東京地方裁判所 昭和55年(ワ)9857号・昭56年(ワ)2908号 判決
主文
一 被告(反訴原告)は原告(反訴被告)に対し、金一五九七万〇三七八円及びこれに対する昭和五五年一〇月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告(反訴原告)の請求を棄却する。
三 訴訟費用は本訴反訴を通じ被告(反訴原告)の負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
(本訴)
一 請求の趣旨
1 主文第一項と同旨。
2 訴訟費用は被告(反訴原告)の負担とする。
3 仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告(反訴被告)の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告(反訴被告)の負担とする。
(反訴)
一 請求の趣旨
1 原告(反訴被告)は被告(反訴原告)に対し、金一九七五万五二二六円及びこれに対する昭和五五年九月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は原告(反訴被告)の負担とする。
3 仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 主文第二項と同旨。
2 訴訟費用は被告(反訴原告)の負担とする。
第二当事者の主張
(本訴)
一 請求原因
1 原告(反訴被告、以下、単に「原告」という。)は、コンピューターによる情報処理を主たる業務としているが、昭和五四年一一月、被告(反訴原告、以下、単に「被告」という。)との間に次の内容の契約を締結した。
(一) 原告は、顧客からの注文を受け、これをコンピューターに打ち込んだうえ、被告に伝達し、被告は自己の在庫から顧客に注文の商品を販売、配達し、顧客から配送料とともに商品代金を受領する。
(二) 被告は商品を原告を通じて購入する。原告は商品の仕入価格に一パーセントを加算した額で被告に売り渡す。
(三) 被告は原告からの買受代金を毎月一〇日、二〇日、末日で締め切り、締切りの五日後に原告に支払う。
(四) 原告から被告への売買価格と被告から顧客への販売価格の差益の七割を被告が取得し、三割をコンピューター処理料として原告が取得する。右コンピューター処理料は毎月末日に締め切り、翌月一五日に被告が原告に支払う。
(五) 被告が自己の倉庫で直接額客に販売する利益はすべて被告が取得する。
(六) カタログ、テレビ広告、伝票印刷等の費用は原則として原告が負担する。
2 原告は被告に対し、昭和五四年一一月一二日から昭和五五年六月三〇日までの間に、食料品、日用雑貨品、電気製品等を売り渡し、同年六月末日現在における売掛残債権は金二一六八万三九四八円である。
3 原告は被告に対し、同年六月末日現在においてコンピューター処理料残債権金八四万二七九六円及び手形割引利息債権金四一万六一二三円を有している。
4 原告は同年六月末日ころ被告から被告所有の在庫商品の処分を依頼され、原告は右在庫商品を金六九七万二四八九円で処分した。したがって、原告は被告に対し右金員を支払う義務を負っている。
5 原告は昭和五六年二月三日の本件口頭弁論期日において、右1及び2の合計金二二九四万二八六七円の債権と右3の金六九七万二四八九円の債務とを対等額で相殺する旨の意思表示をした。
よって、原告は被告に対し右売掛残代金等金一五九七万〇三七八円及びこれに対する約定の支払期日の後で訴状送達の日の翌日である昭和五五年一〇月四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実のうち、原告がコンピューターによる情報処理を主たる業務としていること、原告と被告が昭和五四年一一月、次の内容の合意をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。
(一) 原告は顧客から注文を受け、これをコンピューターに打ち込んだうえ、被告に伝達する。被告は顧客に注文の商品を配達し、顧客から配送料とともに商品代金を受領し、商品代金を原告に支払う。
