大判例

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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)13081号 判決

【事実】

「第二 当事者の主張

一  請求の原因

1  原告の商標権

原告は、次の商標権(以下「本件商標権」といい、その登録商標を「本件商標」という。)を有している。

登録番号 第六一二〇三四号

出願日 昭和三七年三月八日

公告日 昭和三七年一〇月一一日

登録日 昭和三八年五月一三日

更新登録日 昭和四八年一二月二五日

指定商品 第二六類 狩猟に関する記事を内容とする雑誌

登録商標の構成 別添商標公報のとおり

2  被告協会による被告標章の使用

被告日本狩猟協会(以下「被告協会」という。)は、「自然保護の積極的推進、狩猟道徳の涵養、狩猟鳥獣行政への寄与」等を目的として、昭和五六年五月二三日に設立された法人格のない社団であつて代表者の定めのあるものであり、右目的を達成するために「機関誌及び図書の刊行」等の事業を行つているが、同年八月以来、右事業の一環として、毎月一回、狩猟に関する記事等を内容とする月刊雑誌を出版、販売し、被告宮崎星麿(以下「被告宮崎」という。)は、被告協会の創立以来の代表者として右月刊雑誌の刊行の業務に携つている。

右雑誌中、創刊号(第一巻第一号)から通巻第八号(第二巻第四号)までの雑誌(以下「本件雑誌」という。)の表紙には、漢字「狩猟」を行書体風に横書きして成る標章(以下「被告標章」という。)が附されていた。

3  本件商標と被告標章との対比

本件商標と被告標章とは、ともに漢字「狩猟」を表示して成るものであつて、観念及び称呼において全く同一であり、また、縦書きと横書きとの相違はあるものの、その書体は両者ともに行書体風であつて殆んで同一であるから、外観においても酷似する。したがつて、被告標章は本件商標に類似する。

4  指定商品該当性

本件雑誌は、狩猟に関する記事等を内容とするものであり、これは本件商標の指定商品に該当する。

5  したがつて、本件雑誌の出版販売行為は、本件商標権を侵害するものである。

6  被告両名の責任

被告宮崎は、被告協会の代表者として、右侵害行為を行つたものであるから、被告協会は民法第四四条第一項及び第七〇九条の各規定に基づいて、被告宮崎は同法第七〇九条の規定に基づいて、それぞれ原告に対し右行為によつて原告が被つた損害を賠償すべき義務がある。」

【理由】

一請求の原因1ないし4の事実は当事者間に争いがない。右事実によれば、本件雑誌における被告標章の使用は、本件商標にかかる指定商品につき、本件商標に類似する商標を使用することになるから、原告の本件商標権を侵害するものとみなされる。

被告らは、原告及びその他の使用権者は継続して三年以上本件商標権を使用しておらず、被告宮崎において、現在商標法第五〇条第一項の規定に基づいて取消審判手続中であるから、商標権侵害にはならない旨主張するが、仮に商標権者等において登録商標を継続して三年以上使用していないため取消審判の手続中の場合であつても、商標登録の取消審判が確定するまでは当該登録商標権は有効に存在しているのであるから(商標法第五四条)、その間の指定商品についての登録商標に類似する商標の使用は、当然当該商標権を侵害するものとみなされるのであつて(同法第三七条第一号)、被告らの右主張は失当というほかない。

二本件商標権の右侵害行為は、被右協会の代表者として本件雑誌の刊行業務に当たつた被告宮崎の過失によつて行われたものと推定されるから(商標法第三九条、特許法第一〇三条)、被告協会は民法第四四条第一項の規定の類推適用によりその損害賠償責任を負担し、また被告宮崎も個人としてその損害賠償責任を免れ得ない。

そうすると、原告は、被告宮崎の前記侵害行為により原告の受けた損害の賠償として、商標法第三八条第二項の規定に基づき、本件商標に対し通常受けるべき使用料に相当する額の金員を請求することができる。

前記争いのない事実及び弁論の全趣旨により認められるところの本件雑誌の発行の状況、本件商標の使用態様によれば、本件雑誌における本件商標の使用料は、その市販の定価六〇〇円(この事実は当事者間に争いがない。)の四パーセントとするのが相当と認められるから、本件雑誌一部につき二四円が相当である。そして、本件雑誌の合計発行部数は、二万五〇〇〇部の範囲において当事者間に争いがなく、右部数以上に発行されたことを認めるに足りる証拠はない。したがつて、本件の場合、本件商標の使用に対して通常受けるべき使用料の総額は、右二四円に右二万五〇〇〇部を乗じて得られる六〇万円であると認められ、これを覆えすに足る証拠はない。

(牧野利秋 野崎悦宏 一宮和夫)

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