東京地方裁判所 昭和56年(ワ)8489号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
二そこで抗弁について判断する。(1)(2)の預金について原告の実印に改印届がなされていることは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、抗弁事実が一応認められる。しかしながら、<証拠>によれば、改印届がなされたという昭和四九年七月二一日は日曜日に当り、かつ堀内一郎、河合和夫が改印届や払戻を受けたことはないというのであり、また原告が払戻を受けたこともないこと、原告が預金したのは長(おさ)尾久支店長であり、同支店長が退転した昭和四九年三月末まで同支店長が原告の定期預金通帳及び印鑑を預つていたこと、(1)(2)の預金については改印届がなされているのに(3)の預金についてはなされていないこと、しかも(3)の預金については通帳再発行がなされた日に払戻がなされていることが認められ、右事実に改印届については本人の意思確認が重要であるのにこれのなされた形跡はないこと、しかも原告は女性であるのに改印届をしたのは男性というのであるから、たとえ原告の実印であるとしても原告の委任状を徴する等代理人の有無や本人に照会する等の意思確認につとめるべきことを考慮すると、被告の払戻手続には少くとも過失があるといわざるをえず、被告の免責の抗弁は採用できない。
三以上によれば、原告の本訴請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。 (村重慶一)