東京地方裁判所 昭和60年(行ウ)59号 判決 1987年2月04日
原告 宮浦佳紀
被告 国
主文
1 被告は、原告に対し、金九二六万二一二六円を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを五分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 原告が被告の小林郵便局職員の地位を有することを確認する。
2 被告は、原告に対し、金一一四〇万〇一一〇円を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求め、仮に仮執行宣言を付する判決がされる場合には仮執行免脱の宣言を求める。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、昭和四六年四月に被告の郵政省の職員として採用され、昭和五四年四月当時には九州郵政局管内の小林郵便局郵便課に勤務していた者である。
2 九州郵政局長は、小林郵便局管理者等に対する暴行行為等を理由として、昭和五四年四月二八日付けで原告を懲戒免職処分にした。
3 原告は、右懲戒免職処分を不服として人事院に対して審査請求を行つたところ、人事院は、昭和五九年四月六日付けで、原告に対する懲戒免職処分を懲戒停職一年の処分に修正する旨の判定(以下「本件判定」という。)を行つた。
4 ところが、被告は、原告が被告の小林郵便局職員の地位にあることを争い、停職処分の期間が終了した後の昭和五五年四月二九日以降の給与を支払わない。
5 原告が、郵政省の職員であつたとした場合に、昭和五五年四月二九日以降昭和五九年一二月三一日までの間に被告から支給を受けられたはずの給与(期末手当その他の手当を含む。)の額は別表のとおり合計金一一四〇万〇一一〇円となる。
6 よつて、原告は、被告に対して、原告が小林郵便局の職員の地位にあることの確認と未払給与の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
請求原因1ないし5の事実はすべて認める。
三 抗弁
1 原告は、昭和五四年九月三〇日に、同年一〇月一〇日に施行されたえびの市市議会議員選挙に立候補の届出をした。
2 原告に対する懲戒免職処分が本件判定によつて懲戒停職一年間の処分に修正されたことにより、原告は昭和五四年四月二八日付けで懲戒停職一年間の処分を受けたこととなるから、結局原告は、この停職期間中に公職の候補者として届出をしたことになる。従つて、原告は、この届出をしたことにより、公職選挙法(昭和五八年一一月二九日法律第六六号による改正前のもの。以下「公選法」という。)九〇条の規定に基づき、公務員たることを辞したものとみなされたことになる。すなわち、公選法八九条一項及び九〇条の規定は、公務員が在職のまま公職の候補者となることは現に就いている公務員の職責をむなしくするとか、公務員たる地位が選挙に利用されるおそれがあるとか、立候補の乱立を抑制する等の理由に基づくものであるが、このような弊害を個々に判断することが困難であることから、一律に在職のまま候補者となることを禁止し、公務員が立候補の届出をしたときはそのときに公務員を辞職したものとみなすこととしたのであるから、停職中とはいえ公務員であつた原告について同条項が適用されることは明らかである。
また、原告の場合のように、立候補届出の時点では懲戒免職処分について審査請求をしている者についても、未だ確定的に公務員たる身分を喪失したわけではないのであるから、このような身分回復の可能性のある公務員についても前記のような公選法の立法趣旨からして同条項は適用されるべきものということができるし、仮に直接に適用があるとはいえないとしても少なくともその類推適用があるものというべきである。そして、当時の原告の立場からしても、懲戒免職処分についての審査請求の結果、自己の主張が容れられた場合には立候補の届出をすることが公務員としての身分回復の障害となるであろうことは当然に予測することができたはずであつたところ、それにもかかわらず敢えて立候補の途を選択したものであるから、このように解したとしても何ら不合理ではない。
