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東京家庭裁判所 平成15年(家)71375号 2004年1月19日

主文

本件申立てを却下する。

理由

第1申立ての要旨

1  申立人は、亡Cの相続人である。

2  Cは、被相続人(大正4年2月7日生。平成11年2月15日死亡)の特別縁故者として財産分与を求めうる立場にあったところ、その申立て前に死亡した。

3  申立人は、Cの特別縁故者としての地位を承継したとして別紙相続財産目録記載の被相続人の相続財産の中から相応の分与を求めている。

第2申立人の主張

1  Cは、昭和24年頃被相続人と知り合い、入籍こそしなかったものの、以後被相続人が死亡するまで夫婦として生活した。

この間、主として、Cは印刷会社に勤務し、被相続人は家事に従事した。

2  被相続人は、平成11年2月15日死亡し、同人名義の相続財産として別紙相続財産目録記載の土地及び預金がある。

3  Cは、昭和27年12月24日、被相続人の最後の住所地である別紙相続財産目録1記載の土地上に建物を建築したが(同土地は昭和32年4月1日売買を原因として被相続人へ移転登記手続済み)、これは実質的にはCの所有に属するものであるほか、被相続人名義の預貯金、有価証券など本件で被相続人の相続財産とされたものの全てが実質的にはCの所有に属する。

4  Cは、被相続人に相続人のあることが明らかでなかったので、将来特別縁故者として相続財産の分与の申立てをすることを予定して平成14年6月7日、被相続人について相続財産管理人選任事件を申し立て(当庁平成14年(家)第○○○○○号事件)、同年7月19日、弁護士Dが相続財産管理人に選任され、管理に伴う手続を進めた。

5  Cは、平成15年2月9日、死亡した。

6  申立人は、亡Cの妹で、相続人であるが、Cの相続人らは上記土地建物その他被相続人の財産の一切について平成15年9月1日、申立人が単独で相続するとの遺産分割協議を成立させた。

よって、申立人は特別縁故者であるCの承継人として本件申立てに及んだ。

第3当裁判所の判断

1  本件の経過

一件記録によれば、本件の経過は次のとおりである。

(1)  平成11年2月15日 被相続人につき相続開始(被相続人の死亡)

(2)  平成14年6月7日 C、相続財産管理人選任事件を申し立て(当庁平成14年(家)第○○○○○号事件)

(3)  平成14年7月19日 相続財産管理人の選任(弁護士D)

(4)  平成14年10月30日 相続債権者及び受遺者に対する請求申出の催告(期間2か月)

(5)  平成15年1月29日 相続人捜索の公告(催告期間満了日・平成15年8月31日)

(6)  平成15年2月9日 C死亡

(7)  平成15年10月6日 申立人・本件申立て

2  判断

そこで検討する。

本件は申立人がCから特別縁故者としての地位を承継したとして被相続人の相続財産の分与を求めたものであるが、特別縁故者となりうる者がその分与の申立てをした後に死亡した場合にはその承継の可否を検討する余地があるが、申立期間内に申立てをしない、あるいは申立て期間が開始される前に死亡した場合には特別縁故者としての地位が承継されることはないと解するのが相当である。すなわち、特別縁故者として財産分与の申立てをするかどうかは一身専属性の強い権利であり、現に行使しない以上具体的な権利が発生しているということはできないし、また仮に申立期間の開始前に申立てをする意思を有していたとしても直ちに法律上保護すべき、承継の対象となるような具体的な財産上の権利が発生しているものと解することができないからである。

本件においてCは特別縁故者として財産分与の申立てができる相続人捜索の催告期間満了の翌日である平成15年9月1日より以前に死亡しているのであるから同人について特別縁故者としての具体的な権利は発生しておらず、したがってこれについて承継を考える余地がないことは明らかである。

第4結論

よって、その余の点につき判断するまでもなく本件申立ては理由がないからこれを却下することとして、主文のとおり審判する。

(家事審判官 石田敏明)

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