東京地方裁判所 昭和59年(ワ)5053号 判決 1991年9月17日
原告(反訴被告) 創研工業株式会社
右代表者代表取締役 渋谷忠三
右訴訟代理人弁護士 大川隆康
同 永友巧
右訴訟復代理人弁護士 板澤幸雄
被告(反訴原告) アデカエンジニアリング株式会社
右代表者代表取締役 日置悟
被告 旭電化工業株式会社
右代表者代表取締役 吉田豊
右両名訴訟代理人弁護士 田中学
主文
一 被告アデカエンジニアリング株式会社は、原告に対し、金三九〇九万九四五六円及びこれに対する昭和五七年八月一三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 原告の被告旭電化工業株式会社に対する請求を棄却する。
三 反訴被告は、反訴原告に対して、金四六〇万二〇〇〇円及び昭和五九年二月一〇日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
四 反訴原告の反訴被告に対するその余の請求を棄却する。
五 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、原告(反訴被告)に生じた費用の五分の二と被告(反訴原告)アデカエンジニアリングに生じた費用を被告(反訴原告)アデカエンジニアリングの負担とし、原告(反訴被告)に生じたその余の費用と被告旭電化に生じた費用を原告(反訴被告)の負担とする。
六 この判決は、原告(反訴被告)勝訴の部分に限り(第一及び五項)、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 本訴
被告らは、原告に対し、連帯して金三九〇九万九四五六円及びこれに対する昭和五七年八月一三日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 反訴
反訴被告は、反訴原告に対し、金五一四万円及びこれに対する昭和五九年二月一〇日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 争いのない事実(本訴、反訴に共通)
1 原告(反訴被告、以下「原告」という。)は、研磨材の製造を目的とする会社、被告アデカエンジニアリング株式会社(反訴被告、以下「被告アデカ」という。)は、機械装置の設計、製作、販売並びに設置工事等を目的とする会社、被告旭電化工業株式会社(以下「被告旭電化」という。)は、曹達工業、塩素利用工業等を営むことを目的とする会社である。
2 原告は浦和市内に研磨材を製造する工場を有していたが、昭和五三年ころ川越市内の工業団地に工場を移転し、同時に生産量の増大、人件費の削減を図るため研磨材製造設備を自動化することを計画し、当時研磨材の原材料の仕入先であった被告旭電化から被告アデカを紹介された。被告旭電化は、長年ソーダ、油脂等の化学工場の建設、操業に携わってきた経験を生かし、化学工業の分野での技術や法的規制等の専門家として、新工場や新設備の設計、製作、設置等を行うことを目的に被告アデカを設立した。原告と被告アデカは、まず昭和五五年三月二一日に請負代金三三〇〇万円で川越工場の建設、製造設備工事を、同年一二月三日に代金一一〇〇万円で研磨材の少量ラインの製造設備工事を、同月一九日に代金二〇〇〇万円で研磨材の大型ラインの製造設備工事を、それぞれ行う旨の請負契約(以下大型ラインについての契約を「本件契約」という。)を締結した。
3 昭和五六年四月までに、被告アデカは原告の川越新工場に右各契約に基づく研磨材の製造設備を据え付け、原告は被告アデカに対し右各請負工事代金全額を支払った。
4 研磨材の大型ラインの製造設備(以下「本件設備」という。)は、大略以下のようなものであった(別紙各図面参照、以下の○番号は別紙各図面上の番号である。)。
(一) 研磨材の原材料である油脂を流動体にするために、油脂溶解タンク(図面外)が設けられており、このタンクの内部にはスチームパイプがコイル状に巻かれている。このタンクに油脂を入れ、スチームの熱で溶解する。溶解した油脂を保温用のコイルが巻かれたパイプを通して攪拌機(図面外)に送り、これを攪拌した後ポンプでホッパーに送る。
(二) ホッパーに入った油脂を充填器に送り、充填器は一定量の油脂をその下に置かれた長方形の金型に注入する。
充填器の駆動部分は別紙図一のとおりである。モーターに接続されたカムが回転すると、それに接続するコロが回転する。カムには凸凹があるので、コロに接続したコロレバーは、カムの凹の部分にコロが入ると下がり、凸の部分に当たると上がり、それに連動したラックが上下運動を繰り返す。この上下運動によって、歯車Aがピニオン軸を回転させ、同じく歯車Bによって横ラックを左右に運動させる。
