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東京地方裁判所 昭和57年(行ウ)119号

原告

富里商事株式会社

右代表者代表取締役

ジョン・エフ・ホーン

右訴訟代理人弁護士

成冨安信

青木俊文

田中等

中山慈夫

中町誠

被告

中央労働委員会

右代表者会長

石川吉右衞門

右指定代理人

川口實

福田俊男

田中貞久

佐藤眞之

参加人

ノースウエスト航空日本支社労働組合

右代表者中央執行委員長

松岡民生

右訴訟代理人弁護士

山本政明

大川隆司

安原幸彦

勝山勝弘

塚原英治

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が昭和五七年六月一六日付をもって発した昭和五五年(不再)第五一号不当労働行為救済申立事件の命令はこれを取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告及び参加人

主文と同旨。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  参加人は、昭和五四年九月一一日千葉県地方労働委員会に対し、原告を被申立人として脱退慫慂等に関する不当労働行為救済の申立をなしたところ(千労委昭和五四年(不)第三号の二)、同委員会は、昭和五五年七月二二日付けで別紙(略)(一)のとおりの救済命令(以下「初審命令」という。)を発した。

原告は、右初審命令を不服として、被告に対し、再審査申立をしたが(中労委昭和五五年(不再)第五一号)、被告は昭和五七年六月一六日付けで、別紙(二)のとおりの命令(以下「本件命令」という。)を発し、右命令書は同年八月六日原告に交付された。

2  しかしながら、本件命令及びその引用する初審命令(以下「本件命令」とのみいう。)は、次のとおり事実認定及び判断を誤ったもので違法であるから、取り消されるべきものである。

(一) 原告の経営する成田インターナショナルホテル(以下「ホテル」という。)の従業員は、以下のとおり参加人組合に加入したとはいえないから、加入したことを前提とする本件命令はこの点についての事実認定を誤ったものである。

(1) 本件命令はホテル従業員が参加人組合に個人加入したことを前提としている。しかしながら、参加人が配布した昭和五四年九月一日付けビラには「組合にホテル支部として加盟した」と記載されているほか、参加人から原告に対してなされた組合結成通知書には「ホテルで働く従業員で組織する労働組合が昭和五四年九月四日結成され、当労組に支部として加盟しました」との記載がある上、当時参加人組合の執行委員長であった浜島斌は右通知書を原告に手交する際「成田インターナショナルの皆さんが組合を作られましてうちの組合に加盟した」と述べており、更に、当時の組合員も参加人組合に直接加入したという意識はなく、むしろホテル内で新しく労働組合を結成したという意識であって、これらによれば、事実は、ホテル従業員のみの労働組合が結成された後に、この組合が参加人組合に加入しその支部となったものである。

(2) しかも、参加人組合への団体加入は、次のとおり参加人の規約に反してなされたもので参加人の支部として適法に組織されたものではない。即ち、

参加人の組合規約第四七条には支部が限定列挙されているから、参加人において支部を新たに組織する場合には、右四七条に列挙された支部を追加挿入することが必要であり、そのために右規約の一部改正が必要である。そして規約第七五条によれば規約の改正は「総会において直接無記名投票により代議員総数の過半数の賛成を得なければならない」とされている。しかるに参加人は右七五条の手続を採っていない。

したがって、ホテル支部の参加人組合への加入は、組合規約に定められた改正手続を経ていないので無効であり、参加人はホテル従業員を適法に代表するものではない。

(3) 次にホテル従業員が結成した組合自体適法な執行機関を持たない不十分な組織体にすぎず、労働組合といえるものではなかった。即ち参加人の組合規約によれば、第五〇条には支部の執行機関として支部委員会を置くこと、第五二条には支部委員会は支部委員を以って構成すること、第五三条には支部委員会は当該支部に属する組合員の中から当該支部組合員の直接無記名投票により選出することが規定されている。しかるにホテル支部役員選出については、全く規約に従った手続が採られていないから、ホテル支部は適法な執行機関を有しないといわざるを得ない。したがって、ホテル支部及び参加人はホテル従業員を適法に代表するものとはいえない。