(二) 原告から被告への納入価格と被告から顧客への販売価格の差益の七割を被告が、三割を原告が取得する。
2 同2ないし4の事実は否認する。
3 同5の事実のうち、原告が相殺の意思表示をしたことは認める。
三 被告の主張
1 原告と被告は昭和五四年一一月一二日コンピューターショッピングシステムと称する業務委託契約を次のとおり締結した。
(一) 原告は顧客から事前に配布してあるカタログ(販売商品及び価格は原告が決定する。)により電話で注文を受け、これを原告のコンピューターに打ち込んだうえ、直ちに提携しているメーカー又は問屋(メーカー又は問屋は原告が決定する。)から顧客からの注文に応じて商品を仕入れ、これをメーカー又は問屋から直接「ジャコス多摩配送センター」と呼ばれている被告に納入させる。
原告は被告に対しコンピューターで組んだ各顧客に対する配送プログラムを指示し、被告は右指示に基づいて各顧客に注文の商品を配達し、顧客から商品代金の内、現金分を取り立てて回収し(ローン、クレジット、自動振込みの場合は顧客が原告に直接支払う。)、これを原告に支払う。
(二) 被告は担当する地域(八王子市及び日野市、但し、昭和五五年二月から羽村町も含む。)においてチラシ等による販売促進並びに普及活動、配送センターの運営管理、顧客の苦情処理及び在庫の管理(在庫商品が滅失破損した場合の負担も含む。)を行う。
(三) 被告が顧客に販売した売上高から原告の仕入れ価格に一パーセントを加えた額を差し引いた粗利益のうち、三割を原告が取得し、残りの七割を被告が委託料(必要経費及び報酬)として取得する。運送費は一件につき金二〇〇円(但し、顧客から注文を受けた日の翌々日の配達分、翌日配達分については金三〇〇円)を顧客が負担する。
2 原告は、被告に対し、右契約締結に当たり、被告の前に同種の業務を原告から受任していた「八王子配送センター」の毎月の売上げが二七〇〇万ないし二八〇〇万円に達していなかったにもかかわらず、右売上げが毎月二七〇〇万円ないし二八〇〇万円もあったから、被告の売上げもそのようになるであろう旨虚偽の事実を申し向け、被告をしてその旨誤信させた。その結果、被告は配送センターの運営に必要な経費を配分された委託料で十分まかなえるものと信じて、右委託料の配分について合意した。
3 被告は前記業務委託契約に従い、原告から委託された業務を誠実に履行してきたが、契約締結に当たり原告が述べていた売上高とは異なり、別表計算書売上高欄記載の売上高しかあげられなかったため、右売上高に基づく委託料では毎月の業務委託事務の遂行に必要な経費をまかなうことができず、同表純利益欄記載のとおり毎月、損害が生じてしまった。
4 被告は車両一台につき金三五万円相当の委託報酬料を見込んでいたが、これを取得することも不可能となった。被告が昭和五四年一一月一二日から昭和五五年六月末日までに取得すべき委託報酬は計金六六五万円となる。
5 被告は原告に対し、昭和五五年六月末日現在被告に残っていた金一三四〇万九六〇四円相当の商品をすべて返還引き渡した。
6 被告は原告に対し昭和五五年九月四日原告に到達した内容証明郵便をもって、被告が原告に対して有する委託事務に必要な経費金二二六三万八四八九円及び報酬金六六五万円、計金二九二八万八四八九円の債権と、原告が被告に対して有する商品代金二一六八万三九四八円及び手形利息等金一二五万八九一九円の合計金二二九四万二八六七円から被告が原告に返還した商品代金一三四〇万九六〇四円を差し引いた金九五三万三二六三円の債権とを対等額で相殺する旨の意思表示をした。
7 前記2のとおり、被告は、八王子配送センターの売上げが毎月二七〇〇万ないし二八〇〇万円に達していたとの原告の説明を信じ、委託料の配分についての合意をしたものであるが、真実は右売上げは毎月一〇〇〇万ないし一八〇〇万円しかなかったのであるから、委託料の配分についての合意はその重要な部分に錯誤があり無効である。
