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東京地方裁判所 昭和59年(ワ)4910号 判決

一 原告が本件実用新案権を有していたこと、被告が被告製品を製造販売していること及び本件明細書の実用新案登録請求の範囲の項の記載が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

二 右当事者間に争いがない本件明細書の実用新案登録請求の範囲の記載並びに成立に争いのない甲第二号証の一及び二(本件公報)によれば、本件考案の構成要件は、次のとおりであることが認められる。

A 艾材料の詰め込まれた空間形成管を使用すること

B その端部において接着剤を介して支持テープに接着すること

C 知熱灸式艾であること

三 そこで、被告製品が本件考案の構成要件Aを充足するか否かについて判断するに、前記本件考案の実用新案登録請求の範囲の記載並びに前掲甲第二号証の一及び二(本件公報)を総合すると、(1)本件考案は、知熱灸式艾に関するものであること、(2)従来、点灸は、医療上しばしば常用され、服用薬にする場合と異なつた効果を挙げてきたが、灸跡が残るという欠点があつたため、その使用が避けられがちであつたこと、(3)本件考案は、右欠点を解消し、かつ、従来の点灸と同様の効果を挙げることを目的として、実用新案登録請求の範囲のとおりの構成を採用し、これにより、所期の目的を達成したものであること、(4)実施例に即して説明すると、本件考案は、つまむ操作に支障のない大きさないしは太さの紙筒等の空間形成管1(番号は、本件公報に記載のものを示す。本件考案につき以下同じ。)にその収容空間より小さい容積の艾材料2を詰め込み、接着剤3を有する支持テープ4に空間形成管1の端面を接着するようにしたものであつて、使用時には、空間形成管1は容易に支持テープ4から剥ぎ取ることができ、また、詰め込んだ艾材料2を適当な棒状具によつて押し出し、艾材料2の着火を良くするとともに、空間を形成し、剥ぎ取られた空間形成管1の端面に幾分残つた接着剤3aによつて皮膚の所望個所に空間形成管1を都合よく付着させることができるものであること、(5)本件考案は、右のような構成を採用したことにより、知熱灸式艾が支持テープに接着されていて取扱いが簡単にでき、その操作が容易であり、換言すると、都合よく剥ぎ取ることができ、都合よく点火することができ、所望個所に付着させ転倒離脱することなくつぼに当てることができるばかりか、灸跡が生じない点灸と同様の効果を挙げることができるという作用効果を奏するものであること、以上の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。右認定の事実によれば、本件考案にいう「艾材料の詰め込まれた空間形成管」とは、つまむ操作に支障のない大きさの紙筒等であり、それには、その収容空間より小さい容積の艾材料が詰め込まれていて、使用時には、詰め込んだ艾材料を適当な棒状具によつて押し出して空間を形成することができるものであつて、その余の構成と相まつて、灸跡の生じない点灸と同様の効果を挙げることができるとともに、前認定のその余の作用効果を奏するものであることが認められる。この点に関して、原告は、本件考案の空間形成管は、その主張の要素を充たすものであればよい旨主張するが、本件考案の技術内容は、前認定のとおりであつて、前掲甲第二号証の一及び二によるも、本件明細書及び願書添付の図面に、本件考案の空間形成管が原告主張の要素を充たすものであればよいことを示すに足りる技術事項の開示があるとは認めることはできず、原告の右主張は、採用することができない。

他方、被告製品を示すものであることについて当事者間に争いのない別紙目録の記載によると、被告製品は、少量の艾材料を易燃性の薄和紙3で紙巻してなる筒状の紙巻艾8をこの紙巻艾8よりやや小径の中心小孔1を有する厚紙台紙2の上面に金属箔7が貼着された円形台座9の上面中心に、少量の糊をもつて中心小孔1を塞ぐように接着立設した構造を有するものであるところ、本件考案の構成要件Aにいう空間形成管は、前認定判断のとおり、つまむ操作に支障のない大きさないし太さの紙筒等であり、それには、収容空間より小さい容積の艾材料が詰め込まれていて、使用時には、詰め込んだ艾材料を適当な棒状具により押し出して空間を形成することができるものであることを意味するのであるから、被告製品は、本件考案の構成要件Aを充足しないものといわざるをえない。この点に関して、原告は、被告製品の円形台座9、紙巻艾8及び糊の構成要素は本件考案の構成要件Aに相当する旨主張するところ、被告製品の右構成要素によると、被告製品も、一定の空間を設けるという点においては本件考案と共通しているが、本件考案は、単に一定の空間を設ける構成であれば、どのようなものも含まれるというものではなく、前認定のような意味において空間を形成することができるものであるところにその技術的思想が存するものであるのに対し、被告製品は、前説示のとおり、本件考案の構成が意味するところの空間を形成することができるものとは認められないから、被告製品の右構成要素が本件考案の構成要件Aに相当するということはできず、したがつて、原告の右主張は、採用の限りでない。また、原告は、被告製品は艾材料を棒状具で押し出すことのできる構成となつていないとしても、使用方法の違いは考案との同一性とは何ら関係のないことである旨主張するが、本件考案の技術内容についての前認定の事実によると、本件考案の「空間形成管」は、使用時に、詰め込んだ艾材料を適当な棒状具によつて押し出して空間を形成することができるものであるというのであつて、これは、空間形成管がどのような部材であるかを意味するものであるから、被告製品がこのような空間形成管の構成を具備しないというのは、使用方法の違いをいうものではなく、したがつて、原告の右主張は、採用することができない。以上によれば、被告製品は、本件考案の構成要件Aを充足しないので、その余の点について判断するまでもなく、本件考案の技術的範囲に属しないものというほかはない。

四 よつて、原告の本訴請求は、その余の争点について検討するまでもなく、いずれも理由がないから、これを棄却することとする。

〔編註その一〕本件考案の実用新案登録出願の願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載は、左のとおりである。

「艾材料の詰め込まれた空間形成管をその端部において接着剤を介して支持テープに接着した知熱灸式艾。」

〔編註その二〕本件に関する目録は左のとおりである。

目録

(一) 説明

少量の艾材料4を易燃性の薄和紙3で紙巻してなる筒状の紙巻艾8を、この紙巻艾8よりやや小径の中心小孔1を有する厚紙台紙2の上面に金属箔7が貼着された円形台座9の上面中心に、少量の糊をもつて中心小孔1を塞ぐように接着立設し、円形台座9の下面には粘着剤5を塗布して粘着剤5の塗布面に円形台座9と同径の離型剤を含有した円形剥離紙6を添着してなる灸具である。

(二) 図面

<省略>

〔編註その三〕本件登録実用新案の明細書添付の図面は左のとおりである。

<省略>

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