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東京地方裁判所 昭和58年(行ウ)53号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【事実】

「一 請求の原因

1 本件出願の経過

(一) 原告は、昭和四七年四月一七日、除草組成物に関する発明を内容とする昭和四七年特許願第三八五六七号の特許出願(以下「本件出願」という。)をした。

(二) 原告は、昭和五四年一〇月一三日、本件出願について出願審査の請求(以下「本件出願審査請求」という。)をしたところ、被告は、同年一二月一〇日付けで本件出願審査請求を期間経過後の差出として不受理処分(以下「本件不受理処分」という。)に付し、その通知は同月一九日原告に送達された。

(三) 原告は、被告に対し、昭和五五年二月一五日付けで本件不受理処分につき行政不服審査法による異議申立てをしたところ、被告は、昭和五七年一二月七日付けで右申立てを却下する旨の決定をし、その決定書謄本は同月八日原告に送達された。

2 本件不受理処分は、以下に述べるとおり、違法であつて、取り消されるべきものである。

(一) 特許法に規定する期間については、期間の徒過により将来発生すべき権利又は既に発生した特許権の喪失という、特許出願人又は特許権者に致命的な損失を与える場合には、民事訴訟法第一五九条の規定が適用されると解すべきところ、本件の出願審査請求期間の不遵守は将来発生すべき権利の喪失に至るものであるから、同規定が適用されるべきである。

(二) そして、本件においては、次のような事情があるところ、このような事情は、民事訴訟法第一五九条の規定にいう、原告の「責ニ帰スヘカラサル事由」に該当する。

(1) 原告は、昭和四七年三月八日付けで、当時、東京都千代田区内に特許事務所を有していた弁理士富田一及び同富田修自に対し、本件出願の依頼をし、同弁理士らは、その依頼に基づき、原告の代理人として、前記のとおり本件出願をした。

(2) その後原告は、右弁理士富田らに対し、昭和五二年四月一四日付けの書簡で、本件出願について出願審査請求期間満了日若しくはその直前に出願審査の請求をすべき旨を指示し、弁理士富田一はこれを了承した。

(3) ところが弁理士富田らは、昭和五三年当時、原告から多数の出願依頼事件を受任しており、しかもそのうちのいくつかの出願については出願審査の請求を放棄する旨の指示を受けていたことから、本件出願についてもその出願審査の請求の意思を再度確認すべく、意思確認の書簡を昭和五三年一一月一四日付けで原告に送付したが、この書簡は、原告の受領するところとならなかつた。

(4) その後原告は、弁理士富田一に対し、昭和五四年八月三一日付けで、前記(2)の指示に基づく出願審査の請求の日付けを照会したところ、同弁理士から、同年九月六日、前記(3)の書簡に対する原告からの応答がなかつたため、出願審査の請求の手続を取らなかつた旨の回答を受けた。

(5) 前記(2)の指示により出願審査請求期間満了前に本件出願につき出願審査の請求が行われたものと信じていた原告は、右回答に驚き、直ちに、出願審査の請求の手続に着手し、弁理士桑原英明を代理人として、昭和五四年一〇月一三日付けで本件出願審査請求をした。

(三) 右のとおり、原告は、民事訴訟法第一五九条に規定される、原告の「責ニ帰スヘカラサル事由」の止んだ後直ちに本件出願審査請求を行つたものであり、本件出願審査請求は適法であつて、被告はこれを受理すべきである。」

【判旨】

一請求の原因1の本件出願の経過に関する事実は当事者間に争いがない。

右事実によれば、本件出願は昭和四七年四月一七日になされたこと、及び右出願の日から七年以内に出願審査の請求がなかつたことが明らかであるから、特許法第四八条の三第四項の規定により本件出願は取り下げたものとみなされる。

したがつて、本件出願について提出された本件出願審査請求に対する本件不受理処分の取消しを求める原告の本件訴えは、そのもととなる本件出願がすでに取り下げられて存しない以上、訴えの利益を欠くものといわざるを得ない。

二原告は、将来発生すべき権利の喪失という特許出願人にとつて致命的な結果を招来する出願審査請求期間の不遵守の場合には、民事訴訟法第一五九条の規定が適用されるべき旨主張する。

しかしながら、民事訴訟法第一五九条は、訴訟行為に関する不変期間を遵守することができなかつた場合に関する規定であり、通常、不変期間が主として裁判に対する不服申立期間として、その期間の不遵守が裁判の確定というような重大かつ終局的な効果を招来し、しかも、この期間が裁判書送達の日から二週間というように、比較的短い期間として定められているため、当事者の責に帰し得ない不測の事態によりこの期間を遵守することができなかつた場合に酷な結果を生ずるので、衡平の見地から、救済手段として設けられたものと解されるところ、特許法第四八条の三第一項に定める出願審査の請求期間については、特許法上これが不変期間である旨を明記した規定はなく、また、この請求期間は特許出願の日から七年であり、期間としてはかなり長く、十分な余裕があるものといえるから、あらためて手続の追完というような救済手段を認めなくても、特許出願人にとつて酷に過ぎるとはいえない。このように、特許法が出願審査の請求期間として七年間という長期間を規定し、その期間の不遵守について規定を設けなかつた以上、右期間の不遵守については、理由の如何を問わず、手続の追完を認めない趣旨と解するのが、特許法の規定の文言及びその立法趣旨に合致するというべきである。

右のとおり、出願審査の請求期間を遵守しなかつた場合について、民事訴訟法第一五九条の規定を適用ないし類推適用する余地はないから、原告の前記主張は失当というほかはない。

(牧野利秋 野崎悦宏 一宮和夫)

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