東京地方裁判所 昭和54年(ワ)8784号・昭55年(ワ)1324号 判決
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【説明】
本件は、賃金請求事件であるが、原告が法人格濫用の根拠として主張するところ(請求原因2項(三))は、次のとおりである。
「(1) 被告両毛ラスと同両毛鉄網との本店所在地は同一である。
(2) 被告両毛ラスの目的は「金網の製造及び販売」であり、同両毛鉄網の目的にも「金網全般の製造販売」が掲げられ、両者の目的は実質的に同一である。
(3) 被告両毛ラス及び同両毛鉄網の代表取締役はともに被告吉田徹こと金渡演(以下「被告金」という)であるのみならず、その役員構成においても被告両毛ラスの取締役坂口政一が被告両毛鉄網の取締役に、被告両毛ラスの監査役遠藤広男が被告両毛鉄網の取締役に、被告両毛ラスの従業員内田知子が被告両毛鉄網の代表取締役に各就任している。
(4) 被告両毛ラスは昭和五四年六月三〇日に不渡手形を出して事実上倒産したところ、そのわずか二日後の同年七月二日に被告両毛鉄網が設立され、被告両毛ラスから同両毛鉄網に対し、被告両毛ラスの所有する唯一の工場設備である別紙物件目録記載の建物につき同月五日付売買を原因として同月九日所有権移転登記がなされた。」
【判旨】
2 被告両毛鉄網が昭和五四年七月二日設立登記された株式会社であることは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、請求原因2(三)の(1)ないし(4)の各事実並びに被告両毛鉄網は被告両毛ラスの所有であつた工場及び機械設備をそのまま利用し、従業員の半数も両毛ラスの従業員であつたものを充て業務を始めるに至つたこと及び被告両毛ラスの倒産時の負債総額は約一億二〇〇〇万円であつたことが認められ、これらの事実を総合すれば、被告両毛鉄網は同両毛ラスと実質上同一の会社であり、被告両毛ラスが経営不振に陥り多額の負債を背負つて事実上倒産したため、同被告の資産が債権者により差押えられることを免れる目的をもつて設立されたものと認めるのが相当であり、右認定を左右するに足りる証拠はない。
そうしてみると、被告両毛鉄網はその法人格を濫用するものといわざるをえず、被告両毛ラスと同様に前記認定にかかる消費貸借契約に基づく債務を負担するというべきである。そして両被告の右債務は不真正連帯債務の関係にあると解するのが相当である。
(丹野益男 岡部崇明 綿引万里子)