東京地方裁判所 昭和59年(行ウ)44号
原告
株式会社柄谷工務店
右代表者代表取締役
柄谷順一郎
右訴訟代理人弁護士
前原仁幸
被告
中央労働委員会
右代表者会長
石川吉右衞門
右指定代理人
萩澤清彦
同
高田正昭
同
舩橋貞雄
同
榎本重雄
被告補助参加人
全日自労建設一般労働組合
右代表者中央執行委員長
中西五洲
右訴訟代理人弁護士
山下登司夫
同
小野寺利孝
同
上原邦彦
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が中労委昭和五八年(不再)第九号事件について昭和五九年二月一日付けで発した命令を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文と同旨。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 兵庫県地方労働委員会は、補助参加人組合を申立人、原告会社を被申立人とする昭和五六年(不)第一〇号事件について、補助参加人組合が昭和五六年五月一五日付けで申し入れた団体交渉事項のうち、その後実行された就業規則の明示と交付を除くその余の議題に関する交渉に原告会社が応じていないのは不当労働行為であるとして、昭和五八年二月一八日付けで「原告会社は、補助参加人組合から昭和五六年五月一五日付けで申入れのあった池田青茲の解雇撤回、賃上げなど(ただし、申入事項から就業規則の明示と交付を除く。)に関する団体交渉に、誠意をもって応じなければならない。」との命令を発した。
被告は、この命令に対して原告会社が再審査申立てをした昭和五八年(不再)第九号事件について、昭和五九年二月一日付けで、別紙のとおり再審査申立てを棄却するとの命令(以下「本件命令」という。)を発し、同年三月九日その命令書の写しを原告会社に交付した。
2 本件命令は、次のとおり違法、不当である。
(一) 本件命令は、労働者は単一人ないし少数者でもって、その雇用される特定事業の範囲に拘束されないで、適法かつ正当に労働組合が結成できるとする。しかし、本件命令は、その基調において、わが国の労使関係の特色である企業内労働組合というものの必然性を全く理解していない。
労使協同という日本型事業においては、事業に使用される労働者は、当該事業に使用される労働者全員の中の一員としての地位と切り離して、その者単一人ないし少数者の一員としては、もはや賃金生活の保持ができない立場にある。したがって、労働組合法三条にいう労働者とは、当然に、当該事業に使用される労働者全員の中の一員としての自覚を保持し、行為している者をいうのである。この自覚を持たず、単独ないし少数者でする行為は、事業に使用される労働者全員に対して誠意と責任のある態度に欠け、かえって反労働者的であると評価できるから、このような者が労働組合法二条本文に適合する労働組合を組織する主体となる余地はない。
要するに、労働組合法二条本文の団体としての労働組合の結成があるというのは、特定の事業に使用される労働者全員が、相互に他の者の労働力評価の利益主張を理解し、これに協力するという関係にあることにほかならない。
ところが、補助参加人組合は、特定の事業に使用される労働者によって構成される団体ではなく、その範囲を超えた団体であり、原告会社の一般従業員二百六、七十人のうち元従業員池田青茲(以下「池田」という。)を含むわずかに氏名不詳者二〇人程度が加入していると称しているにすぎないものであって、原告会社の事業に使用される労働者全員が同組合を自らの利益を代表する労働組合として評価していないのであるから、補助参加人組合は、原告会社に対する関係では、労働者が主体となって組織する団体ではなく、適法な労働組合とはならない。したがって、同組合の行為に対して原告会社には団体交渉の拒否が成立するとした本件命令は、憲法一二条、一三条、一四条、二七条、労働組合法二条本文、五条一項に違反する。
(二) 本件命令は、原告会社に団体交渉という作為を命じている。しかし、労働組合法七条は、事業主である使用者に対し、原則として行為の禁止を求めているにすぎないから、救済命令の内容もまた行為の禁止が原則でなければならず、作為という行為提供を命じることはできない。したがって、本件命令は、労働組合法七条、ひいては憲法一二条に違反する。