(二) 本件命令は、原告が職制を指示指導して参加人組合からの脱退工作を計ったと認定しているが、右認定は次のとおり誤りである。

(1) 本件命令は、友野博司総支配人(以下「友野総支配人」という。)が昭和五四年九月四日岡幸一ら管理職に対し、参加人組合からホテル従業員を脱退させるように指示指導をした旨認定しているが、そのような事実はない。即ち友野総支配人は同日午後二時参加人組合委員長浜島斌から組合結成通知を受領したので、岡幸一客室部長(以下「岡部長」という。)、野口四郎料飲部長(以下「野口部長」という。)、吉開楯彦経理部長(以下「吉開部長」という。)、熊谷総務課長(以下「熊谷課長」という。)を招集して、参加人からホテル内に組合が結成された旨の通知のあったことを連絡した。その際、友野総支配人から脱退工作の指示等はなく、単に事実を知らしめたにすぎない。そして、同日午後六時すぎ、友野総支配人、岡、野口、吉開各部長、熊谷課長、須藤経理部長、斉藤調理長がホテル別館(通称アネックス)に集ったが、これは指示により集ったものではなく、偶然集合したにすぎず、その際友野総支配人が「どこら辺に問題があって組合ができたのだ」「君らは管理職としてなっちゃいねえじゃないか」「今後そういうことのないようにみんなを引っ張っていけ」と述べたが、これは野口部長らが部下の日頃の不満を理解し、その解消に努めなかったという怠慢に対してなされたもので今後不満のないようにしっかりやれという趣旨にすぎず、脱退工作とは何の関係もないものである。

また、本件命令は、同月五日夜友野総支配人が野口部長らを銀座東急ホテルに集め、ワークスケジュールを持ち寄って従業員一人一人に組合加入、脱退の状況を点検させ管理職の不手際を重ねて叱責したと認定しているが、そのようなことはない。右会合は組合が結成されて管理職の間にも様々な情報が入り、しかも流言蜚語が飛び交うということで、友野総支配人から直接正しい情報を伝えておくためにもたれたのであり、会合の内容も参加人の組合結成通知書が原告に出され、これに対し原告が回答書を提出した経緯の説明、組合に関する問題は総務を窓口とする旨報告したにすぎず、組合加入、脱退の状況の点検等はしていない。誰が参加人組合に加入しているかという話題は、友野総支配人が中座中、残った管理職の間で雑談の中で出た話にすぎず、ワークスケジュール表も偶々持っている者がいたので取り出して見たにすぎない。したがって、右会合は何ら不当労働行為を構成するものとはいえず、本件命令の右認定は誤りである。

(2) 本件命令は岡部長の押野千恵美らに対する言動をもって脱退工作であると認定しているが、右認定は次のとおり誤りである。即ち、

被告は岡部長が押野千恵美、金子和代、清水芳雄、今野晴美に対して脱退を勧誘するような言動を行ったと認定しているが、岡部長としては、組合が結成されるときは往々にして不満があることが多いので上司として組合加入の有無やどこに不満があるのかを純粋に個人的関心から右押野千恵美らに尋ねたにすぎず、脱退を勧誘するような発言はしていないのであるから、何ら不当労働行為に該当しない。

(3) 本件命令は、山崎英雄が参加人組合員小松三夫らに脱退工作を行ったと認定しているが、次のとおり右認定は誤りである。即ち、

山崎英雄課長(以下「山崎課長」という。)は、昭和五四年九月五日昼前に参加人組合のビラや原告から参加人組合に宛てた回答書の掲示によって、ホテル内に組合が結成されたことを知ったのであり、その直後である同日午後一時四〇分ころ小松三夫に対し脱退工作等ができるはずはないのである。そして右命令は、並木英二、斉藤忠義、伊能志芳、小松三夫らに対し山崎課長がカクテルラウンジで脱退工作を行ったと認定しているが、カクテルラウンジといった多くの従業員のいるような場所で脱退工作を行うことは通常考えられない。また山崎課長が、同月六日午後四時三〇分ころ、小松三夫とカクテルラウンジで話した内容は八月一日に入社し入社後一週間くらいで寮を出てしまった越川博に関する件であり、脱退工作等はしていない。次に右命令は山崎課長が丸山郁子に対してF&B事務所で脱退工作を行ったと認定しているが、山崎課長が丸山郁子に話した内容は、従業員と客とが個人的に親しくなりすぎると誤解されるおそれが多いという私生活についての助言であって脱退工作とは関係なく、山崎課長の行った行為は何ら不当労働行為に該当しない。

