東京地方裁判所 昭和57年(ワ)13544号 判決
【事実】
「一 請求の原因
1 原告は、次の特許権(以下、「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という。)を有する。
発明の名称 軟弱地盤改良装置
出願日 昭和四九年一二月二四日
出願公告日 昭和五五年一〇月四日
登録日 昭和五六年五月二八日
登録番号 第一〇四八〇一一号
2 本件発明の特許出願の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載は、別添本件特許公報該当欄記載のとおりである。
3 本件発明の構成要件は、次のとおりである。
(一) 上方に中空ロツドを回動せしめる駆動装置を設けていること。
(二) 外周に所定間隔を設けた数段の起伏噴射翼を起伏自在に装設せしめたこと。
(三) 前記起伏噴射翼には、外部に各々数個の噴射孔を形成せしめると共に、内部に高圧注入パイプからの安定材を流通せしめる連通孔を形成したこと。
(四) 中空ロツドの下方所定位置に振動体を装設していること。
(五) 軟弱地盤改良装置であること。
【理由】
一請求の原因1ないし3及び5の各事実は当事者間に争いがない。
二右当事者間に争いのない請求の原因2、3の事実と<証拠>によれば、本件発明は、軟弱地盤改良装置に関し、従前のこの種装置の欠点を除去するため、右当事者間に争いのない本件明細書の特許請求の範囲に記載された技術的事項をもつて本件発明の構成に欠くことのできない事項としたこと、特に原告の主張する構成要件(二)ないし(四)の構成を採ることが本件発明の眼目であつて、この構成により請求の原因4で原告の主張する本件発明の目的を達成できる旨及び作用効果を奏することができる旨を、本件発明の発明者である原告他二名は、本件明細書において明示して、これを強調していることが認められる。
三被告装置を示すものであること当事者間に争いのない別紙目録の記載によれば、被告装置が、原告の主張する本件発明の構成要件(二)ないし(四)を具備しないことが明らかである。(この点において構成上差異のあることは、原告も自認するところである。)
原告は、右構成要件(二)、(三)に関し、被告装置は本件発明と均等もしくは実質的に同一である旨、また、右構成要件(四)に関し、その欠如はいわゆる不完全利用である旨主張するが、被告装置は、本件発明の解決しようとした技術的課題すなわち本件発明の目的の達成のために、また、本件発明の所期の作用効果を奏するために欠くことのできない構成であると発明者自らが明示し強調している右構成要件(二)ないし(四)を欠除しているのであり、この構成の差異によりその作用効果を異にすることは自明であるから、このような被告装置について、均等もしくは実質的に同一ないし不完全利用を論ずる余地はない。原告の右主張は採用に値しない。
(牧野利秋 清水篤 一宮和夫)
別紙
目録
一、図面の簡単な説明
第一図は軟弱地盤改良装置の全体構成図、第二図はロツド下端の回転攪拌部分の拡大図、第三図は同じくロツド下端の拡大断面図である。
二、構成の説明
中空ロツド1'の上部には、中空ロツド1'を回動せしめる駆動装置8'を装設してある。この中空ロツド1'の下方に所定間隔を設けて数段の攪拌翼2'が装設されると共に、該攪拌翼2'の間に数個の噴射孔3'を穿設した噴射用筒体10'を突設形成せしめてある。また、該中空ロツド1'には、その内部に二本の高圧の注入パイプ6'、6'を縦設せしめると共に、該注入パイプ6'、6'と該噴射孔3'とを連通せしめ、各々の高圧注入パイプ6'、6'よりの安定材を噴射孔3'より地盤中に放出せしめる軟弱地盤改良装置である。
〔特許公報〕
特許請求の範囲
1 上方に中空ロツドを回動せしめる駆動装置を設け、外周に所定間隔を設けた数段の起伏噴射翼を起伏自在に装設せしめた軟弱地盤改良装置において、前記起伏噴射翼には外部に各々数個の噴射孔を形成せしめると共に、内部に高圧注入パイプからの安定材を流通せしめる連通孔を形成し、且つ該中空ロツドの下方所定位置に振動体を装設し、噴射した安定材を攪拌混合して該振動体により地盤を固め均一な地盤を構成する事を特徴とした軟弱地盤改良装置。