東京地方裁判所 昭和57年(ワ)9297号 判決
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【判旨】
三請求原因(三)前段の事実(被告が原告主張の商品を購入し、その処分代金を前記貸金の元利金に充当したこと)については当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、同(三)後段の事実(原告の口座による購入商品代金支払いの事実)が肯認されるというのが相当である。
四そこで、被告の主張についてみるに、利息部分以外について成立につき争いのない前掲乙第一、二号証と特約条項以外の部分の成立につき争いがなく特約部分については前掲木村証人の証言により成立を認むべき乙第三号証及び右木村証人の証言によれば、同主張(一)、(二)の事実(原告名義のカードによる商品の購入と売却処分代金の充当に関する合意及び被告主張の過怠約款の存在)が肯認される。
原告本人は、右乙第三号証(念書)の「買物の額は債務額の倍額とする」旨の特約部分は、原告が右念書に署名捺印したときは、記載されていなかつた旨供述するが、右念書は、その様式、体裁からみて、本文が不動文字で印刷された用紙に右特約条項を記入した後、これを複写したものに原告が署名捺印したものと認められることに徴すると、他に特段の立証のない本件においては、原告本人の右供述はたやすく採用できない。
ところで、右原告名義の本件カードによる商品の購入とその売却処分代金の充当に関する右合意の趣旨は、前掲乙第三号証によつて認められるその約定文言からすると、貸付元利金債権額の倍額の買物をし、その商品を売却処分した金員をもつて右債権の支払いに充当することができるというのであり、右売却処分代金のいかんにかかわらず清算を要しない趣旨であると解されるが、そうだとすると、債務者としては、債務の支払いを怠つたときには、本来、支払うべき借入債務の残存元利金の倍額の債務を負担し、残存債務額や利息金ないし損害金の約定利率いかんによつては、利息制限法所定の制限を超える利息金ないし損害金の支払いを強いられると同様の結果になる一方、債権者としても右制限を超える利息金ないし損害金を取得する可能性が強く、右合意ないしこれに基づく金員の支払いを全て当然に有効なものとするについては疑問があるといわざるをえない。また、債権回収の方法として、本来、第三者によつて使用されることを予定していないと考えられる本件カードのごときカードを使用して、第三者である債権者が他人(債務者)名義で買物をして、これを適宜売却処分し、その売却処分代金を債務の支払いに充当するというその方法自体にも、法律上これを有効なものとするについて問題があると考えられるが、仮に、右のごとき方法で債権の回収をはかること自体は許されるとしても、利息制限法所定の制限を超えた利息なしし損害金の支払いや収受を容認し利息制限法の適用を潜脱するのと同様の結果を生ずるのを看過することは許されないところであるというべきであるから、前記合意に基づく支払いについても、その支払いの結果、利息制限法所定の制限を超えた利息金ないし損害金の支払いがなされたことになるときは、右制限を超えた利息金ないし損害金の支払いは無効である、すなわち右合意に基づく債務の支払いについても利息制限法が適用されると解するのが相当であり、債権者たる被告は、購入商品を売却処分して得た売却処分代金額及びその充当関係を明らかにすべきである。 (上野茂)