(4) 本件命令は野口部長の伊能志芳に対する言動が脱退工作であると認定しているが、右認定は誤りである。即ち、

野口部長は、昭和五四年九月一〇日、ホテル守衛室の前附近で伊能志芳に呼び止められて話をしたが、その内容が仕事上の事であったので近くにあった会議室を利用して話をしたにすぎないのである。またその際の話の内容が伊能志芳の上司であるキャプテンの指示に関する問題であったので、野口部長は伊能志芳に対し事実を確認した上で返答する旨回答し、その間約一〇分位の話であった。そして野口部長は翌日伊能志芳からあった話をキャプテンに確認の上、伊能志芳宅へ電話したもので、内容も前日の返答であった。

したがって、右のような野口部長の言動は脱退を勧誘したとはいえず、被告の認定は誤りである。

(5) 本件命令は山崎課長と野口部長が成田ホリデーインホテルにおいて吉田仲壮に対して脱退工作を行ったと認定しているが、以下のとおり、脱退を勧誘したことはなく、脱退届も吉田仲壮が自らの意思で書いたものであって右命令の認定は誤りである。

山崎課長と吉田仲壮は昭和五四年九月一二日成田ホリデーインホテルにおいて雑談中、吉田仲壮から原告とノースウエスト航空との関係について詳細な質問がなされたが、山崎課長は右質問に解答ができなかったため、上司である野口部長に来てもらい、野口部長から解答してもらったが、それも不十分であったため、結局友野総支配人を呼び出して解答してもらい、吉田仲壮の疑問は解消されたのである。その後吉田仲壮は参加人組合から脱退する旨述べて自ら脱退届を書いたのであって、その間に脱退の勧誘がなされた事実はない。

3  よって、原告は被告の発した本件命令の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否(被告及び参加人)

1  請求原因1の事実は認め、同2の事実は争う。

2  本件命令の理由は、本件命令記載のとおりであり、その認定及び判断に誤りはない。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  (当事者)

弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

1  原告は、ノースウエスト航空会社の乗務員宿舎及び乗換旅客用室の管理業務を主たる目的として、同会社の一〇〇パーセント出資により設置された株式会社であり、千葉県印旛郡富里村七栄六五〇の三五所在のホテルを経営している。

2  参加人組合は、昭和三五年六月結成され、昭和五四年八月当時ノースウエスト航空会社及びその関連会社に働く労働者により組織された労働組合である。

三  (組合加入について)

原告は、ホテル従業員は参加人組合に個人加入したものではなく、ホテル従業員により労働組合が結成された後参加人組合に支部として団体加入したものであり、その加入手続等にも瑕疵があって、結局参加人はホテル従業員を適法に組織する労働組合ではないと主張して本件命令の認定を争うのでこの点について判断するに、(証拠略)によれば、ホテル従業員吉田仲壮は昭和五四年九月一日に、同丸山郁子、同並木英二、同清水芳雄は同月二日に、同押野千恵美、同小松三夫は同月三日にそれぞれ参加人組合に個人として加入したことが認められ、右事実によれば、参加人所属のホテル従業員はいずれも参加人組合に個人として加入したものと推認するを相当とする。

(証拠略)によれば、参加人配布の昭和五四年九月一日付けビラには「組合にホテル支部として加盟した」旨の記載があること、参加人から原告に交付された「組合結成並に役員の通知」と題する書面には「ホテルで働く従業員で組織する労働組合が昭和五四年九月四日結成され、当労組に支部として加盟しました」との記載があること、当時参加人の執行委員長であった浜島斌は右通知書を原告に交付する際「成田インターナショナルの皆さんが組合を作られましてうちの組合に加盟した」と述べたこと、組合員の中には支部委員長佐藤工が組合の最高責任者であるとの認識を有する者がいたことが認められるが、右通知書やビラの記載や浜島斌の発言については、それが参加人組合への個人加入か、あるいは支部としての団体加入かを意識した上での正確な言葉を選択した記載や発言ではないものと推認されること、また組合員中に右の如き認識を有する者がいるとしても、組合活動においては往々にして支部が活動単位になることを考慮すると支部委員長をもって最高責任者と認識しても必ずしも不自然ではないことを考え合わせると、右の如き事実が直ちに前示参加人組合に個人加入したとの認定を左右するものではなく、他にこれを覆すに足りる証拠はない。