3 仮に、右の2の主張が理由がないとしても、原告は、前記選挙に立候補し当選して公務員たる身分とは全く相容れない議員たる地位に就き、次期の選挙にも引続き当選をし、更に、本件判定が発せられた後においてもなおその地位にとどまつているのであるから、原告が、当選後に議員たる地位に就いたことによつて、少なくともその時点では、確定的に公務員に復帰する意思を放棄したものということができる。これに対して、原告は、公選法一〇三条二項との対比から、原告の場合には公選法八九条一項、九〇条の適用がなく、たかだか本件判定後将来に向かつて公務員と議員のいずれかを選択しなければならないこととなる旨主張するが、そのように解する根拠は全くない。公選法一〇三条二項は、選挙後相当期間を経過し、その間既に立候補者が兼職が禁止されている他の職に就任していることが一般的に予測されるような場合において、更正決定等の偶然の事情によつて事後的に当選人の地位を取得し、これと兼職禁止の職とを兼ねた状態になつたときに、本人の意思を考慮することなく一方的に兼職禁止の職を失わせることとするのは不合理なため特に公職と兼職禁止の職との選択を認めたものであつて、いわば事前に一般的に本人の意思を推測することができない場合についての規定であるということができる。これに対して、本件の場合には、公選法一〇三条二項が予定しているような場合とは異なり、原告は、懲戒免職処分についての審査請求の結果公務員の身分を回復すれば自己の立候補が公務員の身分回復の障害となることは十分に事前に予想することができたものであるから、同条項を類推適用する理由は全くない。その上、仮に原告が主張するような解釈を行う余地があるとしても原告は、本件判定から五日間を経過した後においてもなお議員の地位にとどまつていることから、この時点で市会議員たることを確定的に選択したものということになる。従つて、原告の主張はいずれの点からしても理由がないものというべきである。
四 抗弁に対する認否と原告の法律上の主張
1 原告が被告主張の日にえびの市議会議員選挙に立候補の届出をし、当選したこと、次期の選挙にも当選し、本件判定後も市会議員の職にとどまつていることは認める。
2 公選法九〇条によつて公務員が公職の候補者の届出をすることにより公務員たることを辞したものとみなされるのは、公選法八九条一項によりその届出が公務員の在職中であつた場合に限られるから、立候補当時懲戒免職の処分を受けていた原告については公選法八九条、九〇条の適用はない。すなわち、当時原告は、懲戒免職処分によつて公務員としての身分を失い、公務から排除され、また、兼職禁止、職務専念の義務等を負つていなかつたのであつて、原告が依然として公務員たる地位にあつたとすることは懲戒免職処分の公定力に照らして許されないのであるから、原告がその当時公選法八九条にいう公務員として在職中であつたとはいえない。そして、当時の原告の地位がそのようなものである以上、原告が立候補をしたとしても、公務員の地位を利用した選挙活動を行うとか公務遂行の妨げとなるといつた弊害も生じないのであるから、実質的にも同条項が適用され、又は類推適用される余地はない。なお、被告は、原告が立候補届出当時から本件のような事態を予測し容認していたとして、同条項が原告に適用されることは当然である旨主張するが、実際には本件判定の結果原告の地位がどのようなものとなるのかについては、人事院や郵政省においても判然としていなかつたことからしても到底そのようにはいうことができない。
3 公選法一〇三条二項は当選人の地位と兼職を禁止された職とを本人の意思によらずに事後的に兼ねることになつた場合の規定であつて、この場合には五日以内にそのいずれを選択するかの自由が認められている。本件のような場合についてはその処置を明確に定めた規定は存しないが、事後的に両立し得ない地位を併有するに至つたとの状況は同条の規定する場合と同様であり、本件の場合についてだけ本人の意思を考慮する余地を認めることなく直ちに公務員の地位を失わせるものとする合理的理由はないから、本件の場合にも同条の類推適用を認め、あるいは法のけん欠による合理的解釈として、原告において本件判定後、将来に向かつて公務員と議員とのいずれか一方を選択することができる権利と義務を有するものと解すべきである。
