東京地方裁判所 昭和63年(ワ)341号 判決
(抄録)
「三 次に、Xは、Xは昭和六一年五月一日Y1に対して本件リース物件を引き渡したと主張し、Yらは、Y1はいまだその引渡しを受けていないと主張するので、右の点について検討する。
1 前記認定の事実によれば、本件リース物件であるレジコンは、その機械本体(ハード部分)とこれに組み込まれたコンピューターを作動させるためのソフト部分とからなり、ソフト部分を欠くときはコンピューターは作動せず、レジコンが目的とした前記の各機能を発揮することができないのであるから、機械本体のみが納入され、ソフト部分の納入がないときは、いまだ全体としてリース物件の納入がないものと評価するのが相当である。そして、これを本件について見ると、Y1に対して昭和六一年五月末ころ本件リース物件のハード部分の納入はされたが、そのソフト部分は遂に納入されないままに終わったことが明らかであるから、いまだ本件リース物件の納入はされていないものというべきである。
2 ところで、前記認定によれば、B又はCからXに送付された本件リース契約の契約書の「物件借受日(リース開始日)」には昭和六一年五月一日本件リース物件の引渡しがあった旨の記載が見られるが、Y1が同月一日ころB又はCから本件リース物件の契約書に署名押印を求められ、Y2の妻がこれに記名押印等をした当時、右「物件借受日(リース開始日)」欄には何らの記載もされておらず、同欄の右記載は、その後B又はCが右契約書をXに送付するに当たって記入したものである。そして、<証拠>によれば、右欄はY1が後日本件リース物件の引渡しを受けたときに記入すべきものとされていたことが認められるから、B又はCによる右欄への記入はB又はCがいまだY1に対して本件リース物件の引渡しをしていない(前記のとおり、B又はCがY1に対して本件リース物件の機械部分を納入したのは、その後の同月末ころである。)のに事実に反して記入したものというべきである。しかも、前記認定のXとBとが同年三月二〇日に締結した本件基本業務協定及びその付属業務協定の約定によれば、BはXの代理人又は少なくともその使者として行動していたものと認めるのが相当であり、また、Bの特約代理店であるCはその履行補助者というべきであるから、右「物件借受日(リース開始日)」欄への記入はX側において一方的にしたにすぎず、右記載をもってY1が本件リース物件を受領した旨を表明したものと評価することはできない。
<中略>
3 以上みてきたところによれば、本件リース物件はいまだY1に対して引き渡されていないものというべく、かつ、Y1がXに対して本件リース物件の納入を受けた旨を表明した事実も認められないから、本件リース契約におけるリース料支払日はいまだ到来しておらず、したがって、Y1のリース料支払債務は発生しておらず、Y1にリース料支払の遅滞もないものというべきである。」