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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)15345号 判決

一 請求の原因一の事実は当事者間に争いがなく、右争いのない事実と成立に争いのない甲第一号証(本件実用新案公報)によると、本件考案は、原告主張のようなAないしDの各構成要件からなるものであることが認められる。

二 被告が、業として被告装置(一)及び(二)を製造、販売、頒布していること及びその構造が別紙物件目録(一)及び(二)記載のとおりであることは、当事者間に争いがない。

三 そこで、被告装置(一)及び(二)が本件考案の技術的範囲に属するか否かについて判断する。

1 本件考案の構成要件Cの吊り材は、前側支柱と後側支柱の頂部間に架設されているのに対し、被告装置(一)の斜材は、前認定のとおり、上部は、原告が本件考案の後側支柱に該当すると主張する主柱の上部に軸支されているものの、下端部は、使用時においては、足場枠の側部前方に存する足場板のストツパーにより足場枠を受支する構造となつており、被告装置(二)の斜材は、同様に、上部は、主柱の上部に軸支されているものの、下部は、足場枠の側部前面隅部に軸支される構造となつており、いずれも原告が本件考案の前側支柱に該当すると主張する連結材の頂部には架設されていないから、右の点において、被告装置(一)及び(二)は、いずれも本件考案の構成要件Cを充足しない。

2 原告は、本件考案の吊り材は、装置の展開、折り畳みの際に横板及び足場板を前側支柱を介して連動せしめ、かつそれらを水平に保持することにあり、その機能からみれば、取付位置はさほど重要性をもたないとして、被告装置(一)及び(二)の斜材は、本件考案の吊り材の均等物である旨主張する。しかしながら、被告装置(一)及び(二)においては、いずれにおいても、斜材は、使用時の荷重に耐えて足場装置の形態を保持する役割りを有するものであるところ、原告が本件考案の前側支柱に該当すると主張する連結材は、右の役割りに関しては、斜材の動きを足場枠に伝えるという作用をしていないことは明らかであつて、原告の主張自体からも、被告装置(一)及び(二)の斜材は、本件考案の吊り材とはその作用効果を異にする、別異の構成物と解されることになる。更に、原本の存在及び成立に争いのない乙第六及び第七号証によると、原告は、本件実用新案権の登録無効審判(昭和五六年審判第一七八一五号)において、被請求人として第四答弁書を提出し、本件考案が公知のものと異なる点として、前側支柱と後側支柱の長さに差があること、前側支柱の頂部と後側支柱の頂部間に吊り材が設けられていること、足場装置の使用分野が異なることの三点を取り上げ、右の構成により、前側支柱と足場板が下方に転倒するのを防止し、併せて作業位置で足場板が水平に保持され、且つ格納時に牽引部材として作動するという格別の作用効果を有するものであると強調し、更に、本考案の吊り材は、前後支柱の頂部間に架設されているから足場板や前側支柱に大きな荷重がかかつてもこれに耐えるだけの耐久性を備えている。しかも折り畳む際に吊り材を直接引張つて行うことが可能であり、この時にはそれ程大きな力を必要としない。且つ操作性がスムーズでスピードも速いという効果を有していると主張していること、本件実用新案権の登録無効審判の審決取消訴訟(東京高等裁判所昭和五八年(行ケ)第三九号)において、引例との差異を強調するにあたり、「甲案(引例)における吊り材は、棒5と側方棒9´が同一の長さであるために、必然的に横棒6と前方棒3間に斜めに架設されなければならない宿命を持つているから、本件考案における如く作業者が横板と足場板の間を自由に通り抜ける(実際上、よく行われることである。)ことができない。したがつて、吊り材の機能につき本件考案も甲案も格別作用効果の差異はなく、単なる設計上の微差であるとの審決は軽卒のそしりを免れない。」と主張していることが認められ、これらの手続における原告の主張をも参酌すれば、本件考案の吊り材が、前側支柱と後側支柱の各頂部間に架設されていることは、本件考案の必須不可欠の構成要件であつて、吊り材の設置算所は、さほど重要性がないとの原告の前記主張は理由がないものといわざるをえない。

そうすると、被告装置(一)及び(二)は、いずれも本件考案の必須不可欠の構成要件である吊り材を欠き、また、被告装置(一)及び(二)の斜材は、前認定のとおりその基本的な部分において本件考案の吊り材とは作用効果が異なり、到底置換可能ということもできないから、この構成の差異をもつて均等ということはできず、よつて、その余の点につき判断を加えるまでもなく、被告装置(一)及び(二)は、いずれも本件考案の技術的範囲に属さない。

四 以上の次第で、その余の点につき判断を加えるまでもなく、原告の本訴請求は、いずれも失当であるからこれを棄却する。

〔編註〕本件における実用新案権、考案の構成要件、目的および作用効果は左のとおりである。

1 原告は、左記の実用新案権(以下、「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。

考案の名称       折り畳み自在な足場装置

出願          昭和四九年一二月三〇日

出願          公告昭和五四年一月二二日

登録          昭和五四年八月三〇日

登録番号        第一三〇〇八六七号

実用新案登録請求の範囲 別添実用新案公報の該当欄記載のとおり(〔編註〕省略)

2(一) 本件考案の構成要件を分説すれば次のとおりである。

A 足場板の四隅に短い二本の前側支柱と長い後側支柱が回動自在に起立し、

B 相対向する前側支柱と後側支柱間には手摺と補強を兼ねた横板が一体的に回動自在に軸支され、

C 前側支柱と後側支柱の頂部間には吊り材が架設され、

D 更に後側支柱には取付部材が連結されたアルミニウム合金製による折り畳み自在な足場装置

(二) 本件考案の目的及び作用効果は次のとおりである。

本件考案の目的は、ビルデイングやトンネル等における建造・解体・修理・土木工事等の作業の際において、一つの足場装置を一人で取り付け、移動し、取り外しが可能であり、且つ、コンパクトに折り畳むことができる足場装置を提供することである。そのために、アルミニウム合金で軽量に構成され、さらに吊り材を背部より引張り若しくは短縮すれば前側支柱(及び足場板の先端)が上方に引張られ、後側支柱に対して平行四辺形の原理で平行にコンパクトに折り畳まれ、持ち運び時に分解する必要がなく簡単で、且つ格納容積が小さく、さらに後側支柱の取り付け部材により任意の作業位置に取り付け、また取り外しが簡単にできる等作業性を著しく向上させる作用効果を有する。