東京地方裁判所 昭和54年(ワ)4026号 判決 1979年12月25日
原告
牧野木材株式会社
右代表者
宮原昌久
右訴訟代理人
阪本紀康
右同
高橋剛
被告
小西六優光会
右代表者理事長
荒川泰雄
右訴訟代理人
山田正明
主文
被告は原告に対し小西六写真工業株式会社の株式五〇〇株を引渡せ。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを一〇分しその一を被告の負担としその余を原告の負担とする。
事実《省略》
理由
一<中略>
次に、原告が、本件口頭弁論期日で、若菜梱包に代位して被告を退会する旨の意思表示をし、被告が寄託中の小西六の株式六四〇七株の引渡しを求めるので、この点について検討する。
<証拠>によれば、被告の会員は随時被告を退会することが出来、これにより被告は会員が寄託してある株式を返還することとなるのであるから、退会は、会員が被告に対してする一種の告知であると解される。そして、債権者が民法第四二三条により右退会を代位行使することにより、債務者が利益を享受し(被告が主張する再加入の制約は若菜梱包にとり不利益ではない)、その利益により債権者の権利が保全されることになるのであるから、原告は被告退会の意思表示を代位行使することを得るものと解される。
原告が、本件において若菜梱包の退会の意思表示を代位したこと、被告に対する株式の引渡を代位行使したことはそれぞれ一件記録により明らかである。
従つて、原告は、被告に対し自己の債権を保全するに必要な範囲において株式の引渡を求め得るというべきである。
二被告の抗弁について判断する。
<証拠>によれば、原告は、若菜梱包に対する売掛債権合計金一〇八一万三〇〇〇円のうち金一〇五一万八七二五円についてはトライ・ウオール福岡コンテナーズ(日本)株式会社より藤池産業株式会社、加藤馨と連帯して支払を受けていることが認められる。とすれば、原告の若菜梱包に対する右債権は、金二九万四二七五円となり、原告が、若菜梱包の被告に対する権利を代位行使し得るのは、自らの債権の保全に必要な右債権額の範囲内に限られる。
原告は、右弁済は若菜梱包の意思に反するものであるというが、本件全証拠によるも右事実を認めることは出来ない。
三ところで、本件口頭弁論終結の日である昭和五四年一一月六日の東京商券取引所における小西六の一株当りの最終値が金五〇〇円であることは、当裁判所にとつて公知の事実である。
<証拠>によれば、被告は退会した者に対し持分の払戻しとして所定の株券を交付することとなるが、規約第一一条第一項但書によれば、被告は一〇〇株未満の株式については時価で売却し、その代金を払戻すものとする旨定められている。
従つて、原告が被告から引渡を受け得る株式は五〇〇株となる。
四よつて、原告の被告に対する本訴請求は五〇〇株の引渡を求める限度で理由があるので認容し、その余は棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条を適用して主文のとおり判決する。
(星野雅紀)