(三) 本件命令は、池田は使用者である原告会社の利益代表者として勤務した者ではなかったと判断している。しかし、池田は、原告会社において、その担当する業務運営の具体的内容を自ら確定できた地位にあった者であり、事業主の立場で事業主の利益のために行為して、事業の業務運営を実施し、組成していた者である。このように、事業主の利益を図ることが事業主から許容され、かつ、評価されていた地位にある者は、労働組合法二条ただし書一号にいう使用者の利益を代表する者である。したがって、池田が加入する補助参加人組合には救済適格がなく、本件命令は違法である。また、このような者の解雇撤回や原職復帰が団体交渉の要求事項として適当でないことは、言うまでもない。
3 なお、本件命令の認定事実に対する認否は、次のとおりである。
(一) 本件命令書理由第1の1について、(1)は認める。(2)は不知。(3)のうち、池田が原告会社の元従業員であって、昭和五六年三月二六日解雇されたことは認める。
(二) 同第1の2について、(1)のうち、昭和五四年八月ころ池田外数人が労働組合結成の名目を藉りて一種の企業内集団活動を発起し、参加を呼び掛けた会合を開いたり、ビラなどを配布した事実は認めるが、これを労働組合の行為としてしたことは否認する。(2)のうち、原告会社が「従業員の皆様へ」と題する文書を配布した事実は認める。(3)は認めるが、理解が不正確である(池田は、就業規則三〇条一号の就労の意思がない者として解雇された。)。(4)のうち、団体交渉の名目を藉りて会合を申し入れた事実は認める。(5)及び(6)は認める。
(三) 同第1の3について、(1)及び(2)は認める(ただし、団体交渉拒否に当たるとの点は争う。)。(3)は認める。(4)は、取下げの理由は不知、その余は認める。
(四) 同第1の4について、職位は事務系、技術系とも部長のみとし、とある部分を除き、その余は認める。
(五) 同第1の5について、(1)及び(2)を認める。
4 よって、原告は、本件命令の取消しを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因第1項の事実は認める。
2 同第2項は争う。本件命令は適法な行政処分であり、処分の理由は別紙命令書に記載のとおりであって、被告の認定した事実及び判断には誤りはない。
第三証拠関係
本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 請求原因第1項の事実については、当事者間に争いがない。
また、本件命令が認定した事実(別紙命令書理由第1)のうち、1(当事者等)については、(1)の事実及び(3)のうち池田が昭和五六年三月二六日に原告会社から解雇されたことは当事者間に争いがなく、(証拠略)によれば、(2)の事実及び(3)のその余の事実のほか、補助参加人組合の組合員で原告会社の従業員であるものは二十数人であることが認められる。3(本件団体交渉拒否について)については、(1)及び(2)のうち、原告会社の対応が団体交渉拒否に当たるとの点並びに(4)の取下げの理由を除き、その余の事実は当事者間に争いがない。
4(会社の人事組織)については、職位は事務系、技術系ともに部長のみとし、とある点を除き、その余の事実は当事者間に争いがなく、右除外した点は、(証拠略)により認められる。そして、5(池田の経歴と担当職務)については、当事者間に争いがない。
二 原告は、原告会社に対する関係では、その従業員だけが団体行動権行使の主体となるのであって、しかも、その者ら全員が一体となって団体行動権を行使するのでなければ団体交渉が成立することはない旨主張する。
しかし、憲法上右のように解すべき根拠はなく、労働組合法も、労働組合の組合員たる労働者についてその範囲を特定の事業に使用される者に限定してはいないし(二条、三条)、団体交渉の権限についても特定の事業の従業員の全員ないし過半数が組合員であることを要求しているものでもない(六条)。したがって、労働組合は、特定の事業の従業員の範囲に拘束されないで組織し得るし、その組合員として特定の事業の従業員が加入しているのであれば、その多寡にかかわらず、労働組合は当該組合員のためにその使用者と団体交渉をする権限を有する。
