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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)8351号 判決

一 原告らが本件実用新案権の共有者であること、本件明細書の実用新案登録請求の範囲の欄の記載が原告ら主張のとおりであること、被告株式会社きんきがイ号製品を製造し、被告株式会社大共がこれを販売していること、イ号製品の構造が別紙物件目録記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。

二 右争いのない実用新案登録請求の範囲の記載に成立に争いのない甲第一号証(本件実用新案公報。別添実用新案公報と同じ。)、第二号証(本件実用新案訂正公報。別添実用新案訂正公報と同じ。)及び本件口頭弁論の全趣旨を総合すれば、本件考案の構成要件は次の(1)ないし(4)のとおりであると認められる。

(1) 合成樹脂材料からなる薄い表側、裏側フイルムを周囲三方において熱溶着させること

(2) 裏側フイルムの下面両端部に感圧性接着剤を巾広い帯状に塗布して、該接着剤間のフイルム面を非接着部となすこと

(3) 前記接着剤表面に剥離紙を拝合被覆すること

(4) 合成樹脂製袋であること

三 イ号製品の構造を表示するものであることについて争いのない別紙物件目録の記載にイ号製品であることに争いのない検甲第一号証及び本件口頭弁論の全趣旨を総合すれば、イ号製品は次の構造からなるものと認められる。

(1)´ 透明な長方形の合成樹脂薄膜二枚を重ね合わせて周囲三方において熱溶着させること

(2)´ 裏側薄膜の下面の両端部に接着剤を長方形の合成樹脂薄膜の長辺の長さの約五分の一相当巾をもつた帯状に塗布して、該接着剤間の薄膜面を長方形の合成樹脂薄膜の長辺の長さの約五分の三相当の巾をもつた非接着部となすこと

(3)´ 前記両端接着剤塗布部のうちの一方の塗布部とこれに続く非接着部の半分とにわたつて一枚の剥離紙を接当させて接着剤部分で接着させ、他の接着剤塗布部とこれに続く非接着部の他の半分とにわたつて別の一枚の剥離紙を接当させて接着剤部分で接着させること

(4)´ 送状等の収納袋であること

四 そこで、イ号製品が本件考案の技術的範囲に属するか否かについて判断するに、被告は、本件考案の構成要件(3)にいう「剥離紙」の構造は裏側フイルムの形状と同形同大の一枚の剥離紙であり、「拝合被覆する」とは接着剤面をもつた袋の裏面全体、すなわち接着部と非接着部の全体に対し左右両手の掌を合わせるように前記構造を有する剥離紙を対接させて被覆することを意味するものと解すべきであつて、イ号製品はかかる剥離紙に関する構成要件を欠く旨主張するので、まず、本件考案の構成要件(3)にいう「剥離紙」の構造及び「拝合被覆する」の意味について考案することとする。

1(一) 前掲甲第一、第二号証によれば、本件明細書には剥離紙の構造に関する記載はなく、その添附図面には、実施例として裏側フイルム全面と同形同大の一枚の剥離紙を用いて裏側フイルムの下面全体、すなわち接着剤部、非接着剤部を含む全体を被覆した構造の合成樹脂製袋のみが示されていることが、

(二) 同じく前掲甲第一、第二号証によれば、本件明細書の考案の詳細な説明の欄には、右実施例についての説明として、「図に示すように、裏側フイルム2にはその下面の両端部に感圧性接着剤が巾広い帯状の形で塗布4してあつて、この接着剤面は剥離紙5で拝合被覆される。」「帯状接着剤4と4との間のフイルム面は接着剤のない所謂非接着部を構成している。」という記載のあることが、