したがって、原告のホテル従業員の労働組合が参加入組合に支部として加入したことを前提とする主張はその余について判断するまでもなく理由がなく、この点に関する本件命令の事実認定及び判断に誤りはない。

四  (脱退工作等について)

次に、原告は原告が管理職をして参加人の組合員らに対し脱退を慫慂したりして支配介入を行ったことはないとして、本件命令の事実認定及び判断を争うのでこの点について判断する。

1  (証拠略)を総合すると次の事実が認められる。

(一)  友野総支配人の言動について

友野総支配人は、ホテルの運営全般を掌握している立場にあるが、昭和五四年九月四日、当時の参加人組合の執行委員長浜島斌から参加人組合及び支部連名の「組合結成並に役員の通知」と題する書面を受け取った。そこで、友野総支配人は、同日午後二時ころ、岡部長、野口部長、吉開部長、熊谷課長をホテル本館一階にある自分の事務所に集め、参加人から、ホテル内に労働組合が結成された旨の通知があったことを伝えた。そして同日午後六時すぎころ、友野総支配人は、ホテル別館(通称アネックス)に集っていた岡部長、野口部長、吉開部長、熊谷課長、須藤経理課長、斉藤調理長に対して、組合ができたことについて「どこら辺に問題があって組合ができたのか」と質したところ、岡部長らは「全く分らない」と答えたことから、「君らは管理職としてなっちゃいねえじゃないか」と言って管理職としての部下の掌握に関する不手際を叱責し、「今後そういうことのないようにみんなを引っ張っていけ」と申し渡した。

友野総支配人は、同日夜、東京在住の原告の役員と組合対策を協議した。

同月五日朝原告は右協議に基づき、要旨次のとおりの「通知及び申入書」と題する書面を従業員食堂の壁に張り出すとともに、参加人に交付したりした。

(1) 支部結成は真実であるか否か、また支部役員の選任手続が規約に従って適法になされたか否か回答されたい。

(2) 参加人(支部)の組合規約の提出を求める。

(3) 支部の協定当事者適格(締結権限)に関し、委員長、支部役員らの権限等を明らかにして欲しい。

(4) 支部が労働組合法上の労働組合であるか否かについて回答を求める。

そして、友野総支配人は、同日夜、岡部長、野口部長、吉開部長、熊谷課長、斉藤調理長、亀田三郎フロント課長、山崎課長及びベルキャプテン高田剛を東京銀座の銀座東急ホテルに招集した。その席上友野総支配人はホテル内に労働組合が結成されたこと、また原告はこれに対応して参加人に対して前示の「通知及び申入書」を交付したこと、そして今後は総務課が組合に関する問題の窓口となることを説明するとともに管理職の管理面での不満を述べ、更には、各職場ごとに勤務表に基づいて従業員一人一人の組合加入の有無を点検させた。

なお、従来右のように会議が東京で行われたことはなく、今回が初めてであった。

(二)  岡部長の言動について

(1) 岡部長は、客室部長としてオペレーター、ハウスキーピング、ドライバー等を管理掌握する立場にあるが、昭和五四年九月五日正午ころ、ホテルオペレーター室で、参加人の組合員である押野千恵美に対し、組合加入の有無を確認した後、「どうして組合に入ったのか」「どうしてこういう事態になったのか分らないので聞かせて欲しい」と述べた。そして岡部長は最後に「組合をやめる気はありませんか」と聞いたので、右押野がやめる気はない旨答えると「考え直す気はないんだね」と述べた。

(2) 岡部長は、前同日午後一時ころ、ホテルの二二〇六号室において、参加人の組合員であるハウスキーピングのフロアースーパーバイザー(客室管理係長)である金子和代に対し、組合加入の有無を確認した後、「日頃親しく話をしているのにそういう不平不満が僕の耳に入らなくて心外である」と述べ、更に組合脱退の意思の有無を確認するとともに「スーパーバイザーが組合に入ることは好ましくない。会社側に立って欲しい」「組合活動を続けると会社がどのような態度に出るか分らない」と述べたりした。

その後金子和代は、同月一〇日付で組合脱退届を作成した。

(3) 岡部長は前同日午後二時三〇分ころ、ホテルの二二〇六号室で参加人の組合員であるホテルバスドライバー清水芳雄に対し、組合加入の有無を確認し、「組合に加入したことに相談がなかったのは残念です。今からでも脱退する気はありませんか」と述べた。