わが国においてはいわゆる企業内組合が多いからといって、それ以外の態様の労働組合が存在し得ないわけではなく、また、いわゆる少数組合であっても労働組合としての権利の保護が与えられないわけでもない。したがって、本件命令は原告指摘の各法条に違反するものではなく、原告の主張は独自の見解であって、採用できない。
三 原告は、救済命令においては行為の禁止を命じることができるだけであって、作為を命じることはできない旨主張する。
しかし、救済命令制度は、使用者に不当労働行為があった場合に、これによって生じた状態を是正することにより、正常な集団的労使関係秩序を回復させることを目的とするものと解すべきであるから、救済命令の内容は、不当労働行為の種類や態様に応じ、この目的のために必要かつ適切な具体的措置を使用者に命じるものでなければならないのであり、そこには行為の禁止のみならず、作為を命じることも当然に予定されており、このように解しても憲法一二条、労働組合法七条に違背しない。原告の主張は独自の見解であり、採用できない。
四 原告は、池田は使用者たる原告会社の利益代表者であったから、同人が加入している補助参加人組合には救済適格がない旨主張する。
労働組合法二条ただし書一号は、労働組合が労働者の自主的組織でなければならないとする趣旨を確保するために、労働者であってもその者の参加を許すことによって使用者からの自主独立性が損なわれるおそれのある一定の者を、組合員から排除すべきことを求めている規定である。したがって、この利益代表者に当たるか否かは、同号に列挙された「役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者」の概念を考慮に入れつつ、専ら右の観点から、その者の権限ないし職務を当該事業における実情に即して実質的に判断しなければならないのであって、これと異なり、原告の主張するように使用者の側から見て、その者が使用者の利益を図っていたと認められるか否かによって判断すべきものではない。
原告会社の人事組織が別紙命令書理由第1の4記載のとおりであり、池田の原告会社における経歴及び担当職務が同第1の5記載のとおりであることは、前記一のとおりである。そして、(証拠略)によれば、池田は主任主事又は主席主事の資格を有し、毎月一定額の資格給を支給される反面、時間外勤務手当の支給を受けないなど、いわゆる平社員とは異なった待遇を受けていたものの、その職務の内容は、上司である部長又は主幹を補佐するものであったことが認められる。もっとも、右各証拠によれば、池田は、安全衛生に関する職務については、安全衛生管理計画案や労働災害特別補償費査定案の作成、現場パトロールの実施等において主動的な役割を果たしていたことが認められるが、それは自足的な権限に基づいて行ったものではなく、担当者として当然の職務として、あるいは、その経験度に応じて上司からある程度の裁量権を与えられて行っていたにすぎないものと認められるのであって、なお部長又は主幹の指揮命令下にあってその補佐をしていたものであることを妨げるものではない。
したがって、池田は、その参加によって労働組合の使用者からの自主独立性を損なうおそれがあるような地位にあった者とは認められず、利益代表者には当たらない。原告の主張は、前提を欠き失当である。
五 以上のとおり原告の主張はいずれも失当であって、別紙命令書理由第1の3(1)及び(2)の原告会社の対応は団体交渉拒否の不当労働行為であるから、本件命令が原告会社に対して団体交渉に応ずべきことを命じたことに所論の違法はなく、本件命令は正当である。
よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却し、訴訟費用(参加によって生じた費用を含む。)の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九四条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 今井功 裁判官 片山良廣 裁判官 藤山雅行)
別紙 命令書
再審査申立人 株式会社柄谷工務店
代表取締役 柄谷順一郎
再審査被申立人 全日自労建設一般労働組合
中央執行委員長 中西五洲
主文
本件再審査申立てを棄却する。
理由
第1 当委員会の認定した事実
1 当事者等
