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東京地方裁判所八王子支部 平成12年(ワ)339号 判決 2001年3月13日

原告

岡田芳朗

被告

内藤大生

主文

一  被告は原告に対し、金三〇五万八二一三円及びこれに対する平成一〇年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その三を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は原告に対し、金四二七万一一二六円及びこれに対する平成一〇年二月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、夜間道路左側を歩いていた原告を後ろから来た被告の運転する普通貨物自動車がはね飛ばして怪我を負わせた事故につき、原告が被告に対し、民法七〇九条に基づき、損害賠償を求めた事案である。

一  原告の主張

<1>  本件事故の発生

日時 平成一〇年二月一四日午後七時五〇分ころ

場所 東京都東村山市恩多町五丁目三四番地

加害車両 被告運転の自家用普通貨物自動車

被害者 歩行中の原告

態様 原告が道路左端を歩行中、後方から来た被告の運転する普通貨物自動車にはね飛ばされ、被告の運転する自動車はそのまま走り去った。その結果、原告は、左足関節捻挫、左足中足骨骨折等の傷害を負った。(甲一ないし三、一六の一ないし五、一七)

<2>  被告の責任

被告は、普通貨物自動車の運転者として前方左右を注視し、歩行者をはね飛ばすことのないよう注意して運転する注意義務があるのに、これを怠り、対向車に気を取られて運転していたため原告に気付かず、原告を後からはね飛ばして怪我を負わせたのであるから、被告は民法七〇九条に基づき、原告の被った損害を賠償する責任がある。(甲一ないし三、一六の一ないし五、一七、弁論の全趣旨)

<3>  原告の損害

ア 治療費 一二一万九〇五〇円

イ 自宅治療用品費 一万四七五六円

ウ 通院付添費及び自宅介護費 一二万四〇〇〇円

エ 物的損害 六万一三二〇円

オ 雑費 一万円

カ 休業損害 一四四万二〇〇〇円

キ 傷害慰謝料 二〇〇万円

ク 弁護士費用 六〇万円

ケ 損害の填補 一二〇万円

コ 損害額合計 四二七万一一二六円

<4>  よって、原告は被告に対し、民法七〇九条に基づき、損害賠償金四二七万一一二六円及びこれに対する平成一〇年二月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  被告の主張

原告をひいたことは認めるが、損害額は争う。原告にも過失があった。

第三判断

一  原告の主張<1>、<2>の末尾掲記の証拠によれば、原告の主張<1>、<2>の各事実を認めることができる。原告は、本件事故で負傷した結果、平成一〇年二月一四日から同年一〇月二九日まで(診療実日数一六日)と平成一二年一月二四日に緑成会病院に通院し、平成一〇年六月三〇日から平成一一年一〇月二九日まで力丸鍼灸接骨院に通院し(治療実日数一二六日)、治療を受けた(甲一一の一ないし一〇、甲一五の一ないし一二六、甲一七)。

二  原告の被った損害は、次のとおりである。

<1>  治療費

ア 緑成会病院での治療費(甲一一の一ないし一〇) 四〇万三二一〇円

イ 力丸鍼灸接骨院での治療費(甲一五の一ないし一二六) 六九万六三四〇円

<2>  薬代(甲一三の一ないし五) 一万四七一八円

<3>  妻の通院付添費(甲一七) 六〇〇〇円

三日×二〇〇〇円=六〇〇〇円

<4>  自宅付添費(甲一七) 九万二〇〇〇円

平成一〇年二月一四日から同年三月三一日までの四六日間につき、一日当たり二〇〇〇円の割合で認める。

四六日×二〇〇〇円=九万二〇〇〇円

<5>  通院交通費

ア 緑成会病院への通院交通費(甲一四の一ないし一八、甲一七、弁論の全趣旨) 三万七一二〇円

イ 力丸鍼灸接骨院への通院交通費(甲一七、弁論の全趣旨) 八万〇六四〇円

<6>  雑費 〇円

証拠がないので、慰謝料で斟酌する。

<7>  休業損害(甲一七、弁論の全趣旨) 一四四万円

ア 平成一〇年二月一四日から同年六月八日までの七八日間は就業不可能であったので、一日につき一万円の休業損害が生じた。

七八日×一万円=七八万円

イ 平成一〇年六月九日から平成一一年一〇月二九日までの通院日数は緑成会病院が六日、力丸鍼灸接骨院が一二六日であるから、一三二日間につき、一日につき五〇〇〇円の休業損害が生じた。

一三二日×五〇〇〇円=六六万円

ウ ア+イ=一四四万円

<8>  慰謝料 一六〇万円

通院期間(このうち約一か月間はギブスで固定)、被告は事故後被害者を救護せず、逃走したこと、被告による謝罪や被害弁償がなされていないことなどを斟酌した。

<9>  物損(弁論の全趣旨) 六万一三二〇円

<10>  以上合計 四四三万一三四八円

<11>  過失相殺 一〇パーセント 三九八万八二一三円

本件は、道路測端を歩行していた原告を後方から来た普通貨物自動車がはね飛ばした事故であること、本件事故現場付近は歩車道の区別があるが、衝突地点付近は歩道上に二本の電柱と立て看板があったため、原告は歩道上を歩くことができなかったこと、そのため、原告は車道上の道路測端を歩いていたこと、本件事故当時は夜間で、原告は黒いコートを着ていたこと、本件事故は幹線道路(恩多街道)上で起きた事故であること、事故現場は市街地で、原告は当時六〇歳であったことなどの事情を考慮すると、原告にも一定の過失があり、その過失割合は一〇パーセントと認めるのが相当である。(甲一、甲一六の一ないし五、甲一七、弁論の全趣旨)

<12>  損害の填補(乙ハ一の一、二) △一二〇万円

<13>  差引後の損害 二七八万八二一三円

<14>  弁護士費用 約一〇パーセント 二七万円

<15>  総合計 三〇五万八二一三円

三  以上によれば、原告の本訴請求は、原告が被告に対し、民法七〇九条に基づき、損害賠償金三〇五万八二一三円及びこれに対する不法行為の日である平成一〇年二月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 矢﨑博一)

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