また、原告は実際の売上高が毎月一〇〇〇万円から一八〇〇万円程度しかなかったにもかかわらず、委託料の配分割合を合意する際に毎月二七〇〇万円から二八〇〇万円の売上げがあるかのように被告に虚偽の事実を申し向け、その旨被告を誤信させたうえ、委託料の配分割合についての合意をさせたものである。したがって、被告は原告に対し、昭和五七年七月二三日の本件口頭弁論期日において右意思表示を取り消す旨の意思表示をした。
四 被告の主張に対する認否
1 被告の主張1の事実のうち、原告と被告が次の合意をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。
(一) 原告が顧客から事前に配布してあるカタログにより電話で注文を受け、原告のコンピューターに打ち込んだうえ、右注文を被告に伝達し、被告が各顧客に注文の商品を配達し、顧客から商品代金を回収すること。
(二) 顧客に販売した売上高から原告の仕入れ価格に一パーセントを加えた額を差し引いた粗利益のうち三割を原告が取得し、残りの七割を被告が取得すること。
(三) 運送費は一件につき金二〇〇円(但し、顧客から注文を受けた日の翌々日の配達分、翌日配達分については金三〇〇円)を顧客が負担すること。
2 同2の事実は否認する。
3 同3の事実のうち、被告の売上高が別表計算書売上高欄記載のとおりであったことは認めるが、その余の事実は否認する。
4 同4の事実は否認する。
5 同5の事実のうち、原告が被告から商品の引渡しを受けたことは認めるが、その余の事実は否認する。右は被告所有の在庫を被告の依頼により原告が引き取ったものであり、その金額は金六九七万二四八九円である。
6 同6の事実のうち、被告が相殺の意思表示をしたことは認める。
7 同7の事実は否認する。
(反訴)
一 請求原因
(本訴「三被告の主張」1ないし6と同旨)
よって、被告は原告に対し、業務委託契約に基づく費用償還請求権又は損害賠償請求権に基づき、右相殺後の金一九七五万五二二六円及び相殺の意思表示をした昭和五五年九月四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
(本訴「四被告の主張に対する認否」1ないし6と同旨。)
第三証拠《省略》
理由
第一本訴請求について
一 原告は、被告との間の取引について、商品の売買である旨主張し、被告は商品配送等の業務の委託である旨主張する。
二 《証拠省略》によれば原被告間の取引開始に至るまでの経緯として次の事実を認めることができ、この認定を覆すに足りる証拠はない。
1 原告はコンピューターによる情報処理等を業とする会社である(この事実は当事者間に争いがない。)。
2 原告の代表者栗山民毅はテレホンショッピング・システムと呼ばれる流通システムを考案した。同システムのあらましは、(1)予め本部(原告)に登録した消費者は配布されたカタログから選んだ商品を電話で注文をする、(2)本部のコンピューターは、注文された商品を直ちにメーカー・問屋に発注し、これを受けたメーカー・問屋は配達先の地域を担当する配送センターに商品を納入する、(3)本部はメーカー・問屋に商品を発注すると同時に配送センターに対しても、コンピューターで組んだ当該地区の配送プログラムを送る、(4)配送センターは右プログラムに従って商品を消費者に配達する、という内容のものであった。但し、右システムは考案されて間もないこともあって、後に述べるように地域の事情、配送センターを受け持つ業者等によって、システムの内容に若干の差はあったが、既存のスーパーのように大きな店舗、多くの在庫を持つことを不要にし、商品価格の低減を図り、消費者も直接店舗に出向くことなく、電話で買物ができるという利点を持つものであった。
3 原告は昭和五四年四月、八王子地区で右システムに係る業務を開始した。当初は、特に配送センターを設けず、地域毎に米穀店、酒店、精肉店、雑貨店等の小売店を加盟店とし、消費者からの注文商品を小売店毎に配送するという方法をとっていたため、配送が円滑に行われなかった。そこで、原告では配送センターを設け、消費者から注文のあった商品を原告の指示により、メーカー・問屋から配送センターへ一たん納入させ、配送は米屋を中心とし、一部運送会社に委託するという方法を採用した。