別紙図二の充填器の歯車は、右の横ラックにかみ合わされていて、充填器のバルブに回転運動を与える。同じ方法による駆動部の運動によって②のピストンが右に引かれると、ホッパー内の油脂をバルブの中に一定量吸引する。バルブは横ラックの動きによって一八〇度回転し充填口が下向きとなる。再び左に押し出されたピストンの圧力によって、中の油脂が充填口から下に噴出し、下に置かれた金型に注入される。
(三) 注入を終わった金型は、⑦の金型送り機で⑧のチェーンに乗せられ、順次冷却用の水槽の方に移動する。別のチェーンで五個の金型を一列に並べ、同時に五本の金属製のスライダーの上に載せる(別紙図三)。スライダーは⑭の金型受の方へ金型の横幅だけ前進し、元の位置に戻る運動を繰り返す。各スライダーの両脇にはピンの付いたパイプがあり、スライダーが前進する際にはピンが横に倒れて金型がスライダーに接しており、スライダーが元の位置に戻る際には上向きになって金型はスライダーから離れている。金型はスライダーが前進する際にはそれと一緒に前進し、そこで上向きになったピンに支えられて止まり、スライダーだけが元の位置に戻る(別紙図四)。こうして金型は水槽内で冷却されながら順次取出し口の方に送られ、中に注入された油脂が固化して製品である研磨材となる。
(四) 取出し口に着いた金型を、⑭の金型受がつかんで回転させて下向きにし、研磨材はその重みで金型から分離する(別紙図五)。分離された研磨材は研磨材受けで受けて、ベルトコンベアーに落として送り出す。一方、空になった金型は、金型送りコンベアーで上昇ステージに送られ、金型が自動スイッチを押してステージを上昇させる。空金型は、の第一プッシャーに押されて下向きになり、上部のステージに載る。そこで、空金型は、の回転アームによって一八〇度回転して上向きになり、の第二プッシャーに押されてチェーンに戻る(別紙図六)。チェーンには両側に爪が付いていて、空金型が隙間なく並べられ充填口の下に送られる。
二 原告の主張
1 本件設備には以下のような瑕疵があった。
(一) 溶解タンクに巻かれたスチームパイプの熱量が不足していたため、当初予定した作業時間内に原材料の油脂が溶解されず、攪拌や充填の作業開始が大幅に遅れた。
また溶解した油脂を攪拌器に送るパイプに巻かれた保温用コイルの保温容量が小さいため、油脂がパイプの中で固形化して詰まった。
さらに、攪拌機には中で油脂が固形化しないようにスチーム(蒸気)パイプが設置されていたが、使用済みの蒸気を回収するパイプが高い位置に設置されているため、蒸気が冷えて水になった時に逃げ場がなく、そのままパイプに留まり、蒸気の流れを止めてしまった。
(二) 充填器のうち、⑥の充填口からは油脂が垂れ、バルブとピストンの隙間等の摺動部からは油脂が漏れたり噴出したりして、歯車や横ラックに付着し固形化した。固形化した油脂は、歯車や横ラックの動きを弱めたり止めたりするため充填器の駆動部分や充填部分の動きが制御できなくなり、金型に一定量の油脂が注入されなくなるほか、油脂がさらに漏れて充填器周辺やチェーンに付着した。漏れた油脂は固形化すると研磨材として働くため各部分を磨耗させた。
以上により、まず金型に一定量の油脂が注入できないため、製品の量や形にムラが生じて出荷することができず、かつ大量の材料ロスが発生した。次に固形化した油脂が各所に付着したまま駆動部分が動き続けるため、コロやコロレバー等が破損した。
(三) (二)で漏れた油脂は金型送りのチェーンにも付着して固形化した。チェーンは目詰まりを起こし、チェーンを動かす歯車を乗り越えたり、高低差が生じたりしたため、金型が傾いて列がバラバラになり、あるいは金型が転倒して油脂が水槽内にこぼれてしまった。
また冷却用水槽内では、スライダーにねじれがあり、さらにはピンの高さが充分調節されていないため金型の列が乱れた。すると、他の金型等に接触して転倒し、原材料が水槽内にこぼれたり、金型が取出し口でつかえたりした。
(四) 取出し口では、金型の列が乱れているため、金型受けが金型をしっかり掴むことができず、金型と研磨材の分離がうまくいかないほか、金型が放り投げられてしまうことさえあった。また、研磨材を分離した後、空金型の姿勢が崩れるため、上昇ステージや第一プッシャーが予定どおり作動しなかった。さらに、空金型を充填口の下まで送るのチェーンは支点が一か所しかなく、軸が簡単に傾いて金型を支える爪がずれてしまう(別紙図七)ため、結局空金型が不完全な姿勢で充填口の下に送られた。すると、油脂がきちんと充填されず、製品の量や形にムラが生じたほか、油脂の漏れが発生した。
2 被告アデカは、昭和五六年四月ころに本件設備の据え付けを終わり、同年六月ころまでは調整期間ということで、被告アデカの担当者である前川らが原告川越工場に出張して試運転を行っていたが、右に述べた瑕疵が次々と明らかになったため、様々な調整や修理を行った。原告は、同年六月ころから本件設備で研磨材の製造を始めたが、右に述べた瑕疵が一向に改善されず正常に稼働させることができなかった。被告アデカでは、同年八月ころまで、前川らが本件設備の修理に来ていたが、同年九月三日以降は放置するようになった。
