東京家庭裁判所 昭和33年(家)19号 審判 1958年5月24日
申立人 奥田昭(仮名)
相手方 亡中山民蔵(仮名)
主文
本件申立を却下する。
理由
本件申立の要旨は、申立人は相手方の妹奥田たみの長男であるが昭和二八年○月○○日父新一死亡した後、母たみと共に相手方の家に引取られ、同人の養子となるべく約束されていたところ、相手方は昭和三三年○月○○日死亡するに至つた。しかして、相手方は死亡前の同月一一日申立人と相手方との間の養子縁組の届出書を入院先の東京都○○○○○○○附属病院より本籍地役場宛に送付し、同月一四日到達させているが、申立人は未成年者であつて、養子縁組には家庭裁判所の許可を要するところ現在相手方は死亡していてその申立が不可能に帰しているので、申立人より相手方を養父とする養子縁組の許可を求めるべく本申立に及んだ次第であると謂うにある。
よつて審究するに、現行法上の養子縁組制度は、養親が現存していることを前提としているもので、既に養親となるべき者が死亡している場合には、養子となるべき未成年者から死者を相手として家庭裁判所に対し養子縁組の許可を求めることは、許されないと解すべきである。本件においては、申立書添付の戸籍謄本によれば、養父となるべき相手方は、昭和三三年○月○○日に死亡していることが明らかであり、仮りに申立人主張のように相手方が死亡前その縁組届書を本籍地役場に発送していたとしても、現在既に死亡している以上、未成年者である申立人と相手方の間の養子縁組について許可を求めることは許されないといわねばならない。
従つて本件申立は理由がないのでこれを却下することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 近藤綸二)