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東京地方裁判所 昭和55年(特わ)2393号 判決 1980年12月17日

本店所在地

東京都中央区日本橋茅場町二丁目一三番三号

中外電気工業株式会社

(右代表者代表取締役 田中靖一)

本籍

東京都大田区北千束二丁目四九七番地

住居

同都同区千束二丁目一三番七号

会社役員

田中靖一

大正二年九月三〇日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官寺西輝泰出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人中外電気工業株式会社を罰金四、〇〇〇万円に、被告人田中靖一を懲役一年に

それぞれ処する。

被告人田中靖一に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人中外電気工業株式会社(以下「被告会社」という。)は、東京都中央区日本橋茅場町二丁目一三番三号に本店を置き、電気接点の製造並びに販売等を目的とする資本金一億円の株式会社であり、被告人田中靖一は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人田中は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、原材料である銀地金の売上の一部を除外し、簿外の割引債券を購入するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五一年一〇月一日から同五二年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億二、一二一万三、三九五円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一一月三〇日、東京都中央区日本橋堀留町二丁目五番地所在の所轄日本橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零円で納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五五年押第一七八〇号の2)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億一、六九七万一、五〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)を免れ、

第二  昭和五二年一〇月一日から同五三年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九、〇六七万五、八二一円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同年一一月三〇日、前記日本橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零円で納付すべき法人税額がない旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の3)を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一、九四五万八、七〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人田中靖一の当公判廷における供述及び検察官に対する供述調書

一  収税官吏の被告人田中靖一に対する質問てん末書三通

一  検察官、被告会社、被告人田中靖一及び両者の弁護人作成の合意書面並びに「合意書面の訂正について」と題する書面

一  大蔵事務官各作成の証明書及び国税の納付状況照会回答書

一  東京法務局登記官作成の登記簿謄本

一  押収してある法人税確定申告書三綴(昭和五五押第一七八〇号の1ないし3)及び法人税修正確定申告書二綴(同号の4及び5)

(法令の適用)

被告人田中靖一の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。さらに、被告人田中靖一の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により、判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金四、〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の事情)

本件は、被告人田中が個人経営から身を起こし、一代で資本金一億円、東京都内の本店、二か所の工場及び関連会社数社を有し、国内における電気接点部品(スイッチ類)の約六割のシエアを占めるまでに至った被告会社において、二事業年度にわたり合計一億三、六〇〇万円余りの法人税を免れたというものであるが、脱税の動機には格別酌むべき点はなく、脱税額も高額であるばかりか、右二事業年度とも相当な所得があったにもかかわらず、いずれも零申告を行ない、さらに、原材料である銀地金の売却処分先と通謀したうえで売上除外を行なうなど脱税の手段も悪質であり、その他、昭和四一年ころにも脱税の査察を受けたことがあることなどにかんがみると、被告会社及び被告人田中の刑責は軽視することができない。しかしながら、被告会社は、本件の脱税分につき修正申告を行なったうえ、本税・重加算税等を全額納付しているほか、今後適正な納税を行なうため顧問税理士を被告会社の監査役に選任し、被告人田中及び右税理士は、今後不正な取引及び帳簿処理を行なわない旨供述していることなどの有利な事情も認められ、その他諸般の事情を考慮して主文のとおり量刑する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小瀬保郎 裁判官 久保眞人 裁判官 川口政明)

別紙(一) 修正損益計算書

中外電気工業株式会社

自昭和51年10月1日

至昭和52年9月30日

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別紙(二) 修正損益計算書

中外電気工業株式会社

自昭和52年10月1日

至昭和53年9月30日

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別紙(三)

ほ脱税額計算書(単位 円)

会社名 中外電気工業株式会社

(1)自昭和51年10月1日

至昭和52年9月30日

<省略>

(2)自昭和52年10月1日

至昭和53年9月30日

<省略>

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