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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)7949号 判決

一 請求の原因1、2、4ないし6の事実は当事者間に争いがない。

二 右当事者間に争いのない特許請求の範囲の記載と成立に争いのない甲第二号証(本件特許公報)によれば、本件発明の構成要件は、請求の原因4において原告らの主張するとおりと認められる。

三 被告装置を表示すること当事者間に争いのない別紙目録及び成立に争いのない甲第三号証によれば、被告装置におけるカードの分離運動、選別されるべきでないカードの鎖錠手段は次のとおりと認められる。

選別動作の最初の段階において、ドロアーアーム20のガイドベアリング27がドロアーアームガイド溝26の水平部分に沿つて前方へカードに設けられた切欠きうる歯33の一ピツチ分三・七ミリメートル移動するので、ドロアーアーム20に固定されたドロアー9(磁石21を含む。以下同じ)により磁気応答部分34を介して吸引された選別されるべきカードが右距離だけ前方に水平に移動し、選別されるべきでないカードから部分的に分離される(水平部分的分離段階)。この時、カートリツジ後方にある第一のリテンシヨンバー6は、選別されたカードの第二の側辺に設けられた第一のリテンシヨンノツチ35からはずれる(選別されなかつたカードの第一のリテンシヨンノツチ35とは係合したままである。)。次いで、第二のリテンシヨンバー5がリテンシヨンバー駆動装置(22、23、24)により上昇されることにより、選別されたカードの後部が押し上げられ(上方分離段階)、同時に、第二のリテンシヨンバー5は選別されなかつたカードの下辺に設けられた第二のリテンシヨンノツチ36に係合する。最後に、ドロアーアーム20のガイドベアリング27がドロアーアームガイド溝26に沿つて斜め上方に円弧状に移動するので、ドロアーアーム20に固定されたドロアー9により磁気応答部分34を介して吸引され選別されたカードも同様に斜め上方へ円弧状に移動して(円弧状分離段階)、分離が完了する。この時選別されたカードの前方先端は選別されなかつたカードの前方先端から五五ミリメートル前方へ、二七ミリメートル上方へ移動している。

四 そこで、本件発明と被告装置を対比する。

1 前記本件発明の特許請求の範囲の記載とくに本件発明の構成要件DないしFによれば本件発明において、選別されるべき物品は、その物品に取付けられた磁気応答部分と実質的に水平方向に互いに相対的に移動できる磁石(構成要件D)が実質的に水平方向へ移動することにより選別されるべきでない物品から部分的に分離されたのち(同E)、この実質的に水平な相対運動の継続により最終的に分離されるべき旨(同F)想定されていることが明らかである。これに対し、前記三において認定したとおり被告装置において選別されるべきカードは、水平部分的分離段階終了後、いつたん上方へ再分離され、そののち、斜め上方へ円弧状に移動して最終的に分離されるのであつて、水平部分的分離段階終了後のカードの分離運動は、右部分的分離段階におけると同方向の水平運動ということはできず、この点において、本件発明の分離運動と異なるものといわなければならない。

この点について、原告らは、本件発明は、構成要件Eにおいて「実質的に水平な方向」と定義して水平方向のみでないことを明記し、構成要件Fにおいて右に継続した「水平相対運動」と規定しているので、構成要件Fにおける水平運動は字義どおりの水平運動であることを要せず実質的に水平相対運動であれば足り、被告装置におけるカード全体の分離運動は水平運動ではないが、実質的水平相対運動の範囲に入ると主張する。