(三) 成立について争いのない乙第一三号証の一ないし三によれば、本件考案の実用新案登録出願願書の当初の明細書には、実用新案登録請求の範囲の欄に「合成樹脂材料からなる薄い表側、裏側フイルムを周囲三方において熱溶着させ、裏側フイルムの下面に感圧性接着剤を帯状又は線状に若しくは点状に塗布し、該接着剤面に剥離紙を拝合被覆して成ることを特徴とする合成樹脂製袋。」との記載があり、考案の詳細な説明の欄には、「本考案によれば、袋の裏側フイルム下面に、感圧性接着剤を間隔をへだてた平行な連続又は不連続の帯状又は線状に或は無数の点状に施して成る。接着剤の平行な帯又は線は直線状態であつてもよいし或る曲線状態であつてもよく、又それは袋の長さ方向、袋の巾方向いずれでも良いし、或は又斜め方向であつてもよい」「これを図を参照して説明すると、……。第1図に示すように、裏側フイルム2にはその下面に感圧性接着剤が袋の巾方向に平行な連続帯状の形で塗布してあつて、この接着剤面は剥離紙5で拝合被覆される。第2図及び第3図の態様では、感圧接着剤は裏側フイルムの下面に袋の長さ方向に平行な連続線状の形で多条に塗布4してある。帯状又は線状接着剤4と4との間は接着剤のない空間になつていて大気に通じている。」との記載があることが、そして、添附図面の第1図には裏側フイルムの下面に感圧性接着剤を袋の巾方向に平行な連続帯状の形で塗布した合成樹脂製袋の斜視図が、第2図には裏側フイルム下面に感圧性接着剤を袋の長さ方向に平行な連続線状の形で多条に塗布した合成樹脂製袋の斜視図が、第3図には第2図に示された袋の断面図が記載されているが、いずれの図においても剥離紙は裏側フイルム全面と同形同大の一枚の構造のものだけが示されていることが、

(四) 同じく前掲乙第一三号証の二、甲第一、第二号証、後掲乙第一八号証によれば、本件考案の実用新案登録出願願書の当初の明細書の考案の詳細な説明の欄に剥離紙につき右(三)に述べたほかはその形態に関する記載は何もなく、本件出願に関する補正書、本件明細書を含め、それらに後記五に述べるような、剥離紙を二枚とするものであつてもよい旨の記載ないしはこれを示唆する記載はないことが、

(五) 成立について争いのない乙第一八号証によれば、本件考案の実用新案登録出願の当初の出願人である訴外仲和雄は、昭和四八年一月二九日に補正書を提出し、実用新案登録請求の範囲の記載から「感圧性接着剤を線状に若しくは点状に塗布」との記載を削除するなど明細書の全文訂正をしたうえ、明細書添附の第2図及び第3図を削除したが、実用新案登録請求の範囲の欄の「該接着剤面に剥離紙を拝合被覆して成る」との記載や添附の第1図については「該接着剤面」を「前記接着剤表面」と訂正したほかは何らの訂正もしていないことが、

(六) 成立について争いのない乙第一九、第二〇号証によれば、「拝」という語は両手を合わせて前に手を上げる礼という意味を有し、「合」という語は一つになる、一致するという意味を有する語であることが認められ、右認定に反する証拠はない。

2 以上の事実によれば、本件考案の構成要件(3)にいう「剥離紙」は感圧性接着剤の塗布方法によりその構造を異にするものではなく、感圧性接着剤を塗布した裏側フイルム全面と同形同大の一枚の構造の剥離紙をいうと解するのが相当である。

したがつて、本件考案の構成要件(3)にいう「前記接着剤表面に剥離紙を拝合被覆する」とは、接着剤を塗布した裏側フイルムの全面に、すなわち接着剤部と非接着剤部の全面に裏側フイルムの形状と同形同大の一枚の剥離紙を両手の掌を合わせるように被覆することと解すべきである。