そして、原告においては、本件判定後直ちに公務員たる地位を選択し、郵政省に対して職場復帰についての意思を表明した上被告の見解を求めたところ、被告は一月近くの検討の上で原告の職場復帰を認めない旨回答したので、原告は、やむを得ずえびの市市会議員の職にとどまることとして今日に至つているのであるから、原告が被告の郵便局職員たる地位にあることは明らかである。
理由
一 当事者間に争いのない事実
原告は、昭和四六年四月に郵政省の職員に採用され、昭和五四年四月当時においては九州郵政局管内の小林郵便局に勤務していたところ、同月二八日付けで、九州郵政局長から、同郵便局管理者に対する暴行行為等を理由に懲戒免職処分を受けたこと、原告は、これに対して人事院に審査請求をしたところ、人事院は、昭和五九年四月六日付けで原告に対する処分を懲戒停職一年間と修正する旨の本件判定を行つたこと、原告は、昭和五四年九月三〇日に同年一〇月一〇日に施行されたえびの市市議会議員選挙に立候補の届出をし、当選したこと、原告は次期の選挙にも当選し、本件判定後も市会議員の職にとどまつていること、被告は原告に対して原告が小林郵便局職員の地位にあることを争い、右判定による停職期間満了後の昭和五五年四月二九日以降の給与等の支払をしていないこと、原告が郵便局職員の地位にあるとした場合に右同日以降昭和五九年一二月三一日までの間に原告に支給されるはずであつた給与その他の手当の額は別表のとおり合計一一四〇万〇一一〇円となること、以上の事実は当事者間に争いがない。
二 まず、原告が右のようにえびの市市議会議員選挙に立候補の届出をしたことにより、公選法九〇条の規定に基づき、郵政省の職員(国家公務員)たることを辞したものとみなされるか否かについて検討する。
国家公務員法一〇二条二項は、「職員は、公選による公職の候補者となることができない。」と定め、また、公選法八九条一項本文は、「国又は地方公共団体の公務員は、在職中、公職の候補者となることができない。」と定めて、公務員(同条一項ただし書及び二項に規定する者を除く。以下同じ。)の公職への立候補の制限を規定し、このような制限を担保するための方策として、公選法九〇条において、公選法八九条で立候補が制限されている公務員が公職の候補者として届出等をしたときには、その届出の日に公務員たることを辞したものとみなす旨定めている。国家公務員法及び公選法がこのように公務員の公職への立候補を制限したのは、公務員が立候補を行うことにより当該公務員が現に従事している職務に専念することができなくなることや、公務員としての地位を利用して選挙活動を行うことから生じる弊害を防止し、あわせて選挙の結果のいかんにかかわらず自己の地位を保身し得る余地を残すことが安易な立候補を招来することからこれを抑制すること等に基づくものであり、このような目的の実現を図るために、個々の場合においてその弊害の有無及び程度を個別的に判定することが困難であるところから、一律にこれを禁止して、立候補の届出があつた場合には公務員たることを辞したものとみなすことにしたものと解することができる。そして、このように公務員たることを辞したものとみなされるための要件として法が規定をしているのは、公務員が在職中であること及び公職の候補者として届出をし又は推薦届出をされたことの二点であつて、この場合の「在職中」ということの意義については、法文上も特に何らの留保もない以上、当該公務員が停職や休職中である場合を含むものと解することができる。
