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東京地方裁判所 昭和62年(特わ)2148号 判決 1988年2月02日

本店所在地

東京都渋谷区笹塚一丁目五八番七号

有限会社笹塚会館

(右代表者代表取締役 彭鶴年こと 吉田鶴年)

本籍

東京都渋谷区笹塚一丁目五八番

住居

同都同区笹塚一丁目二六番二号

会社員

吉田篤司

昭和二二年一一月二八日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社笹塚会館を罰金一二〇〇万円に、被告人吉田篤司を懲役八月に処する。

被告人吉田篤司に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社笹塚会館は、東京都渋谷区笹塚一丁目五八番七号に本店を置き、パチンコ遊技場の経営を目的とする資本金二〇〇万円の有限会社であり、被告人吉田篤司は、被告会社の実質経営者として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人吉田篤司は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外する方法で所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五七年五月一日から同五八年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得が二八〇六万一九三九円あった(別紙一の(1)修正貸借対象表参照)のにかかわらず、同五八年六月二七日、東京都渋谷区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七八万七一五三円でこれに対する法人税額が二三万六一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五二年押第一四二七号の2)を提出し、そのまま法定の納付期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一〇八二万五六〇〇円と右申告税額との差額一〇五八万九五〇〇円(別紙二の(1)ほ脱額計算書参照)を免れ

第二  昭和五八年五月一日から同五九年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得が八四七六万四五五四円あった(別紙一の(2)修正貸借対照表参照)のにかかわらず、同五九年六月二六日、前記渋谷納税署において、同税務署長に対し、その所得金額が三二八七万三一八九円でこれに対する法人税額が一三一五万九七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五二年押第一四二七号の3)を提出し、そのまま法定の納付期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額三五六二万二五〇〇円と右申告税額との差額二二四六万二八〇〇円(別紙二の(2)ほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  昭和五九年五月一日から同六〇年四月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得が四〇三九万八六五八円あった(別紙一の(3)修正貸借対照表参照)のにかかわらず、同六〇年六月二九日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六八三万〇四九八円でこれに対する法人税額が一九六万三二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五二年押第一四二七号の4)を提出し、そのまま法定の納付期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一六二九万〇〇〇〇円と右申告税額との差額一四三二万六八〇〇円(別紙二の(3)ほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人吉田篤司の

1  当公判廷における供述

2  検察官に対する供述調書四通

一  吉田鶴年、吉田知代(二通)、吉田宜弘、金武禮一の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏作成の左記調査書

1  現金調査書

2  通常郵便貯金調査書

3  定額郵便貯金調査書

4  代表者勘定調査書

5  未納事業税調査書(判示第二、第三の事実につき)

一  渋谷税務署長作成の証明書

一  東京法務局渋谷出張所登記官山田三男作成の商業登記簿謄本

一  押収してある法人税確定申告書一袋(昭和六二年押第一四二七号の1)

判示第一の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第二の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)

判示第三の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の4)

(法令の適用)

被告会社の判示各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、情状によりそれぞれ同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額の範囲内において被告会社を罰金一二〇〇万円に処し、被告人吉田篤司の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人吉田篤司を懲役八月に処し、後記情状により同法二五条一条を適用して、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、パチンコ遊技場の経営を行う被告会社において、その実質経営者である被告人吉田篤司(以下被告人と言う)が、被告会社の業務に関し、売上金の一部を除外し、これらを仮名の郵便貯金・定額郵便貯金にするなどしてその所得を秘匿し、被告会社の三事業年度分合計四七三七万円余の法人税を免れたという事案であって、そのほ脱税額は小額ではなく、税ほ脱率も三事業年度平均で七五パーセントをこえる高率であり、その犯行の動機は、被告人が、遊技客に人気のあるいわゆるフィーバー機の導入により被告会社の収益が増大したことから、店舗及び被告人ら兄弟が店を構えられるようなビルの建設を企画し、その資金を蓄えようと考えたからというもので、被告人ら家族の長年の夢をかなえたいとの心情は理解し得ないではないが、結局のところ、それは私的な利益追求に向けられた行為であって、これをことさら被告人及び被告会社のために酌むべき事情とすることは許されず、その犯行態様も計画的かつ大胆であって、犯情は芳しくなく、この種事案の罪質をも併せ考えると、被告人及び被告会社の刑責は重大である。

しかしながら、被告人は、本件が税務当局に発覚した後は、その犯行の重大性を悟り、税務調査に協力して事案の解明に努めたこと、本件起訴にかかる被告会社の三事業年度分の法人税本税・重加算税・延滞税や地方税の本税・不納付加算税・延滞税の全てを完納したこと、被告会社においては、コンピューターを導入して売上金等の経理処理を改善するなどし、再び過ちを犯さない旨誓っていること、その他被告人の経歴、家庭の事情等被告人及び被告会社のために有利な事情も認められる。

以上のような本件犯行の動機、態様、結果、罪質、被告会社及び被告人の反省状況、税の納付状況、被告人の身上等、諸般の情状を総合勘案し、被告会社及び被告人に対し、主文掲記の各刑を量定し、被告人吉田篤司に対しては、今回に限り刑の執行を猶予し、社会内で更生させるのが相当であると認められる。

(求刑 被告会社につき罰金一五〇〇万円、被告人吉田篤司につき懲役八月)

よって、主文のとおり判決する。

検察官井上經敏、弁護人山下俊之各出席

(裁判官 中野久利)

別紙1の(1) 修正貸借対照表

昭和58年4月30日現在

有限会社 笹塚会館 No.1

<省略>

別紙1の(2) 修正貸借対照表

昭和59年4月30日現在

有限会社 笹塚会館 No.2

<省略>

別紙1の(3) 修正貸借対照表

昭和60年4月30日現在

有限会社 笹塚会館 No.3

<省略>

別紙2の(1)

ほ脱税額計算書

有限会社 笹塚会館

自 昭和57年5月1日

至 昭和58年4月30日

<省略>

別紙2の(2)

自 昭和58年5月1日

至 昭和58年4月30日

<省略>

別紙2の(3)

自 昭和59年5月1日

至 昭和60年4月30日

<省略>

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