3 原告は、本件設備の瑕疵により以下のとおり損害を被った。
(一) 本件設備の修理及び改修工事費用 合計一〇八六万四二一〇円
内訳 (1) 修理費用
株式会社日京製作所 四六万九三二〇円
有限会社松崎製作所 三九万四八九〇円
(2) 改修費用
有限会社松崎製作所 一〇〇〇万円
(二) 本件設備の故障により流失した材料に相当する費用 一四七万七七六〇円
(三) 本件設備の故障により生じた人件費その他の経費 一一二万六三一七円
(四) 逸失利益(生産量の低下による損害) 二八〇四万一〇〇〇〇円 合計四一五〇万九二八七円
4 被告旭電化の社員である井上顕二は、本件契約に先立って被告アデカを原告に紹介した際、「アデカの技術は旭電化の技術と一体であり保証できる。」旨述べた。またその際、井上から交付を受けた被告アデカのパンフレットには、同社が被告旭電化の技術と経験を母体として発足した旨の記載があるほか、技術者の数等が被告旭電化と一体で表示されている。したがって、右パンフレットを交付された相手方は、被告アデカの技術は被告旭電化の技術と一体である旨信頼するはずである。以上から、被告旭電化は、原告に対して、本件設備の請負契約について、被告アデカの技術を保証したものである。仮に右技術保証契約が認められないとしても、被告旭電化は、被告アデカが右パンフレットを作成配付し、被告旭電化のブランドと信用を利用して請負工事を受注する一方、相手方も被告旭電化の技術や経験を信頼して被告アデカと契約することを知っていたのであるから、本件設備の請負契約についても、原告との間で被告旭電化の技術担保契約が成立していたというべきである。したがって、被告旭電化は、被告アデカが本件設備に瑕疵があった場合に負担する損害賠償債務についても連帯して責任を負う。
さらに、被告旭電化の従業員井上顕二は、被告アデカを原告に紹介する際、同社が不完全な技術しか有しない会社である旨告げるべき義務があったのにこれを怠り、被告アデカの技術は被告旭電化の技術と一体である旨原告に誤信させて本件設備の請負工事契約を結ばせた不法行為責任があり、被告旭電化は井上の使用者として使用者責任を負う。
5 よって、原告は、被告アデカに対して請負人の担保責任に基づく損害賠償として、被告旭電化に対して保証債務の債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償として、原告が被った損害四一五〇万九二八七円のうち三九〇九万九四五六円とこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和五七年八月一三日から商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
三 被告らの主張
1 本件設備の瑕疵について
(一) 原告の主張1の(一)のうち、保温用コイルについては、据え付け後保温能力を強化し、また攪拌機のスチームパイプについても、パイプの高さを調節し、ドレン抜きを設置した結果、いずれも油脂が固形化することはなくなった。
(二) 原告の主張1の(二)について
被告アデカは、充填器については、研磨材の充填器を作った経験のある株式会社日京製作所(以下「日京製作所」という。)に下請けさせたが、同社は研磨材による磨耗を十分考慮して設計製作した。すなわち、まず特に磨耗が激しいと予測されるピストンやバルブ(②、④、図二)部分には耐磨耗性のあるステンレス鋼を使用した。次に本件設備のうちバルブとピストンの間のように運動を繰り返す部分(摺動部)については、ステンレス鋼の熱による膨張を考慮して適度な間隔を置いた。さらに、ピストン軸封部のパッキン(図二)の材質についても、耐磨耗性及び潤滑性のあるテフロンを含浸させた石綿材を使用した。
そして、研磨材という製品の特質から、本件設備のうちオイルシールや磨耗の激しいバルブについては、研磨材がこびりつかないように毎日清掃するとともに、常時点検して磨耗があれば適宜交換する必要があるので、被告の方でも予備品を用意するとともに、取扱説明書を原告に交付して、清掃や点検交換を充分に行うよう指示した。
ところが、原告は被告の指示に従わず、設備の充分な清掃、点検交換を行わなかった。オイルシールは、一、二か月に一回取り替えるように指示したにもかかわらず、昭和五六年六月から昭和五七年五月までの間にわずか二個しか取り替えられていない。また、原告は、原材料の油脂が十分溶解しないうちに運転したり、充填器にホチキスの針を混入させたりする等の不注意な運転を繰り返した。このように本件設備に故障があったとすれば、原告の設備管理が不十分なために生じたものである。
(三) 被告アデカは、原告から、設計時の打合せの際、本件設備で製造する多数の研磨材のうちSライムとトリポリを代表製品として提供され、右の両製品に合わせて本件設備を設計した。ところが、実際には製品の種類が多く、溶解や固化にかかる時間や温度、粘度等の製品の物性はそれぞれ著しく異なった。例えば、粘度の低いカット系の製品は、当初から本件設備で製造することが予定されていなかったのであり、カット系の製品が生産できないことは本件設備の瑕疵ではない。
