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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)7932号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【事実】

「一請求原因

1 原告は、昭和一四年一月から昭和一六年六月までの三〇か月、昭和一七年四月から昭和一九年七月までの二八か月、昭和二〇年四月から同年九月までの三か月、昭和二一年三月から昭和二六年五月までの六四か月、昭和三九年一〇月から昭和五二年一二月までの一五九か月の合計二八四か月について、昭和五五年一二月一三日地方職員共済組合広島県支部長により通算年金通則法四条一項五号の地方公務員共済組合の組合員期間として通算対象期間の確認を受け、また、昭和三九年四月から同年九月までの六か月と昭和五三年一月から昭和五五年六月までの三〇か月の合計三六か月について、昭和五五年一〇月九日社会保険庁長官により厚生年金保険の通算対象期間の確認を受けているものである。

2 原告は、昭和三三年一〇月一日から昭和三九年一月二六日まで広島県佐伯郡吉和村農業協同組合(以下「吉和村農協」という。)に勤務し、その間被告の組合員であつた五年一月と被告の組合員になるまでの厚生年金保険の被保険者であつた六年九月の合計一一年一〇月(以下「本件期間」という。)について、被告に対し、昭和三九年四月六日退職一時金の支給を請求し、同年五月一一日金七万二〇三六円の支給を受け、さらに同年九月四日追加給付を請求し、同月八日金七万四〇三七円の追加支給を受けた。

これは、「通算年金制度を創設するための関係法律の一部を改正する法律」(昭和三六年法律第一八二号、以下「改正法」という。)附則四四条に基づく原告の申出があつたとして、その退職一時金として、法定額(当時の農林漁業団体職員共済組合法三八条二項一号に掲げる額)から通算退職年金の財源となる額(同項二号に掲げる額)を控除しない額を支給することを内容とするものであつた。」

【判旨】

二無効確認請求の本案に対する判断

請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない。

そこで、原告の主張する本件支給処分の無効事由の存否について、順次検討する。

1 通算退職年金の財源控除に関する申出と法定期間徒過の有無について

(一) 昭和三六年の通算退職年金制度の創設に伴い、そのための財源を組合に留保する趣旨から、昭和三九年法律第一一二号による改正前の農林漁業団体職員共済組合法三八条二項は、同条一項により組合員資格を喪失した者に支給される退職一時金の額は同条二項一号に掲げる額から同項二号に掲げる額即ち将来支給される通算退職年金の財源となる額を控除した額とする旨定めていた。しかし、なお期待権を保護する趣旨から、改正法附則四四条は、一定の要件に該当する者について、その者が組合員資格を喪失したときから六〇日以内に右通算退職年金の財源の控除を受けないことを希望する旨組合に申し出たときは、これを控除しない額の退職一時金を支給すると定めていた。

原告は、昭和三九年一月二六日吉和村農協を退職したことにより被告の組合員資格を喪失し(右事実は、<証拠>によりこれを認めることができる。)、前記改正法附則四四条に規定する者に該当したことから、通算退職年金の財源を控除しないで欲しい旨の申出を併記した退職一時金請求書を被告に提出したところ、同請求書(以下「本件請求書」という。)は同年四月六日被告に受理された(右事実は当事者間に争いがない。)。

(二) 右事実を前提に、原告は、原告の通算退職年金の財源を控除しないで欲しい旨の申出は前記改正法附則四四条の法定期間六〇日を徒過してなされたものであるから、通算退職年金の財源を控除して欲しい旨の申出をしたのと同様に取り扱われるべきであると主張し、一方被告は、原告は昭和三九年二月初めころ、通算退職年金の財源を控除しないで欲しい旨の申出を併記した退職一時金請求書を被告に提出したが、書類に不備があるとして返戻されたためこれを訂正する趣旨で本件請求書を提出したものであつて、財源控除に関する申出としては法定期間内になされた当初の申出によるべきものであるから、本件支給処分は適法であると主張する。

そのいずれであるか、即ち、本件請求書が原告の主張するように初めて提出されたものか、それとも当初提出されたものを訂正する趣旨で再提出されたものかは、本件全証拠によるも必ずしも判然としない。しかしながら、仮に被告の主張することが事実であるとしても、証人立花芳夫の証言によれば、当時の退職一時金等の請求書類の取扱いとして、被告は、これら請求書に再提出である旨の記載等があつてその請求書自体から再提出であることが判明すれば従前提出された書類の受付日の受付印を押捺することとしていたが、これらの記載がないためそれが書類上明らかでないときは新規に提出されたものとして受理し処理していたことが認められるところ、本件請求書には被告の昭和三九年四月六日の受付印が押捺され同年二月初めの受付印は押捺されていないから、被告としては本件請求書を昭和三九年四月六日に新規に提出されたものとして受理し、右請求書に併記された通算退職年金の財源控除に関する申出も同日申出がなされたものとして取扱つたものというほかはない。

(三) そうすると、被告は、原告の通算退職年金の財源控除に関する申出をその組合員資格喪失の日から七一日目に受理しておきながら、これを改正法附則四四条の六〇日の法定期間内の申出として取扱つたことになるから、その当否が問題となるが、この点については前掲立花芳夫の証言によれば、当時被告は、通算退職年金の財源の控除に関する申出が郵送によりなされた場合、法定期間の六〇日を二週間延長し、その期間内に申出が受理されたときは法定期間内に申出がなされたものとして取扱つていたこと、その理由は次のような事情、即ち、

(1) 当時の農林漁業団体職員共済組合法は郵送に要した日数を期間に算入するかどうかについて全く明文の規定を置いていなかつたところ、同種の法律である国家公務員共済組合法はこれを期間に算入しないとする明文の規定を置いていたこと、

(2) 通算退職年金の財源の控除に関する申出を併記した退職一時金請求書を被告に送付するときは所属団体の検認を受けるものとされていたところ、これに要した期間及び被告に送付されてくる退職一時金請求書には各都道府県に置かれた農林年金連絡協議会を経由してくるものがあつたところ、それに要した期間は、いずれも本人の責めに帰すべからざる事由により要した期間としてこれを法定期間に算入しない扱いをする必要があつたこと

によるものであつたことが認められ、本件請求書の併記された申出もこのような取扱いに従い法定期間内に申出がなされたものとして(追加給付については右申出に従い)本件支給処分がなされたものと認められる。

かかる取扱いは、結局のところ、申出の効力発生の時期についてこれを到達時としたうえ、法定期間を二週間延長した扱いということができるが、個別的事情を考慮して法定期間を延長することはともかく、一律に法定期間を延長する取扱いは、原則として許されないものといわなければならない。

しかし、本件のように、法が期間計算に関する規定を設けていない場合に、申出書が前記(2)のように関係機関を経由して送付されてくることを考慮し、これに要する日数は最大限二週間程度であるとしてこれを法定期間に算入しないという趣旨で一律に二週間程度法定期間を延長する扱いにしたとしても、それをもつて違法というかどうかはともかくとして、少なくとも重大かつ明白な瑕疵があるということはできない。従つて、右申出が法定期間を徒過していることを前提に本件支給処分の無効をいう原告の主張は失当である。  (近藤壽邦)

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