原告らは、本件考案の構成要件(3)にいう「前記接着剤表面」とは、裏側フイルムの下面両端部に塗布された接着剤の表面を指すものであることは文言自体によつて明らかであり、したがつて同(3)にいう「前記接着剤表面に剥離紙を拝合被覆する」とは裏側フイルムの下面両端部の接着剤表面をそれぞれ一枚宛の剥離紙で被覆する構造をも含むものである旨主張するが、「前記接着剤表面」との文言が、原告ら主張のように、裏側フイルムの下面両端部に塗布された接着剤の表面を指す文言であつても、そのことから直ちに「拝合被覆」する「剥離紙」の構造がどのようなものであるか導き出されるわけではなく、また原告の右主張は前掲甲第一、第二号証、乙第一三号証の一ないし三、第一八号証の記載に照らしても首肯し得ないし、他に原告の右主張を正当と認めるに足る証拠はない。

五 次に、本件考案の構成要件(3)とイ号製品の構造(3)´とを対比するに、前記三で認定したとおり、イ号製品においては帯状の両端接着剤塗布部のうちの一方の塗布部とこれに続く非接着部の半分とにわたつて一枚の剥離紙を接当させて接着剤部分で接着させ、他の接着剤塗布部とこれに続く非接着部の他の半分とにわたつて別の一枚の剥離紙を接当させて接着剤部分で接着させるという、すなわち剥離紙を二枚とする構造をとつており、右構造が前記四で認定した剥離紙を一枚とする本件考案の構成要件(3)を充足しないこと明らかである。

六 以上のように、イ号製品は、少なくとも本件考案の構成要件(3)を充足しないので、その余の点について判断するまでもなく本件考案の技術的範囲に属するものとはいえない。

よつて、イ号製品が本件考案の技術的範囲に属することを前提とする原告らの被告らに対する本訴請求は理由がないのでこれを棄却することとする。

〔編註その一〕本件における請求原因は左のとおりである。

1(一) 訴外仲和雄は次のとおり実用新案登録出願をし、出願公告がされた。

考案の名称 合成樹脂製袋

出願日   昭和四五年四月二〇日

公告日   昭和五〇年六月九日

(二) 原告狭山化工株式会社(以下、「原告狭山化工」という。)は、昭和五二年二月八日右仲和雄から(一)記載の実用新案登録を受ける権利を譲り受け、次いで原告株式会社ウスイ包装(以下、「原告ウスイ包装」という。)は、同月二三日原告狭山化工から右権利の二分の一を譲り受けた。その後、昭和五三年五月二二日前記出願は実用新案登録番号第一二二七二三二号をもつて登録され、原告両名は右実用新案権(以下、「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を各二分の一づつ共有するに至つたもので、現にその共有者である。

2 本件考案の実用新案登録出願の願書に添附した明細書(補正後のもの。以下、「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の記載は次のとおりである。

「合成樹脂材料からなる薄い表側、裏側フイルムを周囲三方において熱溶着させ、裏側フイルムの下面両端部に感圧性接着剤を巾広い帯状に塗布して、該接着剤間のフイルム面を非接着部となし、前記接着剤表面に剥離紙を拝合被覆して成ることを特徴とする合成樹脂製袋」

〔編註その二〕本件に関する目録および図面は左のとおりである。

物件目録

(1) 透明な長方形の合成樹脂薄膜二枚1・2を重ね合せて周囲三方において熱溶着3させ、

(2) 裏側薄膜2の下面の両端部に接着剤を長方形の合成樹脂薄膜の長辺の長さの約五分の一相当巾を持つた帯状に塗布4・4して、該接着剤4・4間の薄膜面を長方形の合成樹脂薄膜の長辺の長さの約五分の三相当の巾をもつた非接着部となし、

(3) 前記両端接着剤塗布部のうちの一方の塗布部とこれに続く非接着部の半分とにわたつて一枚の剥離紙5を接当させて接着剤部分で接着させ、他の接着剤塗布部とこれに続く非接着部の他の部分とにわたつて別の一枚の剥離紙を接当させて接着剤部で接着させた

(4) 送状等の収納袋。

<省略>

本件考案 実用新案出願公告昭五〇―一八八〇四号

<省略>

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