(4) 岡部長は前同日午後三時二〇分ころ、ホテルオペレーター室で、参加人の組合員であるチーフオペレーター今野晴美に対し、組合加入の有無、その動機、脱退意思の有無を確認するとともに「スーパーバイザーの組合への加入は会社側につくべき立場の人間の行為として好ましくない」と述べたりした。

(三)  山崎課長の言動について

(1) 山崎英雄は、料飲課長としてレストラン関係を担当していたが、昭和五四年九月五日午後一時四〇分ころ、ホテルレストラン横のカクテルラウンジにおいて、参加人の組合員であるレストランウエイター小松三夫に対し、野口部長とともに組合加入の有無や動機を尋ねるとともに、山崎課長は「小松君の入っている組合は独自の組合でなく、外部のノースの組合に加入している、それが心配だ」「会社は組合のためにごたごたするならば、利用客を他のホテルに回して二年間位ホテルを閉鎖することもできる、また配善会に仕事を請負わせてあなた方の仕事を取り上げることもできる」と述べ、野口部長も「組合に入っていると今までのように自由に仕事を頼めなくなる」と述べ、更に山崎課長が「組合加入を考え直す気はないか」と述べたりした。そして、翌六日午後四時三〇分ころ、山崎課長はカクテルラウンジにおいて、再び右小松に対し、「考えは変ったか」と聞いたりした。これに対し右小松は山崎課長に対し組合で頑張る旨述べ、更に一人一人呼んで工作するのは止めて欲しい旨抗議した。山崎課長はその際「小松君みたいに仕事を一所懸命やるし、伸びる人間が組合関係で活動するのは好ましくない、また将来他のホテルに移るような場合組合活動をしていたことがずっとついて回って不利になる」と述べたりした。右山崎課長と小松三夫との会話は、いずれもカクテルラウンジ内のテーブルで行われた。

(2) 山崎課長は、同日午後三時四〇分ころ、参加人の組合員であるホテルレストランウエイター並木英二をカクテルラウンジに呼び、組合加入の有無を確認した後「どうして入ったのか、一言位相談があっても良かったんじゃないか、まあ相談したら組合のことが分ってしまって言えなかったんだろうが、入った理由を言ってみろ」などと述べた。右並木が原告が赤字の理由を知りたい旨述べると山崎課長は「大分組合に染ったな」と述べたりした。右山崎課長と並木英二との会話は、カクテルラウンジ内のテーブルにおいて行われた。

更に山崎課長は、同月一一日午前九時ころから午前一一時三〇分ころまでの間、アシスタントキャプテンである萩原の家で、呼出しに応じて来た右並木に対し、組合問題について、「これからもやって行くのか、アシスタント一人になってもやって行くつもりか、ノースの組合の浜島や小室らは共産党の運動員なんだぞ、空港警察も彼らをマークしているんだ、これが残された最後のチャンスなんだ、お前を救ってやる最後のチャンスなんだ」などと述べた。右並木は山崎課長に入社時世話になったこともあって山崎課長の言を無視できず、結局参加人組合から脱退することを決意し、山崎課長から見せられた脱退届の見本を参考にして、同月一一日付脱退届を作成し、山崎課長に手渡した。

(3) 山崎課長は、同月六日午後四時ころ、カクテルラウンジにおいて、参加人の組合員であるホテルレストランウエイター斉藤忠義に対し、組合加入が自分の意思に基づくものであったことを確認した上、「組合ができると仕事が面白くない、今まで仲良くやってきたのだからこれからも仲良くやって行こうよ、組合がホテル独自のもので正規のホテル労連のものならいいんだが、フライトキッチンは共産党で自分の要求なんか通らないぞ、もう少し自分を大切にした方がいい」と述べたりした。

(4) 山崎課長は、前同日午後六時一〇分ころ、参加人の組合員であるレストランウエイトレス丸山郁子に対し、ホテル一階の料飲部事務所において、「丸ちゃんは組合のことは全く知らないだろう」「あなたはまだ若く未熟で社会経験もないんだから、組合に入ると私的なこともできなくなって組織の大きな力に負けてしまうよ」「世間にはもっと大変なところがあって仕事もきつい、そういう中で組合も作らないで耐えている人もいるんだからそういうことも考えてみなさい」「その組合もホテル独自のものであればいいけれども外部のノースの組合であるので、利用されてしまうだけだ、ノースのフライトキッチンは共産党だ」「レストランの女の子はすぐやめてしまう、だからあなたも組合に入っても中途半端に終ってしまう、組合というのは責任のあるところだから中途半端なままでは結局やって行けない、組織の中では責任があるのだから、どっちみちすぐやめるのならそんなことやらなくてもよい」「ぼくも一応会社の組織の中にあるのだから、ぼくの立場も分ってほしい」と述べた。

