東京地方裁判所 昭和57年(ワ)12717号・昭54年(ワ)5332号 判決
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【説明】
「2 仮に然らずとするも、右昭和四一年三月二五日の合意は、右の如き販売の委託とこれに付随する原告の被告に対する本件建物使用の許諾及び被告の原告に対する右建物使用料等の支払義務を包摂する内容の無名契約というべきところ、被告は昭和四三年度分以降の右建物使用料等の支払を怠つたため、原告は被告に対し、昭和四五年二月一八日付書面、同年八月三一日付書面、昭和四九年七月一七日付書面の到達によつて再三支払いを催告したが被告はこれを支払わなかつたため、原告は、右のとおり昭和五二年一〇月五日付の書面ないし昭和五五年八月二六日付準備書面の被告への到達により民法五四一条に基づいて右契約を解除する旨の意思表示をした。
3 よつて、原告は被告に対し、民法五四五条による原状回復請求権に基づき、(一)5と同様の請求を求める。」
【判旨】
(一) 本件建物の使用関係について
原告は、被告の本件建物の使用関係を準委任契約或いは原告の被告に対する本件建物の使用の許諾と被告の原告に対する右建物使用料等の支払義務を内容とする無名契約である旨主張し、被告は、借家法の適用のある賃貸借であると主張するので、まず、この点につき判断する。
<証拠>によれば、
1 本件建物は、国有財産法上のいわゆる行政財産に属するものであるところ、国は、昭和三五年四月一日以降、東京大学医学部における医学の研究を奨励、助成し同時にその附属病院における患者の診療、看護等に必要な助成を行うこと等を目的として設立された原告に対し、右病院における職員及び入院患者のサービスの用に供するものとしてその用途を限り、国有財産法一八条三項に基づいて使用許可をしてきたものであること。
2 被告は本件建物を使用する以前は、戦後間もなくから、本件建物と同様、原告が国より使用許可を受けてきた原告事務所のあつた階上一室(以下、「旧建物」という。)を使用していたものであるが、右は、原告が被告に対し、前記病院において、被告が原告の指定業者として看護婦の白衣などの洋服の裁縫及び男女洋服に要する生地及び附属品の販売を委託するとともに、その営業場所として右建物の使用を許す旨の両者の契約のもとに使用してきたものであり、右使用に際しては、併せて、被告において毎月の売上金の一定割合を歩合金として、被告が使用した水道、ガス、電気料とともに支払うべき旨の約定がなされ、被告がこれら約定に違反したときは、原告はその営業を停止し、又はこれを解約することができるものと定められ、かかる内容の契約が一年ごとに更新されてきたものであること、なお、右により被告が支払うべきものとされた歩合金は、実際上は、原告が国に対して支払つていた使用料と同額のものを定額支払うべきもの、即ち、被告の原告に対する本件建物の使用料という形で取扱われてきたものであること。
3 その後の昭和四一年三月二五日、原、被告は、旧建物から本件建物に移転することに合意し、昭和四二年九月六日には右移転にあたつての覚え書を交したが、右建物使用にあたつての基本的な契約関係は旧建物のそれと変るところはなく、さらに国が原告に対して本件建物の使用を許可する際に付した条件の範囲を出るものではなかつたこと、右のとおり、原告の被告に対する旧建物及び本件建物の貸与の目的はあくまでも被告の営業場所としてのそれであつたところ、被告は旧建物の貸与を受けて間もなくからこれに居住するようになり、原告は被告に対し、住居としての使用はやめるよう申し入れたこともあつたが、そのまま経過し、本件建物にも居住するようになつたこと、
以上の各事実が認められる。
右認定の事実によれば、行政財産たる本件建物の使用関係に借家法の適用がないことは国有財産法一八条五項により明らかであり、また、本件建物の使用関係は、原告が被告に対して委託した業務と密接な関係にあり、むしろ、右目的達成にあたつて、それに附随する従的な関係として設定されたものというべきで、従つて、被告が右にあたつて支払うべきものとされた使用料も、原告が国から貸与を受けるにあたつて納付すべき使用料の実費を填補するというもので、本件建物使用にあたつての通常の対価としての意味合いを有するものでないことも明らかであつて、原、被告間の本件建物の使用関係をもつて借家法の適用ある賃貸借契約であるとする被告の主張は失当であり、結局、右使用関係は、原告が、その設立目的を達成すべく、被告に対して物品の販売等の委託をなすとともに、その営業場所として、国が原告に対して使用許可を与えるに際して付した条件の範囲内において使用を許し、被告において、右に判示したとおりの性格を有する使用料名目の金員の支払い並びに被告が使用した電気料等を支払うべきことを内容とする特殊な契約(以下、「本件契約」という。)というべく、原告が請求原因(二)、2で主張するような契約であると認めることができる。 (梅津和宏)