そこで、本件についてこれをみると、原告が立候補の届出をした昭和五四年九月一〇日当時においては、原告は人事院に対して審査請求中であるとはいえ、懲戒免職処分を受けて公務員たる地位にはなかつたのであるから、公選法八九条一項、九〇条の要件に該当しないことは明らかである。問題は、その後、本件判定により懲戒免職処分が一年間の懲戒停職処分に修正され、この判定により原告が懲戒免職処分の日である昭和五四年四月二八日にさかのぼつて公務員の地位を回復したため、結果として停職期間中に公職への立候補届出をしたことになるが、これをどのように評価すべきかということである。被告は、この点について、本件判定が遡及効を有しており、原告が当初から懲戒停職とはいえ公務員たる地位にあつたことになるから、当然に右の二要件を満たすことになる旨主張している。なるほど、本件判定により原告が当初から公務員の地位を回復し、免職処分から判定に至る間も原告が法律上完全に公務員としての権利義務を有したことになると解すれば、被告が主張するように解することもできないわけではない。しかし、原処分に対する審査請求の結果発せられた修正の判定に遡及効が認められるのは、当初から判定で定められた内容の処分がされたものと扱われるべきことが行政目的の達成のために必要であるからにすぎず、あらゆる法律関係について常に当然に遡及効があるものと即断することはできない。すなわち、本件判定によつて原告が懲戒免職処分の日にさかのぼつて公務員の地位を回復することになるからといつて、公務員の地位に伴う権利義務やこれに伴う法律的制約が当然に遡及的に復活すると解する必要はなく、例えば職務専念義務のようにその遡及的復活が考え難いものがあることからも明らかなように、各権利義務関係の性質に照らして個別的に判断すべきものである。
そして、これを公職への立候補制限との関係について考えると、修正判定があつたことにより立候補の時点において公選法九〇条が適用又は類推適用されて公務員たることを辞したものと解する見解は、審査請求をしている以上人事院の判定によつて公務員の地位を回復する可能性が存在しているのであるから、その可能性が現実化した場合には、立候補の時点にさかのぼつて公務員たることを辞したものと解されてもやむを得ないとするものであり、一方、これを否定する見解は、公務員の地位を回復するのは人事院の判定の時点であつて、判定の効力が遡及するからといつて、未だ判定がされていない立候補の時点において公務員たることを辞したものと解するのは不合理であるとするものである。文理的には、いずれの説も成立し得るのであり、両説のいずれを採用するのが相当であるかは、懲戒免職処分を受けた後修正判定を受ける前における公務員の地位及び公務員の立候補を制限した国家公務員法及び公選法の規定の趣旨に照らして判断をするほかはない。
まず、公務員の懲戒免職処分は、任命権者が行う行政処分であつて、これに重大かつ明白な瑕疵があつて当然に無効とされる例外的な場合を除いては、権限を有する者により取り消されない限り、何人もその無効を主張することができない、いわゆる公定力を有するのであつて、懲戒免職処分を受けた公務員は、これが取り消されない限り、公務員としての権限を有しないし、逆に公務員としての義務を負わないのである。そうすると、懲戒免職処分を受けた者については、職務専念義務に違反するとか公務員としての地位を利用して選挙活動を行うとかの弊害を生じる余地は全くないということができる。また、その者が処分の当否を争いながら立候補を行うことをも安易な立候補であるとしてこれを抑制すべきものとはいい難いのであつて、その者の立候補が前記のような公選法八九条一項、九〇条の立法趣旨に反するものであるとはいえないであろう。そうすると、この場合についてまでも本件判定の遡及効を形式的に適用して、原告の立候補届出の時点で同条項の適用あるいはその類推適用を認めて原告が公務員を辞したものとみなすのは相当ではなく、被告の主張は理由がないというべきである。
なお、最高裁大法廷昭和四〇年四月二八日判決(民集一九巻三号七二一頁)は、郵政省の職員が免職処分を受けその後市議会議員に立候補して当選したという事実関係において「本件免職処分が取り消されたとしても、上告人は市議会議員に立候補したことにより郵政省の職員たる地位を回復するに由ないこと、まさに、原判決(および第一審判決)説示のとおりである。」と判示している。しかし、最高裁大法廷の右の判示は、右職員について免職処分取消しを求める訴えの利益を否定した原判決に対して、これを認めるべきであると主張する上告理由について、訴えの利益を肯定する判断をする前提としての判示であつて、本件とは事案を異にし、本件の適切な先例とすることはできないと解する。