4 原告は同年九月には東京地区(目黒区外)でも右と同様の業務を開始した。そこでは、八王子地区とは異なり、前記のシステムのうち、配送センターから顧客に対する配送及び集金のみをアイ・イー・シー急送サービス株式会社に委託し、その他一切は原告が担当することとした。
5 昭和五四年一一月、原告の行っている前記システムを新聞等で知った被告は右システムに参画するため原告と交渉を行った。
三 原被告間の契約内容について
1 原告と被告が次の内容の合意をしたことは当事者間に争いがない。
(一) 原告が顧客から事前に配布してあるカタログにより電話で注文を受け、コンピューターに打ち込んだうえ、右注文を被告に伝達し、被告が各顧客に注文の商品を配達し、顧客から商品代金を回収すること。
(二) 原告から被告への納入価格と被告から顧客への販売価格の差益の三割を原告が、七割を被告がそれぞれ取得すること。
(三) 運送費として、顧客は一件につき金二〇〇円(但し顧客からの注文を受けた日の翌々日の配達分、翌日配達分については金三〇〇円)を負担する。
2 右争いのない事実に、《証拠省略》によれば、次の事実を認めることができ(る。)《証拠判断省略》
(一) 原告と被告は交渉の結果、昭和五四年一一月、要旨次の内容の合意をした。
(1) 被告は原告の開発したテレホンショッピング・システムの八王子市、羽村町における配送センターとしてその業務に参画する。
(2) 顧客からの電話による注文は、原告が受け、これをコンピューターに打ち込んだうえ、被告に伝達する。その際、原告は被告に対し、配送のために必要かつ有益な指示を与える。
(3) 被告は配送センター内の在庫の中から、原告の指示に従い、注文のあった翌々日に顧客に対し注文商品を配達し、顧客から配送料金二〇〇円(但し、翌日配達の場合は金三〇〇円)とともに商品代金を受領する。なお、顧客は商品代金を銀行振込により支払うこともできるが、この場合は予め指定された銀行の原告名義の口座に振り込んで支払う。
(4) 被告は原告を通じメーカー・問屋から商品を仕入れる。原告は顧客の注文状況に応じ、メーカー・問屋に商品を発注し、メーカー・問屋は原告から指示された商品を直接、被告に納入する。
(5) 原告の被告に対する商品納入価格は、メーカー・問屋から原告に対する売買価格に一パーセントを加算した金額とする。
(6) 顧客に対する商品の売買価格は、予め原告が設定した価格によるものとし、原告は取扱商品名及びその売買価格を記載したカタログを作成配布する。
(7) 被告は原告から仕入れた商品の代金を毎月一〇日、二〇日、末日で締め切り、締切りの五日後に原則として現金で原告に支払う。
(8) 原告から被告に対する納入価格と被告から顧客に対する売買価格との差額の七割は被告が取得するが、三割はコンピューター処理料として原告が取得する。被告は原告に対し、右コンピューター処理料を毎月末日に締め切り、翌月一五日に支払う。
(9) 配送センターの管理運営は被告が行い、商品の在庫負担は被告が負う。
(10) 広告宣伝活動等は原告が行う。
(11) 顧客からの代金回収不能による損害はそれぞれ二分の一ずつ負担する。
3 被告は、原被告間の交渉において、八王子配送センターの毎月の売上げが二七〇〇万円ないし二八〇〇万円に達していなかったにもかかわらず、右売上げが毎月二七〇〇万円ないし二八〇〇万円もあった旨虚偽の事実を申し向け、被告をしてその旨誤信させ、その結果被告は配送センターの運営に必要な経費を配分された委託料で十分まかなえるものと信じて委託料の配分について合意をした、右は錯誤により無効であるか又は詐欺によりなされたものであるから取消しの意思表示をする旨主張し、《証拠省略》中、右主張に副う部分が存するが、右各証言は前掲各証拠及び前記認定事実に照らし採用することができず、他に右主張を認むべき証拠はない。
四 《証拠省略》によれば、原被告間の取引状況について次の事実を認めることができ(る。)《証拠判断省略》
1 被告の配送センターは昭和五四年一一月一二日に業務を開始したが、右開業に当たり、原告は、従前の八王子配送センターにあった商品を一括して被告に納入し、被告は右商品の代金一〇三五万〇七二二円を手形により全額支払った。
2 取引開始後、原告は被告に対し、納入した商品の代金の支払を請求し、被告は右請求に応じ商品代金を支払ってきた。