(四) 本件設備は、研磨材の自動製造設備としては、我が国で最初に開発されたものであり、設計製作に当たってはいまだ確立された技術がなかった。したがって、仮に本件設備に何らかの問題点があったとしても、それは原告と被告アデカで協力して調整、改良していくべきであって、直ちに本件設備の瑕疵と考えるべきではない。
2 原告の損害(逸失利益)について
昭和五六年七月以降昭和五七年四月までの間に本件設備で生産された研磨材の本数は九〇万四三〇〇本であるところ、右期間の本件設備の稼働日数二〇二日で割ると本件設備の一日当たりの生産本数は四四七七本となり、当初予定された生産量一日当たり四四五〇本を上回っている。したがって、本件設備による生産は当初の予定どおり行われていたのであり、原告に本件設備の生産量低下による損害は生じていない。
三 被告アデカの反訴請求原因
1 被告アデカは、昭和五六年三月以降、本件契約の追加工事及び付属工事を別紙工事一覧表のとおり行ない、いずれも完成させ原告に引き渡したが、その代金合計額は五一四万円である。
2 被告アデカは、原告に対し、昭和五九年二月九日に原告に到達した内容証明郵便で右請負代金合計五一四万円を支払うよう催告した(争いがない。)。
3 よって、被告アデカは、原告に対し、本件追加請負工事契約代金として五一四万円及び弁済期の経過後である昭和五九年二月一〇日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
四 反訴請求についての原告の主張
別紙工事一覧表のうち、番号17、18、22ないし24、34、37、43(以下例えば「表1」というように記載する。)については認める。その他については、本件契約に基づいて行われた工事であって追加工事ではなく、原告に支払義務はない。
五 争点
本訴請求について
1 本件設備の瑕疵の有無
2 原告の損害の有無及びその金額
3 被告旭電化の責任の有無
反訴請求について
4 追加工事の範囲
第二争点に対する判断
一 争点1について
1(一) 本件設備の目的、範囲
(1) 自動化の範囲
研磨材は、大略して①原料である油脂をタンクに投入→②加熱して溶解、攪拌→③一定量を金型に充填→④金型ごと冷却し固化→⑤金型から分離して製品となる、という工程で生産されるが、本件設備は、②ないし⑤について自動化を図ったものである。本件設備の運転に必要な作業人員は三人とされた。
(2) 製品の範囲
被告らは、原告から本件設備で製造する代表品種としてトリポリ、Sライムを提示され、これらが製造できれば他の品種についても本件設備で製造できると指示されたのであり、特にカット系と呼ばれる粘性の小さい種類については、当初本件設備で製造することが予定されていなかった旨主張し、証人前川及び同袴田の各証言にも右主張に沿う部分がある。そして、昭和五五年五月一五日の原告と被告アデカとの打合せでは、本件設備で製造するのは「Sライム、トリポリを主とし、青棒、ノークロム等の固いものは今後の課題とする(本件設備から除外する。)。」とされた。また、昭和五五年五月一九日に、被告アデカで行われた研磨材の冷却固化温度の実測調査は右両品種について行われた。
しかし、昭和五五年七月に被告アデカが作成して原告に示した生産量予定表にカット系の主力製品であるハイランダムが入っていること、昭和五六年一月には被告アデカの注文によりカット系の金型六五〇個が作られていること、被告アデカは原告から、遅くとも本件契約締結前に原告が生産する約一二〇種類の研磨材全部の配合表を渡されたこと、昭和五五年五月には、青棒、ノークロム等の「固い製品」は本件設備で生産しない旨合意され、これらは後に少量ラインで生産されることになったが、粘度の小さいカット系については特に本件設備から除外されていないことが認められ、以上によれば、遅くとも本件契約時(昭和五五年一二月)には、原告と被告アデカとの間でカット系についても本件設備で生産することが合意されていたものと推認できる。
(3) 生産量
製品の種類によって違いはあるが、概ね浦和工場で生産していたときと比べて一・三から二倍とされ、本件設備における研磨材の生産量は、昭和五五年七月四日の原告と被告アデカの協議の際には月約一一万本とされた。
(二) 被告アデカの対応
被告アデカは、本件設備のうち研磨材の充填器部分について、歯磨き粉やマーガリン等を製作した経験を持つ日京製作所に不請けさせて設計製作し、その他に部分については、被告アデカ自身が設計製作した。被告アデカは、昭和五六年初めころから、原告川越工場に本件設備の据え付けを開始し、同年四月ころに一応据え付けを終わったが、本件契約時に、試運転及び設備の調整期間として三か月くらいは予定してほしいと要望して、原告もこれを予承していたので、同年六月ころまでの間、被告アデカの担当者である前川らが、原告川越工場に出張して調整に当たり、原告は同年六月ころから本件設備で研磨材の生産を始めた(前記争いのない事実)。