(1) 再審査申立人株式会社柄谷工務店(以下「会社」という。)は、肩書地(略)に本店を置き、兵庫県内各地及び大阪府などに営業所、出張所を有し、建設工事の請負を主たる業務とする会社であり、その従業員は本件初審結審時約三三〇人である。
(2) 再審査被申立人全日自労建設一般労働組合(以下「組合」という。)は、建設労働者、建設資材労働者、木材労働者、清掃労働者、失対労働者及び一般の中小企業労働者等で構成する労働組合であり、その組合員は本件初審結審時約一〇万人である。
(3)池田青茲(以下「池田」という。)は、昭和五四年八月組合に加入したが、昭和五六年三月二六日、後記2の(3)認定の理由で解雇された。組合は、池田が解雇された数日後、会社従業員らで組織する組合兵庫県本部尼崎支部柄谷分会の存在を明らかにした。そして、同分会は会社従業員に分会ニュースを配布するなどの活動を行った。
2 本件団体交渉拒否に至るまでの労使事情
(1) 昭和五四年八月頃、池田外、数人が中心となって労働組合結成の準備を始め、同年九月初旬には会社従業員約三〇人で労働組合結成準備委員会(以下「準備委員会」という。)を結成した。その後、準備委員会は、昭和五六年三月頃まで数回同委員会への加入要請ビラを配布したり、組合活動についての研究会を行う等の活動をした。
(2) 昭和五六年一月二三日、会社は、準備委員会の上記行動に対応して、「従業員の皆様へ」と題する文書を従業員に配布した。同文書には、会社の責任のある人が中心になり労働組合の結成を呼びかけているが、その呼びかけに共鳴したり、参加しないようお願いする旨記載されていた。また、同年三月二五日、会社は「従業員の皆様へ」と題する上記と同趣旨の文書を従業員に配布した。
(3) 昭和五六年三月二六日、会社は、池田に対し解雇を通知した。同通知書には、池田は会社の管理職であり、労働者の待遇に責任を負う立場にある、その管理職が自ら労働者の待遇に異議を主張することは、会社への背信行為であり、したがって、池田は会社従業員であり続けることは許されないから解雇する、との趣旨が記載されていた。
(4) 昭和五六年四月七日、組合及び全日自労建設一般労働組合兵庫県本部尼崎支部(以下「支部」という。)は、会社に対し、団体交渉の開催日時を同年四月一七日午前一〇時と指定し、<1>池田の解雇撤回、職場復帰、<2>賃上げ三万円以上、<3>月収(平均)一三万円以上、<4>組合活動の保障、<5>不当労働行為の中止、<6>就業規則の明示と交付、<7>社内の民主化等を議題として団体交渉を申し入れた。
(5) 昭和五六年四月一七日、支部副委員長本田公男及び池田らが会社を訪れたところ、会社の久保園管理部長が応対し、その際、同部長はこれは団体交渉ではないと述べ、池田の解雇理由について説明後、「説明書」と題する文書を組合に交付し、団体交渉には応じなかった。同文書には、管理職であった池田の解雇撤回を組合が要求事項とすることは会社が同人を管理職に任用した人事が不当違法であると非難されていることになり、会社として承服できない旨記載されていた。
(6) 昭和五六年四月二一日、池田は、同人の従業員としての地位を仮に定め、同年四月以降毎月金二一万五、三八九円を仮に支払えとの仮処分申請を神戸地方裁判所尼崎支部に行った。同年七月二二日、神戸地方裁判所尼崎支部は同申請を認容する旨決定した。同年七月二三日及び二四日の両日、組合と池田は、会社に対し仮処分決定の履行を要求した。これに対し会社は、賃金については支払い、復職については拒否した。
3 本件団体交渉拒否について
(1) 昭和五六年五月一五日、組合及び支部は、会社に対し、団体交渉の開催日時を同年五月一九日午後一時と指定し、<1>池田の解雇撤回、原職復帰、<2>賃上げ三万円以上、<3>月収(最低)一三万円以上、<4>組合活動の保障、<5>不当労働行為の中止、<6>就業規則の明示と交付、<7>社内の民主化を議題とする団体交渉を申し入れた。これに対し、同年五月一九日、会社は「口上書」と題する文書を支部に交付したのみで、団体交渉には応じなかった。同文書には、会社の元管理職であった者が主導結成した集団は自主的なものとは理解し難く、また、一部少数者のために会社が交渉に応じることは、集団所属を理由に特別の取扱いをしたことになり、労働者の均等待遇の原則に違背することになるから、会社は今後を含めて一切応対できない旨記載されていた。
