大判例

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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)3836号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

三時効の主張について

被告は、原告の被告に対する本件損害賠償請求権は時効によつて消滅したと主張するので、この点について判断する。

民法七二四条にいう「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは、同条が不法行為に因る損害賠償請求権につき特に短期三年の時効を定め、時効の起算時点に関する特則を設けた趣旨に鑑みれば、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知ることを意味するものと解するのが相当である。

前記証拠によれば、原告は、訴外行朝<編注・原告の夫>が仕事の関係で出張が多いため、同人の外泊について最初は疑いを持つていなかつたが、同四一年頃から同人が「イクヨ」という芸者と関係を持つているのではないかという疑問を持ち、訴外行朝を追及したが、同人はこれを否定していたこと、同四五年頃同人がそれまで勤めていた会社を退職した際の退職金の金額が少ないため、原告は訴外行朝が被告(そのころまでに前記芸者が被告であることはわかつていた。)に金をやつたのではないかと疑いをもつたことがあること、原告ら夫婦が訴外行朝の退職後東京から青森県弘前市に転居したが、原告は、訴外行朝が毎月定期的に東京へ行つたり、同人の上京の際使途不明の出金があつたり、被告名義の領収書や被告宛の銀行振込用紙を発見したことから、被告と訴外行朝との関係が継続していることを確信していたが、訴外行朝が否定するため、それ以上深く追及することなく、特に調査をするということはなかつたこと、そのころ、同人は、青森においても他の女と関係があつたが、それについても、原告に対し、否定していたこと、訴外行朝は同五〇年夏頃行方不明となつたこと、原告は、訴外行朝に対する離婚調停のため、同五〇年一一月頃同人の同年同月一三日付の戸籍謄本を取り寄せたところ、被告の子に対する認知届の記載を発見したこと、以上の事実を認めることができ、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。右認定事実によれば、原告が、前記認知届の記載を発見するまでは、訴外行朝と被告との間に不貞関係があるのではないかとの疑いを持ち続けていた事実が認められるほかに、被告に対する賠償請求が可能な程度に被告と訴外行朝との不貞行為に関する客観的事実の認識を持つたと窺われる事実を認定することはできないし、他にこれを認定するに足りる証拠は見当らない。よつて、原告が、被告に対する損害賠償請求が可能な程度に被告の不法行為を知つた時期は早くとも、同五〇年一一月中頃であつたことが認められるところ、それから、三年を経過しない同五三年一一月一日に五〇〇万円について支払いの催告がなされたことは当事者間に争いがないから、五〇〇万円の限度において時効が中断されており、右催告から六カ月経過前の同五四年四月二四日に本件訴えが提起されたことは記録上明らかであるから、被告の時効の主張は五〇〇万円の限度で理由がない。

(押切瞳)

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