しかしながら、前掲甲第二号証(本件特許公報)によれば、本件明細書中の発明の詳細な説明には、公知の選別装置について、「部分的分離段階は所望のカードの除去された歯に一致するコード杆を持上げその後コードされた縁部に平行な方向にカードを動かす直線的な力をカードに作用させることにより行われ」(本件特許公報四欄一行ないし五行)、最終分離段階においては、「選ばれたカードに廻転力を加えることにより所望でないカードから所望のカードが更に分離される」(同四欄一五行ないし一七行)、「所望のカードを更に分離するに必要な廻転力は磁石を上方に傾斜させることにより得られる。これが磁石によりまだ保持されているカードのみとなつている選別されたカードを傾斜させ、それらを所望でないカードの上に持ち上げこれにより選別処理を完了する。」(同四欄三一行ないし三七行)旨の説明があり、次いで、このように各分離段階の運動の方向が異なる従来の選別装置に対して本件発明の持つ利点を、「所望でないカードの確実な拘束に貢献することの他に、最終段階の期間中の直線的相対運動を特徴とする本発明の別の利点はカードを相対的に動かすために使われる選別装置の機構が単純化されることである。本発明の装置では、初期段階並びに最終段階のカードの相対運動は直線的である。従つて、選別サイクルの最終段階の期間中にカードを移動させるために使われるものと同一の装置が初期段階の期間中に使われる。従つて、異る種類のカードの相対運動を生ぜしめる複雑な機構は不要である。」(本件特許公報六欄九行ないし一九行)と明言していることが認められ、この事実によると、本件発明における物品の分離運動は部分的分離段階と最終分離段階を通じ「直線的」水平運動であること、この直線的水平分離運動は、公知の選別装置における「磁石を上方に傾斜させることにより」(同四欄三二、三三行)、「選別されたカードを傾斜させ、それらを所望でないカードの上に持ち上げこれにより選別処理を完了する」(同四欄三五行ないし三七行)最終分離段階における分離運動とは異なるものとされていることが明らかであり、そうすると、被告装置におけるドロアー9を斜め上方に円弧状に移動させることにより選別されたカードを同様に斜め上方に円弧状に移動させて分離をする分離運動は、むしろ右にいう公知の選別装置における最終分離運動に類し、本件発明における直線的水平分離運動とは異なるものであることが明らかである。原告らの右主張は採用できない。

2 以上のとおり、本件発明における選別されるべき物品の分離運動は直線的水平分離運動であるから、構成要件Fが規定する物品鎖錠装置は、このような直線的水平分離運動に対応して選別されたあるいは非選別の物品を選択的に鎖錠する装置を意味するものであつて、このような直線的水平分離運動とは異なる分離運動を前提にした鎖錠装置はこれを含まないものと解すべきである。

そして前記三認定の事実によると、被告装置において非選別のカードを鎖錠する手段は、上方分離段階においてはカードの第二の側辺に設けられた第一のリテンシヨンノツチ35に係合する第一のリテンシヨンバー6であり、円弧状分離段階では第一のリテンシヨンバー6による右係合と協動するところのカードの下辺に設けられた第二のリテンシヨンノツチ36に係合する第二のリテンシヨンバー5であり、この二方向からの鎖錠手段は被告装置における上方分離、円弧状分離運動に対応した鎖錠手段と認められるから、被告装置には本件発明の構成要件Fに該当する直線的水平分離運動に対応した鎖錠装置を欠くものといわざるをえない。

したがつて、被告装置は、本件発明の技術的範囲に属するものと認めることはできない。

五 よつて、原告らの本訴各請求は、その余の点につき判断するまでもなく、理由がないから、これを棄却する。

〔編註〕 本件特許権に関する事項は左のとおりである。

1 原告らは、次の特許権(以下、「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という。)の共有権者である。

発明の名称 物品を選別する装置

出願日   昭和四三年八月二日(アメリカ合衆国一九六七年八月四日出願に基づく優先権主張)

出願公告日 昭和五〇年四月三〇日

登録日   昭和五一年一月一二日

特許番号  第八〇〇七五一号

2 本件発明の特許出願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。

「1 中心合せノツチと切欠き得る歯とを交互に有するそれぞれの選別用縁部を実質的に水平に揃えて支持されている複数個の物品から選別用物品を選別する装置において、

前記中心合せノツチに隣接し、選別用縁部に対し横方向にかつ実質的に水平な一平面内に置かれた複数個の選別杆と、

前記選別杆を選択的に動かし、前記物品の異なる中心合せノツチに垂直方向に入れる選別杆作動装置と、

前記物品に取付けられた磁気応答部分と実質的に水平方向に互いに相対的に移動できる磁石とを含み、

前記選別用縁部と平行で実質的に水平な方向の制限された相対運動を作動された選別杆の型に一致するノツチを有する物品と一致しないノツチを有する物品との間に生ぜしめ、これにより前記一致するノツチを有する物品と一致しないノツチを有する物品とを部分的に分離させる物品分離装置と、

前記平行方向における水平相対運動の継続により前記一致するノツチを有する物品と一致しないノツチを有する物品とを更に分離させるよう前記の部分的に分離された一方あるいは他方の物品に選択的に係合する物品鎖錠装置とを

更に備えていることを特徴とする物品選別装置。」

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