ところが、遅くとも同年六月ころまでの間に、本件設備に原告の主張1で指摘したような問題点が生じたため、被告アデカは、同年六月一九日、原告の協議して同年七月中旬までに点検改造を行う旨約し、同年八月ころまでは、前川らが出張して点検修理をしていたが、同年九月三日の話し合いを最後に本件設備の点検修理をしなくなった。
2 充填器の漏れについて
(一) 充填器については、運転を始めて約一〇日ないし二週間で充填口から油脂の漏れが発生し、一、二カ月すると摺動部からも油脂が噴出したり漏れたりした。また、漏れはカット系の製品ばかりでなく、ライム系、トリポリ系を製造する際にもあった。
(二) ところで、被告アデカ(日京製作所)は、本件設備の充填器部分を以下のように設計製作したことが認められる。
研磨材が摺動部に全く入り込まないような完全な密閉性(シール性)を追求すると、幾重にもシールを施さなければならない等、構造が複雑になったり、部品の材質が硬く加工しにくくなったりする。そうなると、充填器部分の制作費が嵩むばかりでなく、機械設備の専門家でない原告としては、修理や点検に手間取り、保守管理経費も嵩むことになる。そこで、充填器の構造は簡単で分解や点検のしやすいことを旨とした。具体的には、充填器の油脂が通過する部分には、四か所にオイルシール(Oリング)を配置し、ピストンはパッキンとパッキン押さえで支える構造にし、部品には汎用性のあるステンレス鋼を使用した。
また、本件設備は、研磨材の生産を目的とするので、直接研磨材と接する摺動部や充填口等の部分が、ある程度磨耗するのは避けられないことを前提として、本件設備を運転する際には原告において設備回りの清掃を励行する等、常時充分な保守管理を行う一方、磨耗が激しくなれば一ないし二か月で充填器部分を分解して、被告アデカで用意する予備品と交換し、磨耗した部品は削り直してまた使うことにした。したがって、改造(後記(三)の改造)前の充填器には部品の交換が容易であるという長所がある。
(三) これに対して、昭和五七年四月ころ、原告の依頼に基づき松崎製作所によって改造された充填器は以下のように設計製作されたことが認められる。
すなわち、まず、密閉性(シール)の点については、摺動部のピストン側に三重の、充填口に二重のダストシールを配置し、その間に油を入れて定期的に交換し、油脂が直接機構部に入り込みにくいようにした。ピストン、計量室、ブッシュ等の摺動部にはステンレスに較べて硬く磨耗しにくいダイス鋼を使用した。さらに、ピストンは、ベアリングボールによってスムーズに動かすようにした。
そして、改造後の充填器では、問題になるような油脂の漏れは発生していない。
(四) 被告らは、前記六月一九日の会合の後、七月中旬までに行った点検修理によって、充填器部分の故障箇所はほぼ解消され八月中には問題なく稼働していたと主張する。
たしかに、昭和五六年八月中は充填器部分についてはあまり問題点は指摘されていない。また、八月中は原告川越工場の生産実績も総計約一一万本に達しており、一応順調に生産されたようにも思える。しかし、前川らは、八月三日、四日に、充填器部分についてノズルやオイルシールを交換し、部品を分解して削り直す等の調整を行っており、八月中に順調に生産されたのはこのためであったと考えられる。そして、同年九月には再び充填器部分で「ピストンの戻りが悪い。注油口から研磨材が噴出する。」等の問題点が指摘され、同年一〇月には油脂の漏れ、バルブのかじり等の問題点が発生した。したがって、七月中旬までに被告アデカが行った補修工事によって本件設備の右問題点が解消したとは認められない。
(五) 以上の事実によれば、(原告の保守管理の当否については後述する。)改造前の充填器における油脂の漏れは、前述の密閉性に対する配慮、部品の材質及びバルブの支え等被告アデカ(日京製作所)の充填器の設計製作に瑕疵があったためであると考えざるを得ない(鑑定人樫村)。充填器は本件設備のいわば心臓部であり、原告の主張1の(二)ないし(四)にあるとおり、少量でも油脂が漏れると、金型や金型送りのチェーンに付着して本件設備全体を磨耗させ、また充填量がバラついて規格どおりの製品ができなくなる等、本件設備で研磨材を製造すること自体が困難になるのである。したがって、改造前の充填器には容易に漏れが生じてしまう点でその設計製作に瑕疵があったと認めざるをえない。
3 その他の問題点について
(一) 原告の主張1の(一)の問題点については、昭和五六年七月一二日までに被告アデカが保温用パイプに保温強化の措置を施し、攪拌機のスチームパイプについてパイプの高さを調節するとともにドレン抜きを設置した。しかし、右修繕工事後も原告が前川に対して再び修繕の要請をしたこと、原告が松崎製作所に昭和五七年四月ころこの点についてもほぼ同内容の修繕工事をさせたことから、被告アデカは昭和五六年九月三日までに、溶解タンク、攪拌機で十分な温度管理ができるように調整することができず、この点についても被告アデカの製作、調整が不十分であったと認められる。