(5) 山崎課長は、同月八日午後四時ころ、参加人の組合員である伊能志芳に対し、カクテルラウンジ内において、組合加入の有無を確認の上、「どうしてホテル独自の組合を作らないのだ」と述べた。そして伊能にどのような不満があったのか尋ねた後、「今まで気付かずにいてすまなかった、しかし、もう一度会社に賭けてみないか」と述べたが、伊能が組合活動を継続する旨伝えると山崎課長は「これからは対立の立場になってしまうのだね」と述べた。

(四)  野口部長の言動について

(1) 野口部長は料飲部長としてレストランと調理場を管理する立場にあるが、昭和五四年九月一〇日午後五時ころ、ホテル会議室において、伊能志芳に対し、「組合に入っているということを聞いて残念に思う」と述べ、更に翌一一日午後四時三〇分ころ、伊能志芳方に電話をして佐原の駅前で会いたい旨伝えたが、同人がこれを断ったところ「とにかくノースウエストの組合はアカで空港警察にリストアップされているような人達ばかりと聞いている、そんな危険な中に預っている部下の者が入って行くのを見過すことはできない、早く抜けて欲しい」と述べた。しかし伊能が参加人組合から脱退する意思のないことを伝えると、野口部長は「それ程までに固っているとは思わなかった、これからは今までの様な信頼関係は成り立たないのだね」と述べた。

(五)  吉田仲壮に対する言動について

参加人の組合員であるホテルレストランウエイター吉田仲壮は、昭和五四年九月一二日、アルバイトの打合せのため成田ホリデイインホテルに赴き、山崎課長とともに打合せを行ったが、打合せ終了後の同日午後四時ころ山崎課長から少し話があるから待つように言われ、遅れて同ホテルに来た野口部長とともに、同ホテル二階の客室に入り、三人で話をすることになった。そこで野口部長は「何でもいいから言いたいことがあれば言ってくれ」と述べたので、吉田は「組合に入っている人間は思うところあって信念を持ってやっているのだから、ただ見守って好きなようにやらせてくれ、自分もこの組合で勉強したい」と答えたところ、山崎課長は「そんな公に認められていない組合に入ってどうする、やめてしまえ」と述べた。その後吉田は、原告とノースウエスト航空会社との関係等につき野口部長及び山崎課長に質問したが、両名は十分に答えられなかったことから、友野総支配人をその場に呼び出し、友野総支配人が吉田の質問に対し説明を行った。そして友野総支配人が帰った同日午後八時すぎ、野口部長は吉田に対し、「とにかく一緒にもう一度やり直そう、僕らは何しに来たか分らないのでとにかくこれを書いてくれ」と言って所持していたカバンの中から脱退届の見本、用紙、万年筆を出し、吉田は見本を見ながら脱退届を作成し、野口部長に手渡した。

以上の事実を認めることができ、(証拠判断略)、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

2  以上の事実を基礎に検討する。

(一)  まず友野総支配人の言動について検討するに、原告は友野総支配人は管理職を指示指導して支配介入を行ったことなどないと主張して、本件命令の事実認定及び判断を争うのでこの点について判断するに、前認定によれば、友野総支配人は昭和五四年九月四日夜アネックスにおいて、集っていた管理職を叱責しているが、その言動内容からしてそれはホテル内に労働組合が結成されてしまったことに対する不満から出たものと推認されること、同月五日「通知及び申入書」と題する書面が従業員食堂前に掲示され、あるいは参加人に手渡されているが、右書面の内容自体参加人のホテル内での権限等にあえて疑問を投げかけるものである上、原告はこれを参加人に手渡すだけではなく、全従業員の眼に触れるように従業員食堂前に貼り出して参加人に対する疑問を公にしていること、そして岡部長ら管理職の脱退慫慂等が後記のとおり同日から行われていること、同日夜にはわざわざ東京に場所を設け管理職らは従業員の組合加入の有無を席上検討していること等の一連の言動を総合すると友野総支配人が単に管理職の管理の不十分さを指摘し、叱責したものではなく、参加人組合を嫌悪し、そのため管理職に参加人組合からの脱退を慫慂し、又は脱退させることを指示指導したものと推認することができる。

