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東京地方裁判所 昭和63年(特わ)641号 判決 1988年7月18日

本店所在地

東京都千代田区有楽町一丁目四番一号

株式会社平田商店

(右代表者代表取締役 村田正孝)

本籍

熊本県八代郡鏡町大字内田八三四番地

住居

東京都大田区南馬込六丁目一五番一二号

南馬込スカイハイツ四〇二号

会社役員

村田正孝

昭和二年九月七日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社平田商店を罰金一七〇〇万円に、被告人村田正孝を懲役八月にそれぞれ処する。

被告人村田正孝に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社平田商店(以下被告会社という)は、東京都千代田区有楽町一丁目四番一号に本店を置き、合成樹脂、工業薬品及び鋳造用材料等の販売等を目的とする資本金二〇〇〇万円の株式会社であり、被告人村田正孝(以下被告人村田という)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人村田は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上を除外し、架空仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五七年八月一日から昭和五八年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億六五四二万五〇三九円あった(別紙一の(1)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和五八年九月三〇日、東京都千代田区神田錦町三丁目三番地所在の所轄麹町税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九九八九万四〇四円でこれに対する法人税額が三七八三万三九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六三年押第七一一号の1)を提出し、そのまま法定の納付期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の正規の法人税額六五三五万八六〇〇円と右申告税額との差額二七五二万四七〇〇円(別紙一の(2)ほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和五八年八月一日から昭和五九年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億一〇九四万一七〇二円あった(別紙二の(1)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和五九年九月二九日、前記麹町税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六五八一万五〇四八円でこれに対する法人税額が二四六〇万一二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六三年押第七一一号の2)を提出し、そのまま法定の納付期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の正規の法人税額四四一四万八〇〇円と右申告税額との差額一九五三万九六〇〇円(別紙二の(2)ほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  昭和五九年八月一日から昭和六〇年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二四六二万六二二三円あった(別紙三の(1)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和六〇年九月三〇日、前記麹町税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八四八三万三六四七円でこれに対する法人税額が三二七八万五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六三年押第七一一号の3)を提出し、そのまま法定の納付期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の正規の法人税額五〇〇一万九〇〇円と右申告税額との差額一七二三万四〇〇円(別紙三の(2)ほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人村田の当公判廷における供述

一  被告人村田の大蔵事務官に対する質問てん末書三通及び検察官に対する供述調書二通

一  福崎智夫(三通)、吉井貴子(二通)の検察官に対する各供述調書

一  清水喜覺の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  収税官吏作成の左記の調査書

1  売上調査書

2  期首商品棚卸高調査書

3  仕入調査書

4  期末商品棚卸高調査書

5  支払手数料調査書

6  交際接待費調査書

7  福利厚生費調査書

8  役員賞与調査書

9  受取利息調査書

10  雑収入調査書

11  雑益調査書

12  支払利息調査書

13  雑損調査書

14  役員賞与損金不算入調査書

15  交際費損金不算入調査書

16  事業税認定損調査書

17  価格変動準備金戻入額調査書

一  麹町税務署長作成の昭和六一年一〇月一七日付証明書

一  収税官吏作成の査察官報告書

一  登記官作成の昭和六二年八月二二日付「捜査関係事項の照会について(回答)」と題する書面(但し、被告会社に対する関係での証拠である。)

判示第一の事実につき

一  押収してある株式会社平田商店法人税確定申告書(五八/七)一袋(昭和六三年押第七一一号の1)

判示第二の事実につき

一  同株式会社平田商店法人税確定申告書(五九/七)一袋(同押号の2)

判示第三の事実につき

一  同株式会社平田商店法人税確定申告書(六〇/七)一袋(同押号の3)

(法令の適用)

被告会社の判示各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、情状によりそれぞれ同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額の範囲内において被告会社を罰金一七〇〇万円に処し、被告人村田の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により、犯情の重い判示第一の罪に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人村田を懲役八月に処し、後記情状により、被告人村田に対し同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、合成樹脂・工業薬品及び鋳造用材料等の販売等を目的とする被告会社の代表取締役である被告人村田が、被告会社の経理担当者に指示し売上を除外したり、架空仕入を計上するなどの方法で被告会社の所得を秘匿し、同社の三事業年度分合計六四〇〇万円余の法人税を免れたという事案であって、ほ脱額は高額で、ほ脱率も平均四〇パーセントに及んでおり、その犯行の動機は、被告会社の貸倒による損失や景気の変動に備えて簿外資金を蓄積して被告会社の業績を安定させることにより取引先である大企業の信用を得よう等というものであり、心情的にはともかく、これを被告会社にとって特段有利な又は同情すべき事情とみるわけにはいかず、所得秘匿の手段・方法も弁護人のいう被告会社のいわゆる「口銭取引」という取引形態を十分考慮しても計画的かつ大胆と言わざるをえないのであつて、犯情は芳しくなく、この種事案の性質をも併せ考えると被告会社及び被告人村田の刑責を軽視することは許されない。

しかしながら、被告会社及び被告人村田においては、本件が発覚するや、本件の重大性を認め、事案の解明につき捜査に協力するとともに修正申告をして本税及び附帯税を納付したこと、再過なきよう経理方法を改善するなどの方策を講じていること、被告人村田自身としては本件犯行によって個人的な利益を得てはいないことなど弁護人指摘の被告会社及び被告人村田のために有利な又は同情すべき事情も認められ、これらを総合勘案して、被告会社に対しては主文掲記の罰金刑を科し、被告人村田に対しては直ちに実刑に処するよりは相当期間その刑の執行を猶予するのが妥当と判断して、主文のとおりの刑を量定した次第である。

(求刑 被告会社につき罰金二〇〇〇万円、被告人村田につき懲役一〇月)

よつて、主文のとおり判決する。

検察官井上經敏、同伊藤恒幸、弁護人佐藤昇、同寺尾寛各出席

(裁判官 中野久利)

別紙一の(1) 修正損益計算書

株式会社 平田商店

自 昭和57年8月1日

至 昭和58年7月31日

<省略>

別紙一の(2) ほ脱税額計算書

株式会社 平田商店

自 昭和57年8月1日

至 昭和58年7月31日

<省略>

別紙二の(1) 修正損益計算書

株式会社 平田商店

自 昭和58年8月1日

至 昭和59年7月31日

<省略>

別紙二の(2) ほ脱税額計算書

株式会社 平田商店

自 昭和58年8月1日

至 昭和59年7月31日

<省略>

別紙三の(1) 修正損益計算書

株式会社 平田商店

自 昭和59年8月1日

至 昭和60年7月31日

<省略>

別紙三の(2) ほ脱税額計算書

株式会社 平田商店

自 昭和59年8月1日

至 昭和60年7月31日

<省略>

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