(2) 組合及び支部は、その後も数回にわたり、会社に対し、上記(1)と同様の議題で団体交渉を申し入れた。これに対し、会社は上記「口上書」と同趣旨の文書を支部に交付したのみで、団体交渉には応じなかった。
(3) 昭和五六年九月一六日、組合は、兵庫県地方労働委員会に対し、同年五月一五日付けで申入れた池田の解雇撤回、原職復帰、賃上げ、就業規則の配布等に関する団体交渉の応諾を求める救済申立てを行った。
(4) 昭和五六年一一月一四日、組合は、会社が就業規則を配布したことから、請求する救済内容のうち「就業規則の配布」について団体交渉を求めた部分を取下げた。
4 会社の人事組織
会社の人事組織としては、昭和四五年一一月二〇日までは、役員、部長、部次長、課長、係長、主任の職制を採用していたが、同月二一日からは従業員資格制度を採用し、数回の変遷後、昭和五四年三月二〇日から、〔職位は事務系、技術系ともに部長のみとし〕資格は、事務系では参事、主幹、主席主事、主任主事、主事、主任、技術系では参事、主幹、主席技師、主任技師、技師、主任とした。
5 池田の経歴と担当職務
(1) 池田の経歴について
池田は、昭和三二年二月二一日会社に入社し、その後、昭和三七年一一月二一日資材部資材課主任、昭和四四年八月二一日資材部資材課係長、昭和四五年一一月二一日資材部機材担当主事、昭和四七年一〇月五日安全管理部主任主事、昭和五四年一〇月一日技術管理室安全衛生管理担当兼廃棄物処理担当主席主事にそれぞれ発令され、昭和五五年一二月二二日から解雇通知を受けた昭和五六年三月二六日までは、管理部開発室主席主事であった。
(2) 池田の担当職務について
イ 池田が安全管理部主任主事及び技術管理室安全衛生管理担当兼廃棄物処理担当主席主事として行った業務は、<1>安全用品の購入案、労働災害特別補償費査定案、安全衛生管理活動基本五ケ年計画案、防じんマスク管理方針案、現場パトロール車の購入案、安全衛生企画委員会開催案、危険予知訓練トレーナー研修会の開催案、作業計画書作成指導通知文書案、引金付工具取扱通知文書案及び労働者災害補償保険取扱通知文書案等の起案、<2>安全衛生活動基本方針計画案及び安全衛生管理費予算案の作成、<3>建設業労働災害防止協会兵庫県支部研究会及び安全指導者会議への出席、<4>経営安全衛生会議に出席し、議事録の作成、<5>一般作業員及び下請作業員に対する労働安全衛生規則に関する事項の講義、<6>各種会議の設営、<7>現場パトロールの実施と注意事項の指摘及び是正報告書の決裁、<8>下請業者の現場パトロール同行と記録の作成、<9>建設工事計画届事前審査報告書の検討、<10>クレーン関係検査依頼書の集中管理、<11>廃棄物処理の現場作業とその事務処理等であった。
ロ 池田が昭和五五年一二月二二日以後、管理部開発室主席主事として行った業務は、<1>栗山駐車場の企画と取締役会への報告及び官庁への提出資料の作成、<2>小松単身者用住宅計画に関する調査、<3>国道緑地帯設置に伴う会社の敷地調査、<4>営業会議への列席等であった。
第2 当委員会の判断
会社は、初審命令が組合の昭和五六年五月一五日付けで申し入れた団体交渉事項のうち、就業規則の明示と交付を除くその余の議題に関する交渉に会社が応じていないのは不当労働行為であると判断したことを不服として、再審査を申し立てているので以下判断する。
1 池田の組合員資格について
会社は、元従業員池田は安全業務運営上の総括的立場で禀議書類始め、その他文書を相当多数自ら作成し、指導的、監督的地位にあった者であり、また、こと安全業務に関しては従業員間でも会社の最高責任者と評価されていたことからみても、池田は、会社の利益代表者としての立場にあった者であり、このような者の加入を許す組合の行為が法的に許容されることは是認できないと主張する。