3 被告は、業務開始に当たり、配送センターのある建物において、宣伝を兼ねて開業記念セールを行ったが、その販売利益はすべて被告が取得した。
4 被告は顧客からの注文件数及び売上げ金額が当初の予想よりも低い一〇〇〇万円前後で最高でも一八〇〇万円程度であって、配送料及び差益金の内七割相当金額の収入では被告の事業として収益をあげることができなかったため、原告に対し、(1)配送料の値上げ、(2)商品の値上げ、(3)顧客に対する売上げに見合う仕入代金の支払等の申入れをした。
5 原告は被告からの右申入れに応じなかった。他方、原告は、大手スーパーである株式会社ユニーとの間に新会社を設立し、新会社に右テレホンショッピングシステムを移行することとし、被告とも交渉の結果、原被告間の契約は昭和五五年六月三〇日をもって終了し、同年七月一日からは新会社(株式会社アルビー)と被告との間に新たに業務委託に関する契約が締結されることとなった。同契約においては、被告は商品の宅配、管理(配送センターである被告に納入された商品の検品等)、仕分け(顧客別に商品を仕分けすること)の各業務のみを受託し、右委託業務に対する料金を受領する旨明記された。
6 同年六月三〇日に原被告間の取引が打ち切られた結果、被告の倉庫に残存していた商品の処分について、被告は原告に依頼し、原告の従業員が被告及び株式会社アルビーの従業員立会いの下、棚卸しを行い、残存商品を株式会社アルビーに一部譲渡したほか、仕入先に返品をした。
五 以上認定の事実に基づき考えるのに、原被告間の取引全体をみると売買契約か委任契約か一方に断ずることは極めて困難である。また、原被告間の取引全体の趣旨を売買又は委任のいずれか一方に決めつけることは不必要であって、要は本訴請求についていえば、原告と被告とが、商品の所有権の帰属及び代金の支払についていかなる合意をしていたかを考察すれば足りるといわなければならない。
そして、前記認定事実によって認められる、(1)被告は原告から納入された商品につき、現実に顧客に対し売却されたか否かにかかわらず、その代金を支払うとされていること、(2)被告は業務開始に当たり、原告の八王子配送センターにあった商品の納入を受け、その代金を原告の請求により一括して支払っていること、(3)原告から納入された商品代金について原告がその支払を求めたのに対し、被告は右請求金額をそのまま支払っていること、(4)被告は、顧客に対する売上げが当初の予想に達しなかったため、原告に対し、現行の代金支払方法を売上げが現実にあった代金のみ支払えば足りるとの方式に変更することを申し入れていること、(5)開業時の記念セールで得られた利益はすべて被告が取得していること、(6)昭和五五年七月から事業が開始された被告と株式会社アルビーとの間の契約においては、被告は配送及びこれに付随する業務のみを受託する旨明記されていること等の事実によれば、原告から被告に対し商品が納入されたときに所有権は被告に移転し、被告は右商品の代金を支払う旨約されていたと認めることができる。
なお、前記認定事実によれば、原被告間の取引において、原告が商品の仕入れ先、顧客に対する売買価格等を決定し、また原告において消費者に配布するカタログを作成していることが認められるが、前記認定したところによれば、テレホンショッピングシステムは原告の考案に係るものであり、また商品の仕入れ先や売買価格について従前の取引実績があったのに対し、被告はそれまで右の諸点につき全く知識と経験を有していない運送会社であったため、原告がこれらの点について主導的役割を果したものであって、テレホンショッピングシステムという共同事業の性質上、当然の役割分担であったということができる。
また、前記認定事実によれば、顧客からの代金回収につき、銀行振込み分は原告名義の口座に振り込まれていることが認められるが、《証拠省略》によれば、原被告間の合意により、便宜上右のような取扱いをしたものであって、振り込まれた金額は、毎月、原告の被告に対する商品代金債権と相殺処理をしていることが認められる。
