大判例

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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)7777号・昭54年(ワ)9396号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一般に占有の承継がある場合、民法一八七条一項により、占有者の承継人は、自己の占有に前主の占有をあわせて主張することも、また、自己の占有のみを主張することも、その自由な選択によることが許されるところ、右規定は、相続による占有承継にも適用があるものと解すべきである。したがつて、相続人が自己の占有のみを主張するときは、相続人の占有開始時を起算点として時効が進行するものというべきである。このように解すると、時効の期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない旨の最高裁判所昭和三五年七月二七日の判決(最高裁判所判例集一四巻一〇号一八七一頁)に抵触する疑いが全くないわけではない。しかしながら右判例は、単一の占有の場合、すなわち、時効の基礎たる事実の開始された時(起算点)が一個しか存しない場合に、任意に起算点を定めうるか(すなわち、右の時効の基礎たる事実の開始された以後の時点を起算点として設定しうるか。)という事案に関するものであるのに対し、本件の事案は、占有の承継により占有が二面性を有する場合、すなわち、時効の基礎たる事実が複数あつて、そのために、起算点も複数ある場合に、複数の起算点のうちのいずれを選択すべきかという問題であるから、両者は事案を異にする。したがつて、本件の場合には、数個ある起算点のうちのいずれを選択するかは時効援用者の自由だと解しても、右最高裁判所の判例には抵触しないものと解するのが相当である。けだし、右のように解しないと、悪意の占有者からの承継人は、占有の起算点が前主である悪意占有開始時に固定されてしまう結果、民法一八七条二項により、善意の場合でも常に悪意二〇年の時効しか主張しえないという不当な結果を招来することになるからである。

(永吉盛雄)

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