東京地方裁判所 昭和61年(行ウ)50号〔1〕 判決 1986年8月28日
東京都世田谷区深沢一丁目一八番一二号
原告
鈴木輝夫
東京都千代田区霞が関三丁目一番一号
被告
国税庁長官
梅澤節男
主文
1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一原告の申立て及び主張
一 請求の趣旨
1 訴外玉川税務署長の処分及び不作為に関する原告の昭和六〇年四月五日付異議申立て及び同年一一月一六日付け審査請求に対し、被告が決定及び裁決をしないことが違法であることを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求原因
1 原処分及び不作為
(一) 訴外鈴木堅二(以下「訴外堅二」という。)名義で昭和五七年三月一五日に同人の同五六年分、いずれも原告名義で同五八年三月一五日に原告の同五七年分及び同五九年三月一五日に原告の同五八年分の各所得税の確定申告がそれぞれ訴外世田谷税務署長(以下「訴外税務署長」という。)に提出されたが、そのころ、訴外堅二及び原告は盗難にあつた。
(二) 訴外税務署長は、原告の行訴法三七条に基づく申請に対し、「不作為」に及んだ。
2 不服申立てに対する不作為
原告は訴外税務署長による右1(一)の行政処分及び1(二)の不作為に関し、いずれも被告に対して、昭和六〇年四月五日付けで異議申立て並びに同年一一月一六日付けで審査請求をしたが、被告はこれに対し、相当の期間が経過したのになんら決定及び裁決をしない。
3 総括
よつて、原告は被告の右2の不作為が違法であることの確認を求める。
第二当裁判所の判断
およそ行政不服審査法上、異議申立て又は審査請求は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる事実行為(以下「処分」という。)の存在を適法要件とするものであり(同法一条一項、二条一項、四条一項)、また不作為についての不服申立ては「法令に基づく申請」の存在を適法要件とするものである(同法二条二項、七条)。
ところで、原告が請求原因1(一)で主張する各確定申告や盗難の事実はいずれも処分には該当しない。また、行訴法三七条は不作為の違法確認の訴えの原告適格を定めた規定であつて、申請について法令上の根拠を定めたものではなく、他に右根拠につき主張がない。
よつて、本件訴えは不適法であるから却下することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 太田幸夫 裁判官 加藤就一)