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東京地方裁判所 昭和55年(特わ)3399号 判決 1981年3月20日

裁判所書記官

萩原房男

本店所在地

東京都新宿区歌舞伎町二丁目二三番八号

(右住居表示変更前同都同区西大久保一丁目四四〇番地)

勝村観光株式会社

(右代表者代表取締役小林一彦)

本籍

東京都新宿区歌舞伎町二丁目四四〇番地の七

住居

同都同区歌舞伎町二丁目二三番八号

会社役員

小林一彦

昭和一四年八月二六日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官寺西輝泰出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人勝村観光株式会社を罰金一、二〇〇万円に、被告人小林一彦を懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人小林一彦に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人勝村観光株式会社(以下「被告会社」という。)は、東京都新宿区歌舞伎町二丁目二三番八号に本店を置き、旅舘の経営等を目的とする資本金五〇万円の株式会社であり、被告人小林一彦は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人小林は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、宿泊料収入等の一部を除外して簿外の株式等を購入するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五二年三月一日から同五三年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が三三五四万八一七〇円(別紙(1)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、同年四月二七日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号所在の所轄淀橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六七万四三四七円でこれに対する法人税額が一五万九二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五六年押第一二九号の7)を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一二五四万〇二〇〇円と右申告税額との差額一二三八万一〇〇〇円(別紙(4)脱税額計算書参照)を免れ、

第二  昭和五三年三月一日から同五四年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が三七〇九万一〇五七円(別紙(2)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、同年四月二八日、前記淀橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一五九万三四二一円でこれに対する法人税額が四三万〇九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の9)を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一三九八万一三〇〇円と右申告税額との差額一三五五万〇四〇〇円(別紙(4)脱税額計算書参照)を免れ、

第三  昭和五四年三月一日から同五五年二月二九日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が二七七八万〇三七六円(別紙(3)修正貸借対照表参照)あつたのにかかわらず、同年四月二八日、前記淀橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三四〇万一四一〇円でこれに対する法人税額が八七万九八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(前同号の11)を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一〇一七万円と右申告税額との差額九二九万〇二〇〇円(別紙(4)脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人小林一彦の当公判廷における供述及び検察官に対する供述調書三通

一  小林宏子の検察官に対する供述調書

一  収税官史作成の定期預金等発生資金源、現金勘定、普通預金、定期預金、株式、社債、国債等、割引債券等、国債貯蓄、過払源泉税、代表者勘定、借入金、未払金及び未納事業税に関する各調査書各一通

一  淀橋税務署長作成の法人税の納付状況照会に対する回答書

一  東京都新宿都税事務所長作成の税の納付状況照会に対する回答書

一  東京法務局新宿出張所登記官作成の登記簿謄本

一  押収してある総勘定元帳四綴(昭和五六年押第一二九号の1ないし4)、確定申告書四袋(同号の5、7、99及び11)並びに修正申告書三袋(同号の6、8及び10)

(法令の適用)

被告人小林一彦の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一〇月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。さらに、被告人小林の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金一二〇〇万円に処することとする。

(量刑の事情)

本件は、父親が個人経営していた旅舘業を引き継いだ被告人小林において、これを法人成りしたうえ、いわゆる連れ込み旅舘を営み、父親のころから行われていた脱税を引き継いで本件に及び、被告会社の三事業年度における法人税合計三五〇〇万円余りを免れたというものであるが、脱税の動機には格別酌むべき点はなく、会計伝票を破棄するなど脱税の手段も悪質であり、ほ脱率はいずれの年も九割以上であることなどにかんがみると、被告会社及び被告人小林の刑責は軽視することができない。しかしながら、被告会社は、本件の脱税分につき修正申告を行つたうえ、本税・重加算税等を全額納付していること、被告人小林は、今後適正な経理処理を行う旨供述しており、反省の態度がみられるほか、前科・前歴もないことなどの有利な事情も認められ、その他諸般の事情を考慮して主文のとおり量刑する。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小瀬保郎 裁判官 久保真人 裁判官 川口政明)

別紙(1)

修正貸借対照表

勝村観光株式会社 昭和53年2月28日

<省略>

別紙(2)

修正貸借対照表

勝村観光株式会社 昭和54年2月28日

<省略>

別紙(3)

修正貸借対照表

勝村観光株式会社 昭和55年2月29日

<省略>

別紙(4)

脱税額計算書

<省略>

○ほ脱所得額 合計 92,750,425円

○ほ脱税額 合計 35,221,600円

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