東京地方裁判所 昭和54年(特わ)871号 判決 1979年7月24日
本店所在地
東京都港区赤坂六丁目一五番一四号
株式会社エルモロッコこと 国際相互株式会社
(右代表者代表取締役幸英二郎)
本籍
山口県下関市貴船町一丁目九一〇番地
住居
東京都世田谷区上馬五丁目二八番一四号
会社役員
幸英二郎
昭和八年一月一日生
右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官乙部二郎出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人国際相互株式会社を罰金二五〇〇万円に、被告人幸英二郎を懲役一年二月にそれぞれ処する。
被告人幸英二郎に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人国際相互株式会社(昭和五四年五月九日以前の商号は、「株式会社エルモロッコ」。以下「被告会社」という。)は、肩書地(昭和五〇年四月九日以前は、東京都港区赤坂八丁目一三番二四号)に本店を置き、ナイトクラブの経営等を目的とする資本金四七五〇万円(昭和五〇年五月二九日以前は、一九〇〇万円)の株式会社であり、被告人幸英二郎(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役として業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五〇年三月一日から同五一年二月二九日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六八八四万九八九六円あった(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年四月三〇日、東京都港区西麻布三丁目三番五号所在の所轄麻布税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三四六九万四一三一円の欠損でこれに対する法人税額は零である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五四年押第五八三号の符号1)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額二六三二万八三〇〇円(税額の算定は別紙(四)の一計算書参照)を免れ、
第二 昭和五一年三月一日から同五二年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億四八三九万一〇九五円あった(別紙(二)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年四月三〇日、前記麻布税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三二一二万五六四六円でこれに対する法人税額が一一九〇万八一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号2)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額五八四一万四五〇〇円(税額の算定は別紙(四)の二計算書参照)と右申告税額との差額四六五〇万六四〇〇円を免れ、
第三 昭和五二年三月一日から同五三年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九七二七万〇五五五円あった(別紙(三)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同年五月一日、前記麻布税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一八九四万二六四〇円でこれに対する法人税額が六三二万五六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の符号3)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告会社の右事業年度における正規の法人税額三七六五万六八〇〇円(税額の算定は別紙(四)の三計算書参照)と右申告税額との差額三一三三万一二〇〇円を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
第一 判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、
一 被告人の当公判延における供述及び検察官に対する供述調書六通(乙3ないし8)
一 証人斎藤正彦の当公判延における供述及び検察官に対する供述調書二通(甲一19、20)
一 証人木戸利孝の当公判延における供述
一 黒岩智之(二通)、小川俊夫、曽木健成の検察官に対する各供述調書(甲一16ないし18、21)
一 登記官作成の昭和五四年五月一四日付登記簿謄本
第二 別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち、
(イ) <1>売上高につき、
一 検察官作成の捜査報告書(売上関係)(甲一2)
一 大蔵事務官作成の貸売上除外額調査書(甲一3)、パーティ券等売上調査書(甲一4)、現金売上(仮払消去)調査書(甲一5)
(ロ) <10>給料手当につき、
一 大蔵事務官作成の架空給料調査書(甲一6)
一 検察官作成の捜査報告書(給与関係)(甲一7)
一 大蔵事務官作成の簿外支給ホステス給料等調査書(甲一8)、簿外給料調査書(甲一9)
(ハ) <60>役員賞与損金不算入額につき、
一 前掲甲一7
(ニ) <31>受取利息につき、
一 大蔵事務官作成の簿外預金調査書(甲一10)
(ホ) <40>価格変動準備金戻入益、<43>価格変動準押金繰入損、<56>価格変動準備金積立超過額につき、
一 麻布税務署長作成の証明書(甲一11)
(ヘ) <59>損金計上役員賞与につき、
一 検察官作成の捜査報告書(甲一12)
(ト) <61>事業税認定損につき、
一 検察官作成の捜査報告書(事業税関係)(甲一13)
第三 別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、
一 押収にかかる被告会社の昭和五一年二月期ないし昭和五三年二月期法人税確定申告書三袋(昭和五四年押第五八三号の符号1ないし3)
(法令の適用)
法律に照すと、判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法第一五九条第一項(被告会社については、さらに同法第一六四条第一項)に該当するところ、被告会社については情状に鑑み同法第一五九条第二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内において罰金二五〇〇万円に、被告人については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において懲役一年二月にそれぞれ処し、被告人に対し同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 半谷恭一)
別紙(一)
修正損益計算書
株式会社 エルモロッコ
自 昭和50年3月1日
至 昭和51年2月29日
<省略>
<省略>
別紙(二)
修正損益計算書
株式会社 エルモロッコ
自 昭和51年3月1日
至 昭和52年2月28日
<省略>
<省略>
別紙(三)
修正損益計算書
株式会社 エルモロッコ
自 昭和52年3月1日
至 昭和53年2月28日
<省略>
<省略>
別紙(四)の一
税額計算書
<省略>
別紙(四)の二
税額計算書
<省略>
別紙(四)の三
税額計算書
<省略>