(二) 原告の主張1の(三)について
昭和五六年六月一九日の協議の結果、冷却用水槽で金型の列の乱れを防ぐために金型の受台、ガイド、チェーン受けを設置し、金型を支えるピンの高さを調節することになったが、その後も金型の列が冷却水槽内で乱れる事故が発生していること、原告が松崎製作所に依頼して、昭和五七年四月ころガイドプレートを設置したほか金型を載せるステンレス製の板を型から型へ変更し、さらにステンレス板の軸受けを合成樹脂に変更する修繕工事をしていることから、この点についても被告アデカの修繕調整が不十分であったと認められる。
(三) 原告の主張1の(四)について
脱型及び空金型を充填口まで送る部分についても、昭和五六年六月一九日の協議の際、空金型をコンベアー上に安定させるためのストッパーを設置することになったが、その後も金型が転倒したり、製品の離型が不十分であったり、空金型を送るチェーンがずれたりはずれたりする等の事故が多発した。右事故の原因は、脱型部でアームが型をつかんで反転させ、重力によって製品を型から分離し型送りコンベアーの上に型を横置きするという不安定な動作をさせたこと、研磨材の製品ごとの固化にかかる時間、収縮率等が十分計算されていなかったこと、空型送りコンベアーについては二本のチェーンの支持軸が片持ちとなっていたことのためであると考えられ、実際原告が松崎製作所に依頼して行った修繕工事の結果、右問題点は解消された。したがって、この点についても被告アデカの設計製作に瑕疵があり、その後の調整も不十分であったと認められる。
4 被告らは、清掃や部品の交換等、原告の保守管理が不十分なために本件設備の故障が発生した旨主張し、具体的には、充填器に組み込まれているOリングが昭和五六年六月から昭和五七年五月までの間に二個しか取り替えられていないこと、原材料の中にダンボール用のホチキス針が入っていたこと、冷却用水槽に水を入れないまま本件設備を稼働させたことを挙げている。
たしかに、Oリングは一ないし二週間毎に交換することとされていたのに、甲九号証によれば昭和五六年六月一八日から昭和五七年五月一〇日までの間に修理費としてOリングは二個しか請求されていない(甲九)。しかし、甲九は、原告が日京製作所に対して支払った修理費の明細に過ぎず、交換用Oリングがすべて日京製作所に注文されていたとは限らないであろう。そもそも、昭和五六年四月から同年八月までは、被告アデカの担当者である前川自身が原告川越工場に通って本件設備の運転状況を確認していたのであるから、Oリングの交換が必要であればその旨指示できたはずであり、Oリングが右期間に二個しか交換されなかったとは到底考えられない。また、ホチキス針が油脂に混入していたとしても、このことが本件のような恒常的な油脂漏れの原因になるとは思われない。
一方、原告は昭和五六年六月までの間に、自らのアイデアで冷却用水槽内に水を入れずに製品が固化するか実験したことがあり、このため水槽内で型を載せるステンレス製のスライダーが変形してしまい、被告アデカによって取り替えられた。このように、原告の本件設備に対する保守管理が不十分であった可能性を全く否定することはできないが、六月一九日の協議の際に、被告アデカが原告に対して、問題点の対応策として専ら本件設備の構造面での調整、修繕を約束していること、前川らは昭和五六年四月から同年八月まで約五か月間原告川越工場に通って、本件設備の運転状況を確認したり調整修繕したりしているので、保守管理については十分監督できるはずであること等を考えるならば、本件設備の故障の根本的な原因はやはり被告アデカの設計製作にあったと考えざるをえない。
5 さらに、被告らは、本件設備は、研磨材の自動製造設備としては我が国で最初に開発されたものであり、設計製作に当たってはいまだ確立された技術がなく、本件設備の故障箇所は原告と被告アデカで協力して調整、改良していくべきであって、直ちに本件設備の瑕疵と考えるべきではないと主張し、鑑定人清原も、右問題点は改善項目ではあるが、被告アデカの設計の致命的欠陥とはいえないと述べている。
しかし、被告アデカは機械設備を設計製作する技術を有する専門家であり(争いのない事実)、本件設備について(原告の旧浦和工場等も見分して)研磨材の製造工程を見たうえ、前記認定のとおり、原告から研磨材の成分表を提供され、油脂の成分についても知識を有していた。また充填器については経験を有する専門家の日京製作所に下請けをさせた。したがって、例えば充填器の漏れについて言えば、被告アデカとしては、もともと研磨材による部品の磨耗等過酷な使用条件が予想されたのであるから、どの程度の使用期間で充填器から油脂の漏れが発生するか等のテストをしたうえで密閉性、部品の材質、構造等に十分配慮していれば、充填器の漏れが発生しないように設計製作することはそれほど困難であったとは思われない。また、その他の故障箇所についても専門家である被告アデカがテストや調整(昭和五六年四月から同年八月まで約五か月間あった。)を繰り返すことによって問題点を解消することは可能だったと考えられる。
