大判例

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東京地方裁判所 昭和54年(行ケ)1号 判決

一 請求原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。そこで、原告主張の審決取消事由の存否について判断する。

二 成立に争いのない甲第七号証(本願発明の全文訂正明細書)によれば、本願発明の目的は、「従来、ビル建築物においては、上下の階及び隣接室を通して金属製の給排水管を配管使用していたが、ある階の室で火災が生ずると、前記金属のみの給排水管を通して高温の熱が伝導し、上下の階及び隣接室に延焼し、次々と火災が広がつて災害を大きくする導火線になつていた。本発明は、無機質繊維と無機質凝結材とにより形成された断熱性の外管と、金属製内管と、前記外管に設けられた突起部又は内管に設けられた突起部とからなるので、火災の際、上下階及び隣接室への延焼を防ぐようにしたものであり、且つ、ビル建築物の火災の際、金属製内管が膨張しても突起部があるため、外管が割れることを防ぐもの」であることが認められる。

(審決取消事由1について)

成立に争いのない甲第二号証(実用新案出願公告昭四〇―八九三九号公報)によれば、引用例のものが少なくとも審決認定のとおりの構成を具えていることは明らかである。

原告は、引用例のものが保温保冷管であつて、耐熱ないし耐火二重管ではないのに、審決がその点を明示しなかつたのは、引用例の技術内容の認定を誤つたものであると主張するが、審決が右の点を明示しなくても、それをもつて誤りとすることはできない。審決は、引用例記載の技術事項のうち、本願発明との関連において、必要な技術事項の構成を引用したものであるからである。

なお、引用例のものがその管套体、すなわち、外管を樋状のもの二個の組合せによつて形成したとの点(これが本願発明との一つの差異とされることについては、後述のとおり、当事者間に争いがない。)については、前掲甲第二号証(引用例の実用新案公報)によれば、「管套体を樋状のもの二個で形成したが、これは、管状のもの一個で、緊定部分を一個所にしてもよく」とされていることが認められるところからも明らかなとおり、引用例の外管は、樋状のもの二個の組合せに限られるわけではなく、一個の管状のもの、すなわち、断面そのままの長尺物である管状体でもよく、それは、内管を外管に嵌入配置しやすくするために、右のような構成としたものと解される。そして、二重管をつくるに当り、内管を単一の外部管体に嵌入配置することは、引用例のものの右構成に想到するに先立つて、まず普通に考えることであるから、本願発明と引用例のものとを対比するに当つては、内管と外管とをもつて二重管とする構成の点については、技術的思想として、本願発明を特段のものとすることはできない。

(審決取消事由2について)

本願発明と引用例のものとの対比において、二重管の突起部を有する外管が、本願発明では無機質繊維と無機質凝結材から一体成形で構成されるのに対し、引用例のものでは硬質合成樹脂製の二個の樋状物から成る点で相違することは、当事者間に争いがない。

審決は、右以外の構成では、両者は一致するとしたものであるが、審決の認定した両者の各構成を検討するに、右に摘示した相違点以外には、特に採りあげて相違点と目すべき構成は存在せず、審決のした両者の構成上の対比判断に誤りはない。発明の目的、効果について、両者の対比を行つていないのは誤りであるとする原告の主張も採用できない(なお、後述「審決取消事由4について」の項参照)。

(審決取消事由3について)

成立に争いのない乙第一号証(特許出願公告昭四三―七一三四号公報)によれば、石綿セメント板は耐火性があり、建築用材料として広く使用されていることが認められるほか、石綿セメント管は耐熱性が良好であり煙突用などに使用されることも一般に知られているから、石綿セメント管が耐火管として従来普通に知られているとした審決は誤りであるという原告の主張は採用できない。

次に、石綿セメント管内周に突起を設ける技術について検討するに、成立に争いのない乙第二号証によれば、石綿セメント板成形の際、型によつて表面に凹凸模様を施す技術が本願発明の出願前に行われていることが認められるが、この事実のみから石綿セメント管内周に突起を設ける技術が通常採用される技術手段であるということはできない。

しかしながら、本願発明は、「外管(例えば、石綿セメント管)の内周面又は内管(金属製)の外周面に突起部を一体に突設する構成」であるから、必ずしも外管の石綿セメント管にのみ突起部を設けることが求められているわけではなく、要は内管と外管とを嵌合させたときに、突起部により内外管の間に空隙を形成する構成を特徴とするものである。ところで、引用例(前掲甲第二号証)には、外周に一対の突起部を有する内管(金属製)と内周に複数個の間隔支持用突条(突起部)を有する外管(硬質合成樹脂製)が嵌合することにより、内管と外管との間に空隙を形成する構成が示されているから、結局において、本願発明の「外管の内周面又は内管の外周面に突起部を一体に突設する構成」は、引用例に基づいて当業者が容易に想到しうる範囲のことというべきである。

審決は、慣用技術手段の説明において適切を欠くものがあるとしても、結論に影響を及ぼすものではない。

(審決取消事由4について)

本願発明は、外管が無機質繊維と無機質凝結材とからなる耐火管であり、金属製内管との間に空隙を形成する二重管であるから、外管と空隙とが熱伝導を遮断する作用をし、外部からの熱エネルギーを内管に伝えることが少なく、内管の熱エネルギーを外部に伝えることも少なく、金属製内管が熱膨張しても各突起部で支持されているから外管が割れることがない、という作用、効果を奏する。

他方、引用例のものも、金属製内管を囲む空隙と熱伝導の悪い合成樹脂製外管の装着により、管の内外の熱移動が遮断され、また、金属製内管が熱膨張しても、外管が各突起部を支点として緊張して歪み、外管が割れることはないものと認められる。

以上の作用、効果に関しては、本願発明も引用例のものも変るところはない。

ただ、本願発明の場合は、外管が無機質繊維と無機質凝結材とからなるため、外界が高温高熱に達しても耐用性を失うことなく、金属製内管に対して遮熱作用を奏し、また、金属製内管が高温になつても耐用性があるところに特徴がある。 しかしながら、本願発明における高温高熱に対する二重管の耐用性は、すべて外管の材質が無機質繊維と無機質凝結材からなること自体に基づく効果であるところ、耐火・耐熱管として従来普通に知られている右材質の石綿セメント管を、耐火・耐熱の目的のために、引用例の二重管の外管に置き換えて用いるようなことは、当業者が格別技術的創作力を要することなく想到しうるものというべきであり、これと同趣旨の審決の判断に誤りはない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

無機質繊維と無機質凝結材からなる一体成形の耐火外管を形成し、その外管の内部に一体成形の金属製内管を嵌合配設し、前記外管の内周面に一体に突設された突起部又は内管の外周面に一体に突設された突起部により内管と外管との間に空間部を形成することを特徴とする耐火二重管。

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