したがって、原被告間の取引において右のような事実があったとしても、原告から被告に対する商品の引渡しが売買によるものであることを何ら否定するものということはできない。
六 そして《証拠省略》によれば、昭和五五年六月三〇日現在において、原告の被告に対する売掛残代金債権は金二一六八万三九四八円、コンピューター手数料及び手形の割引利息債権が金一二五万八九一九円であったと認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
七 前記五6認定の事実に《証拠省略》によれば、原被告間の取引は昭和五五年六月三〇日をもって終了したが、被告は、その時点において被告の配送センターに残った在庫の処分を原告に依頼したこと、原告の従業員は被告及び株式会社アルビーの立会いの下に棚卸しを行ったこと、棚卸しの結果、金九五三万〇二八六円相当の商品が残っているとの報告がなされたこと、原告のコンピューターには右時点における被告の在庫として金一三四〇万九六〇四円相当の商品という数字が登録されていたこと、右コンピューターに登録された数字と実際の棚卸し高の差は、被告が原告からの指示があった顧客以外に社内で販売したもので原告のコンピューターに売上げとして登録されていないものがあったり、また棚卸し時に納入時と異なる価格の評価をしたことによるものであること、右棚卸しの後、原告は在庫商品を一部、株式会社アルビーに譲渡したほかはメーカー・問屋に返品する等の措置をとったこと、メーカー・問屋との交渉の結果、返品の時点では商品価値が全くないか又は著しく減少している商品について返品価格を下げざるをえなくなり、結局、在庫商品を金六九七万二四八九円で処分することができたことの各事実が認められる。
ところで、《証拠省略》中には、右認定と異なる数字の記載があるが、前掲各証拠及び右認定事実によれば《証拠省略》の数字は棚卸しの時における一応の数字を記載したものであって、その後、現実に処分した結果、在庫商品の処分価額は金六九七万二四八九円であったことが認められるから、右《証拠省略》の記載をもって、在庫商品の価額であるとすることはできない。《証拠判断省略》
したがって、原告は被告に対し右在庫商品の処分価額六九七万二四八九円を被告に返還すべき債務を負う。
八 原告が昭和五六年二月三日の本件口頭弁論期日において前記六記載の債権金二二九四万二八六七円と右七の債務金六九七万二四八九円とを対等額で相殺する旨の意思表示をしたことは当事者間に争いがない。
九 被告の主張について
被告は、相殺の自動債権として委任による費用償還請求権又は報酬請求権を主張する。
たしかに前記二ないし五で述べたとおり、原被告間の合意のうちには委任類似と評価することのできる約定が存していることは否定することができないが、いかなる経費を誰が負担するのか或いは報酬はいかなる業務の遂行に対し、いかなる基準で支払われるのかについてまず当事者間の合意を検討すべきである。
そこで考えるに、被告主張に係る経費は、本来、被告が負担すべきものであるところ、前記二ないし四で認定した事実に鑑みれば、原告と被告は右主張に係る経費は被告において負担するものとし、そのうえで被告が受領する配送料及び粗利益の取得割合を定めたものと推認することができる。したがって、被告は右の如き経費の支払を請求することができない。また、被告主張に係る報酬は通常当事者間の合意により定められているところ、前記二ないし四認定の事実によれば、被告が受領すべき金銭は配送料及び粗利益の七割に限られる旨の約定が存していた(それだからこそ、後に被告は原告に対し、右約定の変更を申し入れているのである。)と認められ、右以外の金銭を報酬として請求することができないといわなければならない。
よって、被告の右主張は、その余について判断するまでもなく採用することができない。
一〇 以上のとおり、原告の本訴請求は理由がある。
第二反訴請求について
「本訴請求について」の九で説示したところによれば、被告の反訴請求は理由がないことは明らかである。
第三結論
よって、原告の本訴請求は理由があるから認容し、被告の反訴請求は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 吉野孝義)
<以下省略>