したがって、友野総支配人の言動をもって参加人に対する支配介入であると認定判断した本件命令は正当であって、原告の主張するような認定判断の誤りはないものというべきである。

(二)  次に岡部長の言動について検討するに、原告は岡部長は個人的意図から組合加入の有無等を尋ねたにすぎず、何ら不当労働行為に該当しないと主張して、本件命令の事実認定及び判断を争うのでこの点について判断するに、岡部長の言動は前認定のとおり、いずれも部下である押野千恵美ら組合員に対して、組合加入の有無、動機、脱退する意思の有無、あるいは組合に加入していることによる不利益取扱いの暗示を行っているもので、その言動内容からして、また右に先立つ昭和五四年九月四日には友野総支配人から厳しく組合が結成されてしまったことについての管理職としての叱責を受けたことなどを考慮すると、岡部長の言動が全く個人的なものということはできず、むしろ友野総支配人の意を受けて行った言動と解されるのであって、岡部長の言動をもって参加人組合に対する支配介入と認定した本件命令の事実認定及び判断は正当であり、原告主張のような誤りはないものというべきである。

(三)  次いで山崎課長の言動について検討するに、原告は山崎課長は昭和五四年九月五日昼前に参加人組合の支部がホテル内に結成されたことをはじめて知ったもので、その直後に認定のような脱退工作を行えるものではなく、またカクテルラウンジ内で脱退の話をすることなど通常考えられないと主張して、本件命令の事実認定を争うので、この点について判断するに、前認定のとおり、昭和五四年九月四日に既にホテル内に組合が結成された旨の通知がなされ、山崎課長の上司である野口部長には同日午後二時にはこのことが知らされ、同日夜には同部長らは管理職の不手際を叱責されているのであるから、山崎課長としても特段の事情のない限り、同部長らからある程度の参加人に関する情報を得ていたものと考えるのが通常であり、原告の主張はむしろ不自然なものといえる。またカクテルラウンジ内における山崎課長の言動は、多くはテーブルに座っての話であってある程度の秘密は保持しうるものと考えられ、しかも話をするに費した時間も長いものではなかったものと推認されることからすれば、原告主張の如き不自然さはなく、いずれも原告の主張は理由がない。

したがって、山崎課長の言動をもって支配介入であると認定、判断した本件命令の認定及び判断は、前認定事実に照らし、何ら原告主張のような違法はないものというべきである。

(四)  更に、野口部長の言動について検討するに、野口部長の言動は前認定のとおりであって、その内容からして、明らかに参加人組合からの脱退を慫慂したものと認められるのであって、右言動をもって参加人組合に対する支配介入と判断した本件命令の認定及び判断に原告主張のような違法はないものというべきである。

(五)  最後に、吉田仲壮に対する言動について検討する。

原告は吉田仲壮が自らの意思で脱退届を出したのであって、山崎課長や野口部長の言動とは関係なく、また山崎課長らも脱退するようにという発言はしていないと主張して、本件命令の事実認定及び判断を争うので、判断するに、山崎課長らが吉田仲壮に参加人組合から脱退するように述べ、あるいは脱退届を書くよう促したことは前認定のとおりであり、このような脱退届を書くに至った経緯に、野口部長が脱退届の見本を示していること等を合せ考えると、山崎課長らが吉田仲壮に対し参加人組合からの脱退を慫慂し、脱退させたものと認められるのであって、この点に関する原告の主張は理由がなく、本件命令の事実認定及び判断に違法はないものというべきである。

(六)  以上のとおり、原告は友野総支配人の指示指導の下に、その意を受けて管理職が参加人の組合員に対し参加人組合からの脱退を慫慂し、又は組合員を脱退させたものと認めることができ、これは原告の参加人組合に対する労働組合法七条三号にいう支配介入に該当する不当労働行為というべく、この点に関する原告の主張はいずれも理由がない。

3  よって、原告の請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用(参加によって生じた費用を含む)の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邊昭 裁判官 遠山廣直 裁判官近藤壽邦は転補のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 渡邊昭)

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