東京家庭裁判所 平成15年(少イ)16号 判決 2003年11月14日
被告人 Y (昭和31年○月○日生)
主文
被告人を懲役2年及び罰金180万円に処する。
罰金を完納することができないときは、金1万円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から5年間懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
[罪となる事実]
被告人は、平成14年7月ころから、いわゆる援助交際(対償を得て性交をする意)を希望している女性に声を掛けて知り合いとなり、その女性名でインターネットの出会い系サイトを利用して援助交際を申し込む旨の書き込みをし、男性が援助交際の相手方となることを希望してサイトにアクセスしてくると、その男女の双方に連絡を取るなどして、援助交際をさせ、女性が男性から受領した金銭の一部を受け取って自己の稼ぎとしていたものであるが、
第1 さらに同種行為を反復継続する意思で、A(昭和60年○月○日生)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同女が援助交際を希望していることから、同女に代わって、同女の偽名を使って出会い系サイトに「18歳未満の女性児童が援助交際を希望している」旨の書き込みをしていたところ、
1 Dが前記サイトにアクセスしてきたことから、AとDの双方に連絡を取り、同年12月12日、東京都<以下省略>先路上において、Aに売春の相手方となり及び児童買春をする者としてDを引き合わせて紹介し、同日、同区<以下省略>所在のホテル「○○」の客室内において、A(当時17歳)をしてDを相手に性交させ、
2 Eが前記サイトにアクセスしてきたことから、AとEの双方に連絡を取り、同年12月27日ころ、東京都<以下省略>先路上において、Aに売春の相手方となり及び児童買春をする者としてEを引き合わせて紹介し、同日、同区<以下省略>所在のホテル「△△」の客室内において、A(当時17歳)をしてEを相手に性交させ、
もって、児童買春の周旋を業とするとともに、売春の周旋をし、かつ、児童に淫行をさせた。
第2 B(昭和62年○月○日生)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同女が援助交際を希望していることから、同女に代わって、同女の偽名を使って出会い系サイトに援助交際を希望している旨の書き込みをしていたところ、Fが前記サイトにアクセスしてきたことから、BとFの双方に連絡を取り、平成15年4月13日ころ、同区<以下省略>先路上において、Bに性交の相手方としてFを引き合わせ、同日、同区<以下省略>所在のaビル内において、B(当時16歳)をしてFを相手に性交をさせ、もって、児童に淫行をさせた。
第3 C(昭和62年○月○日生)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同女が援助交際を希望していることから、同女に代わって、同女の偽名を使って出会い系サイトに援助交際を希望している旨の書き込みをしていたところ、Gが前記サイトにアクセスしてきたことから、CとGの双方に連絡を取り、平成15年5月25日ころ、同区<以下省略>先路上において、Cに性交の相手方としてGを引き合わせ、同日、同区<以下省略>所在のホテル「□□」××号室において、C(当時16歳)をしてGを相手に性交をさせ、もって、児童に淫行をさせた。
[証拠]
判示全事実について
被告人の公判供述
被告人の検察官に対する供述調書(乙10)
司法警察員作成の捜査報告書(甲8、9)
判示第1の事実について
被告人の司法警察員に対する供述調書(乙8、9)
Aの検察官に対する供述調書(甲24)
Dの検察官に対する供述調書謄本(甲26)
Eの司法警察員に対する供述調書謄本(甲30ないし32)
b市長作成の捜査関係事項照会回答書抄本(甲25)
司法警察員作成の捜査報告書謄本(甲28、29、34、35)及び同抄本(甲27、33)
判示第2の事実について
被告人の検察官に対する供述調書(乙2ないし4)
Bの検察官に対する供述調書抄本(甲1、2)
Fの検察官に対する供述調書(甲5、6)及び同謄本(甲4)
東京都c区長作成の身上調査照会回答書抄本(甲3)
司法警察員作成の捜査報告書抄本(甲7)
判示第3の事実について
被告人の検察官に対する供述調書(乙6、7)
Cの検察官に対する供述調書抄本(甲10)
Gの司法警察員に対する供述調書謄本(甲12ないし16)
東京都d区長作成の身上調査照会回答書抄本(甲11)
司法警察員作成の捜査報告書謄本(甲18)及び同抄本(甲17)
なお、括弧内の甲又は乙と算用数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠の番号を示す。
[法令の適用]
罰条
判示第1の事実中、児童買春周旋を業とした点は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律5条2項に、売春を周旋した点はいずれも売春防止法6条1項に、児童に淫行させた点は包括して児童福祉法60条1項、34条1項6号に、判示第2及び第3の各事実はいずれも児童福祉法60条1項、34条1項6号に該当
科刑上一罪の処理及び刑種の選択
判示第1の罪については、刑法54条1項前段、10条により一罪として、最も重い児童福祉法違反の罪の刑で処断し、所定刑中懲役刑を選択(ただし、罰金併科の関係では、さらに児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律5条2項を適用)、判示第2及び第3の各罪については、所定刑中各懲役刑を選択
懲役刑についての併合罪加重
刑法45条前段、47条本文、10条(犯情の最も重い判示第1の罪の刑に法定加重)
労役場留置
刑法18条
懲役刑の執行猶予
刑法25条1項
訴訟費用の負担
刑訴法181条1項本文
[検察官○○、弁護人○○各出席。求刑・懲役2年6月及び罰金250万円]
(裁判官 長岡哲次)