池田は、前記第1の5の(1)認定のとおり、昭和五六年三月二六日会社から解雇通知を受けた当時、管理部開発室主席主事であったことは明らかであるが、同人が昭和四七年一〇月五日安全管理部に配属後、会社から解雇通知を受けるまで同人が担当した職務内容は、前記第1の5の(2)認定のとおり、いずれの職務も主任主事、主席主事として上司である部長あるいは主幹を補佐するものである。仮に、同人が従業員間で、こと安全業務に関しては、安全担当の責任者と評価されていたとしても、その職務内容は、安全衛生に関連する部分にすぎず、また、管理部開発室における業務にしても、資料の作成、新規業務の敷地調査等にすぎないのであるから、このことをもって、同人が労働組合法第二条ただし書第一号にいう、「雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者」に該当するとみることはできない。また、会社における人事組織中、主任主事、主席主事はいずれも資格にすぎず、職位は部長のみとしているから、結局、主席主事以下の者は、部長あるいは主幹の指揮命令に従い、それを補佐する立場にあった者とみることができる。以上のとおり、池田は、労働組合法第二条ただし書第一号に規定する者とは認められないから、会社の主張は採用できない。
2 本件団体交渉拒否と不当労働行為の成否について
(1) 会社は、初審命令は、いわゆる少数組合に対しても保護が与えられるべきであり、また、少数者の集団の要求事項について団体交渉に応じることは他の従業員の自主性を阻害するものではないと判断しているが、団体行動権の行使は、企業内における従業員の全員、あるいは、少なくとも過半数をもって行われなければならず、本件のように少数の従業員がその他の従業員とは無関係に団体交渉の申し入れ等を行うことは、多数の従業員の地位、利益を全く度外視することになり、会社が企業内の従業員の過半数に達していない者が加入する集団の団体交渉に応じることは、適当ではないと主張する。
しかしながら、労働組合法は、特定企業内の労働者の過半数の加入を労働組合結成の要件としておらず、いわゆる少数組合に対しても労働組合としての権利の保護が与えられるべきことは当然である。また、企業内の一部の従業員が加入する集団の団体交渉に応じることが適当でないとする会社の主張は失当であり、採用できない。
(2) さらに、会社は、本件組合の構成員中には、池田以外に会社に在籍し就労している者はなく、組合が主張するように、仮に会社の従業員中に組合員が存在していたとしても、その氏名等を会社に明らかにしていないのであるから、会社が組合の団体交渉申入れを受ける余地はないとも主張する。
しかしながら、前記第1の1の(2)及び(3)認定のとおり、池田らが組合に加入し、労働組合としての活動を行っていることが認められるから、上記会社の主張は採用できない。
(3) 上記のとおり、会社が組合の要求する団体交渉を拒否する正当な理由がなく、また、前記第1の3認定のとおり、会社が組合の団体交渉申入れに対し、これを拒否していることは明らかであるから、初審命令が組合の本件団体交渉申入れに対し、会社が応じていないことが労働組合法第七条第二号に該当する不当労働行為であるとした判断は相当である。
3 本件不当労働行為の救済について
会社は、初審命令は、会社に対して即時、無条件且つ誠意ある団体交渉を命じているが、その内容は事業主に団体交渉の行為提供を命じたもので、行為の禁止のみを規定する労働組合法第七条各号の範囲を超えた内容の命令主文であるから違法であり、取り消すべきであると主張する。
労働組合法第七条の規定が行為の禁止のみを規定しているから、労働委員会の救済命令も禁止のみを命ずるいわゆる不作為命令に限られるべきであり、作為を命ずることは違法であるとの上記会社主張は独自の見解というべきである。すなわち、救済命令制度は、使用者の不当労働行為により生じた事実上の状態を救済命令によって是正し、正常な労使関係秩序を回復させることを目的としており、その目的のために不作為のみならず、作為も命じうることは、労働組合法第三二条の規定からも明らかであり、作為命令をもって違法とすることはできない。したがって、本件の場合は、会社が組合の団体交渉申入れに応じていないことが不当労働行為と判断しているのであるから、会社に対して団体交渉応諾を命ずることは相当である。よって、作為命令であることを理由に初審命令主文を取り消すべきであるとする会社の主張は採用しがたい。
以上のとおり、本件再審査申立てには理由がない。
よって、労働組合法第二五条及び第二七条並びに労働委員会規則第五五条の規定に基づき主文のとおり命令する。
昭和五九年二月一日
中央労働委員会
会長 平田冨太郎