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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)14333号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一当事者間に争いのない事実

被告森規が、昭和五二年六月二七日当時、不動産売買等を業とする被告会社の従業員で、被告会社の営業に従事していたこと、被告会社は、原告に対し、本件土地を金五九一万円で売り渡したこと及び原告がその代金五九一万円を被告会社に支払つたことは、当事者間に争いがない。

また、被告森規は、同被告が右売買契約の締結に際し、「本件土地の価格が現在は、六〇〇万円だが、三年後には、何倍にも値上がりする。そのときは、私が責任をもつて転売してやる。そうすれば大いにもうかる。」と述べたことは、明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

二被告らの責任

1 被告森規の責任

(一) 本件売買契約の際、被告森規が原告に対し、「現在は六〇〇万円の土地だが、三年後には何倍にも値上がりする。そのときは私が責任をもつて転売してやる。」と述べた事実は、原告と被告森規の間では争いがなく、<証拠>によれば、原告が右被告森規の説得により本件土地の時価を六〇〇万円程度と信じたこと、本件土地の値上がり利益が右の言のとおりではないとしても銀行利子よりよいと信じたこと及び原告が右のとおり信じた結果、本件契約を締結するに至つたことを認めることができる。

(二) 鑑定の結果によれば、本件土地の価格が昭和五二年六月二七日当時金二三五万九〇〇〇円であつたこと、昭和五七年三月一日現在でも金三二七万七〇〇〇円であることを認めることができる。

(三) 前示当事者間に争いがない事実、<証拠>によれば、不動産販売を業とする被告会社の営業に従事していた被告森規としては、被告会社が開発し、販売していた本件土地の本件売買契約当時の時価が約六〇〇万円もし、三年後の値上がり幅が右時価の何倍もなる程大きいものではないことを当然知つていたにもかかわらず、原告に対し、本件土地を高価に売却しようと図り、虚偽の事実を告げ、原告を偽罔したことが認められる。

したがつて、被告森規が原告に対し、右(一)のとおり述べたことは、同被告の故意によるものであるといわなければならない。同被告は、この点について、いわゆるセールストークの範囲内に属すると主張するが、同被告の述べた本件土地の価格と右時価との間には、余りに大きな差があり、取引におけるいわゆるかけひきの範囲内として許容さるべきものではない。

(四) してみれば、被告森規には、原告が本件土地の売買契約によつて被つた損害を賠償すべき義務があるといわなければならない。

2 被告会社の責任

(一) 前示当事者間に争いのない事実、<証拠>によれば、被告森規は、被告会社の従業員として、その営業に従事していたところ、原告が本件土地を被告会社から買受けるに際し、「価格は、五九〇万円で多少高いが、それは、区画してあるためだ。銀行に預けるより土地を買つておけば、五年後には三倍に値上がりする。三年たつたら会社が責任をもつて売つてやる。」と述べたこと、原告は、右被告森規の説得により、本件土地の時価が約六〇〇万円程度であり、将来、同被告のいうほどではないにしても、かなりの値上がりが期待できると考えてこれを買い受けたことが認められる。

(二) 本件土地の時価及び被告森規の故意については、1(二)、(三)において認定したとおりである。

(三) したがつて、被告森規は、被告会社の従業員としてその業務の執行につき原告を欺罔し、本件土地を買い受けさせたものであるから、被告会社は、原告が本件土地を被告会社から買い受けたことにより被つた損害を賠償する義務があるといわなければならない。

三損害

前示当事者間に争いのない事実及び鑑定の結果によれば、原告が本件土地を買い受けたことにより被つた損害は、原告の支払つた代金額金五九一万円から本件土地の契約当時の価格金二三五万九〇〇〇円を控除した差額金三五五万一〇〇〇円であるということができる。

(元木伸)

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