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東京家庭裁判所 昭和40年(家)12914号 審判 1967年6月30日

申立人 三好修(仮名) 外一名

相手方 三好孝幸(仮名)

主文

相手方が申立人三好修および同三好タマの各推定相続人であることをそれぞれ廃除する。

理由

一、家庭裁判所調査官西田博の調査報告書並びに申立人三好修および同三好タマに対する各審問の結果によれば、次の事実が認められる。

1  相手方は、申立人三好修および同三好タマ間の長男で、申立人三好修および同三好タマの各推定相続人であり、申立人らの所有の財産は、別紙目録記載のとおりであること。

2  相手方は、昭和三五年三月○○大学付属第二高校を卒業し、同年四月○○大学法学部に入学したのであるが、

昭和三六年四月二年に進学した後バアーに出入し、関係を生じたホステス某女に失恋してからは、自暴自棄となり、生活が荒み学業を放棄し、外泊して友人宅を転々とし、昭和三七年四月には単位不足で三年に進級できなかつたこと。

3  相手方は右の如く三年に進級できなかつたため、益々生活が荒み、しばしば些細なことで家族に当り散らし、ガラス戸建具等の器物を毀棄して暴れ廻り、申立人三好修および同三好タマに対して脅迫的な言辞を吐いて金銭を強要するようなことがあり、その乱暴と金銭強要の程度がひどい場合には申立人らも手のほどこし様がなく、数回にわたり警察の保護を求めたこと。

4  相手方は昭和三八年四月日本大学法学部三年に進学したのであるが、間もなく通学しなくなり、同年八月頃申立人らに無断で右大学を中退してしまつたこと。

5  相手方は大学中退後も、相変らず荒んだ生活を続けているので、申立人三好修は相手方を就職させればその行状が改まるのではないかと考え、相手方を自己の経営するゴルフ場のキャデイとして勤務させたのであるが、相変らず貰つた給料もたちまち遊興に費消してしまう有様であつたので、他人の所に勤務させれば改善が期待されるのでないかとも考え、申立人三好修は実弟三好博の紹介で、相手方を昭和三九年七月頃○○芸能社の事務員として就職させたところ、相手方は、昭和四〇年三月から同年四月に至る間二回にわたり同会社の金合計金七万円を費消横領し、申立人三好タマはこの金額を弁償したこと。

6  相手方は、昭和四〇年九月頃再び前記会社の金一七万円を費消横領し、そのため、同会社から退職せざるをえなくなり、右金員も申立人三好修が弁償したこと。

7  相手方は昭和四一年一二月頃申立人らの家から家出しその後は所在が全く不明であり、その後相手方が連絡先を友人の東京都杉並区天沼二の○○○西山実方としていることが判明したのであるが、昭和四一年二月以降同人の所にも相手方から連絡なく、同人も全く相手方の所在消息を知らないこと。

二、以上認定の事実によれば、相手方は正業につかず、浪費を重ね、社会の落伍者の地位に転落し、その所為は、たちの悪い親泣かせの部類に属するものというべく、これが相続人廃除の原因の一つである著しい非行に該当することは明らかであるといわなければならない。

よつて、申立人らの本件申立は理由があるので、これを認容し、主文のとおり審判する次第である。

(家事審判官 沼辺愛一)

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