三 次に、原告が市会議員の選挙に当選したこと又は本件判定後も市会議員の職にとどまつていることをどのように評価すべきかについて検討する。
まず、原告が市会議員の選挙に当選したことにより公務員の職を辞したものとみなされるか否かについては、立候補届出について述べたのと同様の理由でこれを否定すべきである。
続いて、原告が本件判定後も市会議員の職にとどまつていることによる原告の地位への影響について考えると、本件判定が発せられた時点では原告の公務員としての地位と市会議員の地位とが現実にも併存するに至つたことは疑いがなく、このような状態は法律上許されない事態であるから、これをそのまま放置することは許されず、その時点において併存状態を解消する何らかの調整措置が必要となるものというべきである。そこで、次に、このような場合にとるべき措置のいかんについて検討すると、公選法にはこのような場合を直接規律する規定は存在しないので、関連する諸規定の合理的な解釈からこれを探求するほかはない。そして、公職の候補者あるいは当選人としての地位とそのような地位にあることを許さない公務員たる地位の併存が生じた場合の措置についての公選法の定めをみると、公選法はそのような地位の併存に至つた事情として一般的に考え得る事由を想定の上、該当者についての地位を一律にいずれかに規定するもの(この場合には地位の併存が生じるに至つた直近の該当者の意思によることになる。九〇条、九一条、一〇三条一項)と該当者に地位の併存が生じた時点でそのいずれかを選択させることにより解決を図るもの(一〇三条二項、四項)とが存することを指摘することができる。そして、本件の場合には事後的に地位の併存が生じるに至つた公選法一〇三条二項の場合と事情が類似していることから、その規定を類推適用して、原告において本件判定があつたことを知つた後速やかに市会議員の職を辞任しないかぎり、公務員の地位を失うものと解するのが相当である(この場合には判定の効力発生の日に公務員の地位を失うものと解するのが相当である。)。そうすると、原告が本件判定の後もえびの市市会議員の職にあることは当事者間に争いがないから、結局原告は市会議員の職を選択したものというべく、従つて原告は、郵政省の職員たる地位を喪失したものというべきである。なお、この点について原告は、本件判定後公務員たる地位を選択したのに被告が原告の職場復帰を認めないとの態度であるのでやむなく市会議員の職にとどまつている旨主張するが、仮にそのような事情があるとしても、公選法一〇三条二項が五日以内に選択すべきことを定めていることに照らしても長期間地位の併存を認めることはできないものといわざるを得ないから原告の主張は失当であるというほかない。
そうすると、原告は、本件判定により、昭和五四年四月二八日にさかのぼつて公務員の地位を回復し、同日から一年間懲戒停職とされ、その後本件判定の日である昭和五九年四月六日に公務員の地位を失つたということになる。
以上のように解すると、原告は、市会議員当選の日から本件判定の日までの間は、結果的に公務員の地位と市会議員の地位とを併有することになり、これを禁じた法の趣旨に反する結果とならないかとの異論が予想される。しかし、右の地位の併存が生じたのは、懲戒免職処分を不当とした本件判定により公務員の地位を遡及的に回復した結果であり、事後的にみていわば観念的に地位を併有したものとされるにすぎず、現実に地位を併有したものではないから、地位の併存による弊害が生じるおそれはなく、法の趣旨に反するとはいえないと解するのが相当である。
四 むすび
よつて、原告の請求は、一年間の懲戒停職期間が満了した翌日の昭和五五年四月二九日以降本件判定がされた昭和五九年四月六日までの間の給与等の支払を求める限度で理由があり、右期間内に原告に支払われるべきであつた給与等の額は別表中の右期間に対応する金額の合計金九二六万二一二六円となるのでこれを認容し、昭和五九年四月七日以降の給与等の支払を求める請求及び現在において原告が郵政省の職員であることの確認を求める請求は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 今井功 川添利賢 星野隆宏)
別表<省略>