以上から、この点に関する被告の主張は認めることができない。
6 以上認定の事実によれば、本件設備の故障箇所については、被告アデカの設計製作に瑕疵があったというべきである
二 争点2(損害)について
1 修繕改修費(カッコ内に掲げる各書証によって認めることができる。)
(1) 日京製作所 合計四六万九三二〇円
(2) 松崎製作所 合計一〇三九万四八九〇円
2 逸失利益
原告は、昭和五五年四月三〇日付けで川越工場への移転を前提として川越工業団地協同組合宛に研磨材の生産計画表を提出したが、そのうち、「原料輸出」と「バフ・機械その他」を除いた昭和五六年度(昭和五五年一二月から昭和五六年一一月まで)の予定生産量は合計一一七万一一六一本である。右予定生産数量は、この間に川越工場の新設、本件設備による生産の自動化があったこと、昭和五四年度の予定生産量が合計九四万三六七五本、昭和五五年度は同合計一〇七万一六八六本であることを考えても、十分生産可能な量であったと解される。
ところが、実際には前記認定の本件設備の瑕疵のために、昭和五六年四月以降本件設備でトリポリ系及びライム系(カット系を含む)の研磨材を予定どおりには生産できなかったし、さらに右製品を半自動の小型ラインや手動で生産せざるを得なくなったため、青棒系等小型ラインで生産することが予定されていた他の研磨材についても生産量が落ちてしまい、その結果甲二八号証記載のとおりの生産しか挙げることができなかった。
被告らは、昭和五六年六月以降本件設備は予定どおり稼働していたので、原告は生生産量の低下による損害を被っていない旨以下のとおり主張する。すなわち、原告が昭和五六年三月から昭和五七年四月までに生産したトリポリ系及びライム系の製品本数は九〇万四三〇〇本であるが、昭和五六年三月から同年五月までは調整期間で本件設備では研磨材製品が製造できなかったので、右生産本数は昭和五六年六月から昭和五七年四月までのものであるはずである。そして、原告は右期間に本件設備を二〇二日間稼働させているので一日当たり四四七六・七本生産されたことになる。本件設備で生産が予定されたハイランダム、Sライム、Sトリポリの一日当たり平均生産量は四四五〇本である(右の三種題の研磨材の生産予定本数の合計を生産予定日数の合計で割った数字)から、右生産量はこれを上回っている、という。
しかし、昭和五六年三月から五月までのいわゆる調整期間中も本件設備で全く製品ができなかったわけではなく、一部は製品になっていた。したがって、一日当たりの生産量を計算するのであれば、昭和五六年三月から昭和五七年四月まで本件設備が稼働した日数二六七日で割るべきであり、同年五月まで本件設備でいっさい研磨材が製品にならなかったことを前提とする被告らの計算は意味がない(もっとも、昭和五六年三月以降の生産量の中には、本件設備で生産したもののほかに小型ラインや手動で生産したものが相当数入っており、本件設備で生産された研磨材の本数は、実際にはさらに少なくなるはずである。)。
以上から、原告は、本件設備の瑕疵によって、昭和五六年度の前記予定生産量と実際の生産量との差額合計二八〇四万一〇〇〇円の損害を被ったと認められる。
3 本件設備の故障により流失した材料に相当する費用
「大型充填ラインの稼働による研磨材損失」は原告が作成して森政保に見せたものであり、「大型製造ラインによる原料ロス計算表」は、竹内が実際に本件設備を稼働させて漏れた油脂を集めて計量したものである。
なるほど、原告としては、本件設備の稼働によって相当程度油脂が流出することは承知で生産したのであろう。しかし、原告は、注文を捌くために多少の漏れや型の転倒は人手を使って修正しながら研磨材を生産せざる得なかったのであり、本件設備の瑕疵によって生じた油脂の漏れによる損害も被告が賠償すべきである。そして、本件設備の稼働状況、特に充填器からの漏れ、油脂を注入した型の転倒は製品の種類、時期によって差異があるが、右甲九の計量は平均値として概ね妥当であり、損害額は一四七万七七六〇円と認められる。
4 本件設備の故障により生じた人件費その他の経費
原告は、本件設備の故障のために、人手を使って研磨材の生産をしなければならなくなったため、従業員の残業手当て、臨時アルバイトの賃金、従業員の夜食代等の損害を被った旨主張する。
たしかに、本件設備を稼働させるために予定を超える五ないし六人の人員が必要になったり、人手で充填せざるを得なくなったりする等、予定以上の人件費が嵩んだ可能性はある。しかし、昭和五六年三月に原告は浦和工場から川越工場に移転したので移転に伴う業務の増加も相当あったはずであること、原告代表者本人は少量ラインについても充填器に問題があった旨供述していること等から、右人件費その他の経費の増加のうち、いくらが本件設備の故障によって生じたのかははっきりせず、この点については原告の損害を認めるに足りる証拠はない。
