大判例

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東京地方裁判所 昭和57年(ワ)6035号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一請求原因について

1 請求原因事実中、被告が訴外オーツカ株式会社の東京営業所長であつた昭和五四年一〇月三一日ころ、同訴外会社のために手形行為をなす権限がないのに、本件手形の第一裏書欄に裏書行為をなしたことは、当事者間に争いがなく、甲第一号証の二(本件手形裏面)によれば、右裏書は、被告の主張するように、「オーツカ株式会社東京営業所所長井下雅夫」の記名印と同会社東京営業所所長印を押捺してなされていることが認められる。

2 請求原因事実中、その余の点については、被告は明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

3 ところで、手形の裏書人が法人である場合には、その代表機関が法人のためにすることを明らかにして自己の署名をすることを要するものと解すべきであるから、被告のなした前記認定のような営業所長名義の裏書は、会社の裏書としては不適式なものというべきであるが、このような裏書であつても、他人をして会社の真正な裏書であるとの誤信を生じさせる虞れがあるので、権限なくしてこのような裏書をなすことは違法というべきであり、これにより他人に損害を生じさせた場合は、そのような裏書をなしたものは、その損害を賠償すべき義務があるというべきである。

二抗弁について

そこで抗弁事実について判断するに、被告のなした本件手形の裏書が、前認定のように営業所長名をもつてなされていることは、一見明らかなことであり、原告は手形割引を主要な営業目的の一とする専門業者であつて、しかも本件手形の振出人及び第二裏書人は無資力であるが、第一裏書人である訴外オーツカ株式会社の裏書があるので本件手形を割引いたというのであるから、本件手形を割引くにあたりその裏書の真否について、調査すべきであつたと考えられる。しかるに、<証拠>によると、訴外島田功は、はじめ他の金融機関に本件手形の割引を頼んだが拒絶され、友人の紹介で原告に割引を申しこんだところ、初めての取引であるのに、第一裏書の真否について格別の調査をすることもなく、その場で原告は割引に応じたことが認められる。右事実によれば、原告が本件手形割引にあたり、通常の注意をしていたならば、損害の発生を容易に防止することができたというべきである。右過失を斟酌すると、原告に生じた損害のうち、その三分の一にあたる金二五万二一〇六円を被告に賠償させるのが相当と認められる。 (白石悦穂)

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