤモンド物産の倒産に際し、被告は、同社の債権債務を含む積極消極資産状況を自ら調査確認することもなく、これを全て能登や南屋敷に任せていたこと

(六) ダイヤモンド物産の代表者印については、倒産に至る以前から、被告はこれを経理係の西村に保管させており、その使用については事後承諾を与えるにとどまつていたところ、同社が倒産した後になつても、被告はこれを自ら保管するような措置をとらなかつたこと、

以上の事実を認めることができ、この認定を左右するに足る証拠はない。

2 ところで、株式会社の代表取締役は、善良な管理者の注意をもつて会社のために忠実にその職務を執行すべき義務があり、特に会社が倒産状態に立ち至つているような場合には、会社の利益を保全し、損害を回避し、また、会社債権者への適正な弁済を確保する等のためにも、会社の既存の債権及び債務を厳重に調査し、会社財産の散逸を防止する等適切な配慮を加え、会社の業務経理の全般にわたつて特に慎重な管理監督を行うべき義務があるものと解すべきである。

そこで、この点を本件についてみるに、前記認定事実を総合すれば、被告は、倒産したダイヤモンド物産の代表取締役として当然になすべきである適切な措置を尽くしたものとは到底いえず、これを尽くしておれば、本件土地について原告への所有権移転登記が未了であつた事実も容易に知ることができ、かつ、南屋敷の前記不正行為を事前に防止することができたものであるのにこれを漫然と看過したものというべきであり、従つて、この点において、被告は重大な過失によりダイヤモンド物産の代表取締役としての職務を怠り、もつて原告に前記損害を被らせたものというべきである。

よつて、被告は、商法二六六条の三の規定に基づき、原告の被つた前記損害を賠償すべき義務がある。 (三宅弘人)

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