5 以上のとおり、損害額の合計は四〇三八万二九七〇円となる。したがって、被告アデカは原告に対して、右損害のうち三九〇九万九四五六円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和五七年八月一三日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
三 争点3について
被告アデカの会社案内のパンフレットには、同社が被告旭電化の技術と経験を母体として発足した旨の記載があるほか、技術者の数等が被告旭電化と一体として表示されている。しかし、右記載は被告アデカの顧客に同社の設立の経緯や特徴を説明するために作成された資料に過ぎず、本件契約に際し、右パンフレットが原告に交付されたとしても、それをもって被告旭電化が被告アデカの技術を保証する旨の意思表示をしたとは認めることはできない。そのほか、技術保証契約が成立したという点についての原告主張の事実も認めるに足りる証拠はない。
また、井上の不法行為の主張については、被告アデカが設計製作した本件設備に結果的には前記認定の瑕疵はあったけれども、かえって被告アデカは、前記認定のとおり機械設備の設計製作について豊富な経験と技術を有する専門家であり、本件契約締結の際、原告に対して、井上が被告アデカは不十分な技術しか有しない会社である旨告知すべき義務があったなどとは到底認められず、原告が主張する井上の右告知義務違反を理由とする不法行為責任がないことは明らかである。
したがって、原告の被告旭電化に対する本訴請求には理由がない。
四 反訴請求について
1 まず、別紙工事一覧表のうち、表17、18、22ないし24、34、37及び43の各工事が追加工事であることに争いがないから、原告は、右各工事代金の支払義務がある(合計七二万八二〇〇円)。
2 争点4について
(一) 本件契約の追加工事として、被告アデカから原告に対して、まず昭和五六年三月一六日、合計九四〇万円の見積りが出され、原告はこれを支払った。次に、昭和五六年五月七日付けでさらに追加工事の見積りが提示されたが、その「単価」欄に見積りの各番号毎に○、□、△の印がある。証人袴田は、この記載について、原告代表者自身が被告アデカから右見積りによる支払請求を受けた際につけたものであり、○は「支払義務を認めたもの」、□は「保留」、△は「既に支払った工事代金に含まれているとして支払義務を否定したもの」である旨述べている。他方原告は、乙一四号証の一のうち頭書の「項」欄の番号を○で囲んだもの(表17、18、22ないし24、34、37及び43)については追加工事として支払義務を認めるが、それ以外は追加工事として認めていない旨主張する。
右見積書に記載されたそれぞれの印には何らかの意味があると考えるべきところ、表18の工事は、「項」欄の番号が○で囲まれており、原告の主張によれば追加工事として支払義務を認めたはずであるのに、原告代表者本人は追加工事と認めなかった旨述べている。したがって、前記の証人袴田の証言を信用すべきであり、表1ないし7、9、15、16、20、21、25、30ないし33、35、36、39ないし41については、本件見積りが提示された当時原告が追加工事として承認していたと認められ、右合計二一二万九四〇〇円を原告は支払う義務がある。
(二) 次に、昭和五六年三月一六日付け追加工事の見積書において、五〇〇リットルのリボンミキサーの追加設備が合意されていたことが認められるところ、表26ないし29の各工事は右追加工事の、表38の工事は、右ミキサーに関する工事の、いずれも付属工事であると推認され、また、表44の焼却炉の設置工事は、乙二〇号証の追加工事見積りで「除外事項」とされたため、改めて乙一四号証の二で請求された追加工事であると推認される。なお、表45の諸雑費も、被告アデカが原告に提出した他の見積りでも認められており、金額も相当であると認められる。したがって、以上の合計一七四万四四〇〇円を原告は支払う義務がある。
被告は、表10ないし14及び42の各工事も追加工事であると主張しているが、これを認めるに足りる証拠はない。
3 右各追加工事は、遅くとも昭和五六年八月ころまでには完成して、原告に引き渡されたことが認められる。
4 したがって、原告は、被告に対して、本件契約の追加工事代金として、右1及び2の合計額四六〇万二〇〇〇円及びこれに対する弁済期の経過後である昭和五九年二月一〇日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。
(裁判長裁判官 大澤巖 裁判官 齊藤啓昭 裁判官土肥章大は転補により署名押印することができない。裁判長裁判官 大澤巖)
<以下省略>